一日目昼 - 極彩鮮滅

「06/11/22:30」から「06/15/22:30」までの記録です。
1

薄暗い路地裏

コンクリートとアスファルトの狭間。日の光も差し込まぬ影の道。『瓦礫の積み上げられた中央広場』を囲うように網目状に走るそれは、この街の死んだ血管とも言える。

ダスク @dusk_v

「……れ?」 ブーツ越しに伝わる地面が堅い。ダスクは赤い瞳を丸くして、素っ頓狂な声を出した。 ここは、何処だろう。ぐるりと見回すと、太陽があたりを照らしているくせに景色は灰色だった。ダスクは昼でも夜でもない、という感想を持った。

2014-06-11 22:49:22
ダスク @dusk_v

昼でも夜でもないということは、好きでも嫌いでもないということだ。自分は、此処をどう認識すればいいのだろう。 暫く、そんなことに思考を割いてぼんやり立ちすくんでいた。 ふと、頭の中にひとつの疑問が生まれた。 「僕はなんでこんなところにいるんだろう」

2014-06-11 22:55:18
ダスク @dusk_v

何気なく、念じた。視線の先にあるコンクリート片が熱にあてられた氷のように融解し、白い熊のぬいぐるみとして生まれ変わる。 「これはちゃんと使える」 うん、と小さく頷いて、ダスクは右腕にそれを抱いた。真っ白な、頬の赤みも目の黒もない真っ白なぬいぐるみを、腕に抱いた。

2014-06-11 23:00:43
ダスク @dusk_v

いくつか、考えた。腕の中のぬいぐるみを抱きながら、瓦礫を踏みしだくアンバランスさを楽しみながら、考えた。 頭の中でシャボン玉が弾けるみたいに、ぬいぐるみが教えてくれるみたいに、いくつかのアイディアが頭に浮かんだ。 僕は僕の世界を造ってみたいんだ。

2014-06-11 23:12:46
ダスク @dusk_v

僕は違う世界に来てしまったんだよ。 僕は僕の《生きた》世界を造りたかった。僕の手で《死んだ》世界を作り直したかった、だけなのに、誰かがそれを妬んで僕を追い出したんだ。 僕は、えーと……僕は……、 あの世界じゃなきゃ、ダメなんだ。 そこまで思いついて、僕はやっと顔を上げた。

2014-06-11 23:17:53
ダスク @dusk_v

ビルの隙間に青空が覗いていた。やっぱり昼なんだ、ここは。そう思うと嬉しくて、ダスクはぬいぐるみと顔を見合わせて笑った。 お腹が空いた。このあたりに、レストランはなさそうだ。 ダスクはご飯にありつくことを目標に決めた。それが終わったら誰かを殺さなきゃと、ぬいぐるみの耳元で言った。

2014-06-11 23:24:43
ダスク @dusk_v

「誰かいるね」 ぬいぐるみに話しかけた。それはうんともすんとも答えはしないのだが、ダスクはそれでも楽しそうに話しかけた。 「誰かいる。えっと、いち……に…………六人、かな」

2014-06-11 23:53:37
ダスク @dusk_v

「……お腹すいた」 生き物の気配に乏しいこの廃墟に、彼女の呟きを聞く者はいない。当然、彼女を導く者もいない。 そのはずなのに、彼女の動物的な勘は冴えているようだった。昼でも夜でもない薄暗い路地裏を抜けると、開けた視界に建物群が映った。 移動>◆『廃ショッピングモール』

2014-06-12 17:55:15

薄暗い路地裏

猩々緋 麻也 @red_shojohi

 次に目覚めたときに、眼へ飛び込んだのは灰色だった。ビルとビルの間に見える、狭く重苦しい灰色―――意識の落ちた瞬間に見えた曇り空とは、明らかに違う、絶対的な『灰色』。色が無い、と言っても正しい程のその色は、どう見ても自分が今まで居た場所とは違っていた。

2014-06-11 22:54:00
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 身体を起こそうとついた手の平には、コンクリートの堅く冷ややかな感触が返ってくる。どれほどの時間ここに転がされていたのだろうか、少し背中が痛む。その感覚を押し切るように上半身を起こすと、ピリッとした頭痛が彼を襲った。「…ッつ、」

2014-06-11 22:54:16
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 反射的に額に当てた手のひら。同じように閉じてしまった眼をゆっくりと開き、その肌色を見やる。コンクリートの地面も、もちろん同時に眼に入った。手の平を、一度握って、開く。

2014-06-11 22:57:35
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 まるで、自分以外の色彩が全て抜け落ちているようだった。それほどまでに、この世界には彩りという物が無いように、麻也には感じられた。

2014-06-11 22:57:51
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 明らかに『異質』だ、と彼は思った。この世界が、普通の世界ではないこと。まずそれだけが、彼の頭のなかに情報としてインプットされた。同時に、自分の元いた世界を思い描く。

2014-06-11 23:09:30
猩々緋 麻也 @red_shojohi

自分には成すべきこと、果たさなければいけないことがまだ残っている。『世界』に抗う必要がある。そのためにも、この世界からの脱出法を―――――

2014-06-11 23:09:33
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 ―――知っている。元の世界へ帰るはしごのかけ方を、自分は知っている。額から少し離れていた手が、口元へと下がっていき、それを覆う。『生き残るために、誰かを殺すこと』頭に刻みつけられたその言葉。

2014-06-11 23:09:44
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 そして、同時に。『殺さなければ、消える』。「――ああ、そうかい」いつの間にこんなものが頭の中に詰め込まれていたのかはわからないが、恐らくは真実だろう。この場所は、そういうシステムでできている。「反吐が出る」また、吐き捨てるように。一言を床に向かって呟く。

2014-06-11 23:20:26
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 しかし、殺らなければ消えてしまうのは自分自身―――ともすれば、動きは速いほうがいいだろう。未だ重たい身体を、なんとか立ち上がらせた。

2014-06-11 23:23:09
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 最初にした行動は、誰かを探すことではなく『装備の確認』だった。右太ももの辺りにぶら下がる腰袋の大きい方を開く。獲物であるルビーのナイフ数本、紅い小瓶数本、その他細々としたモノ達。やるべき『仕事』の後だったせいか、小さい方には少量ながら棒状の非常食も入っていた。

2014-06-11 23:26:58
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 …自分の中の記憶どおりだ。無くなっているものは無い。

2014-06-11 23:27:17
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 入念な、準備。魔術師にとって、それは重要なことと言える。――それに、わざわざ探さなくったって、彼には『わかって』いた。

2014-06-11 23:33:00
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 自分以外に、この世界に六の存在がいること。恐らく、こちらからわかっているのなら、あちらからもわかっているはずだ。一方的に奇襲をかけられる可能性は低いものの、相手にも敵対する存在がいるということはわかられている。だからこそ、より出来る限り装備を整えなければいけないと感じていた。

2014-06-11 23:40:48
猩々緋 麻也 @red_shojohi

 ――どこかしら、記憶が欠落しているのを感じる。だが、麻也にとってそんなことは些細なことだった。自分の『理想』。その為に、『成さなければならないこと』。そして、『今やるべきこと』。それらだけがはっきりしていれば、十分だ。

2014-06-11 23:55:52

薄暗い路地裏

1 ・・ 22 次へ