廃オフィス街
無機質な崩れかけた高層ビルの谷底。枯れた街路樹と壊れかけた街灯が立ち並ぶ。『瓦礫の積み上げられた中央広場』と『薄暗い路地裏』を介して連結する。
…すっかり日の落ちたオフィス街の端。壁を背に、彼は普段は吸わない煙草を口にしていた。腰袋の中に偶然入っていたから、と。ある意味頭の切り替え――あるいは逃避――のようなものだった。普段しないことをすることで、非日常の頭へと切り替えていく。
2014-06-16 23:31:10可能性が無いとも言えなかった。あの瞬間、心を折ったのは間違いないが、彼はこちらの手の内を完全に把握している。…それはこちらも同じだが。その点で、彼は他の能力者よりも自分を殺しやすいはずだ。それに自分は、共同戦線を張っていた【紫苑】の仇――でもある。
2014-06-16 23:32:40「…いや」ショッピングモールの方角を見やる。必ずそうなるとは言えない。自分以外の四人全員が集結している大混戦だ。絶対に『一人が一人を殺す』とは言えない。一人が二人殺すかもしれない、もしかしたらあのまま決着が着かずに四人全員が消滅するかもしれない。
2014-06-16 23:33:56誰が生き残るかを考えるのは難しい。何より、【漆黒】以外の風貌も能力もわかっていない。【蒼天】だけは周りを染め上げる能力か何かということがわかるが――だとしたら、【漆黒】が生き残るかどうか、を考えるのが今できる推測だろうか。
2014-06-16 23:34:35ふう、と紫煙を吐く。「……。難しいかもしれんな」知識と経験が無い上、能力の全容もそれなりに把握している。 残酷な話だが、彼が二日目まで勝ち上がってくるならば――そう考えていた。
2014-06-16 23:34:58しかし、どう転んでも結局のところ明日にならなければわからない。これからショッピングモールへ偵察へ行くのも有りだとは考えたが、あまりに危険すぎる。そのまま負傷、あるいは殺害されてしまっては元も子もない。
2014-06-16 23:35:28自分は、元の世界へ帰らなければいけない。 「……」煙草を宙に投げ捨て、先端の火を視る。『燃え上がり』『灰になれ』 小さな火が、大きな炎となり煙草を灼き尽くす。
2014-06-16 23:35:54『吸血鬼』は夜の王。その目は暗闇を見通し、その身体は耐久力も治癒力もやわい人間のそれではない。…左手首の傷も、ふさがり始めている。自分は人間ではない。『魔術師』としての誇りのために、厄介な人間を駆逐する必要も、もう無い。
2014-06-17 02:45:55この世界を生き抜いたところで、どうするかは、生き抜いてから考えればいいと思っていた。…それでも、ここまで 『時間』ができてしまうと、考えざるを得ない。
2014-06-17 02:48:37廃ショッピングモール
朽ち果てたショッピングモールだった店頭群。無論人の気配は無く、食糧は此処にしか無い。『瓦礫の積み上げられた中央広場』と『薄暗い路地裏』を介して連結する。
ピリピリとした戦いが続くショッピングモールに、似つかわしくない学生服を来た片腕のない青年が現れた。音が聞こえる方に向かってただひたすら歩き続け、戦ってる場所の側へとたどり着くととっさにまた身体を隠そうとして地面に撒き散らかされた破片を踏みしめどしゃっと転んだ、辺りに音が響き渡る。
2014-06-15 23:24:59大剣を手放せば丸腰になってしまう。その焦りが冷静な思考を妨げた。自らの世界にいた頃は異能を用いた奇襲やテロ的な殺人ばかり行ってきたダスクには、重い大剣を持ったままでは反撃どころか上手く逃げることすら叶わなかった。
2014-06-16 00:45:20結果、【純白】の蹴りをまともに喰らい、足をもつれさせて地に倒れることとなる。 転んだ際に受け身を取ろうとして、自らの剣に右手が引っかかる。流れる赤に痛みを噛み締め、それでもなお逃げようと身を捩る。 と、 これまでの戦闘とは繋がりの見いだせない、何かが倒れる音を聞いた。
2014-06-16 00:58:43「……っ」 ダスクは困惑した。 首を伸ばしてどうにか映る視界の隅には、嘗て目にした日常の象徴とよく似た黒い衣服が映っている。記憶が正しければ、学生服。子どもであることを示す、それ。 然し同時に、妄想めいた確信が告げる。 《夜》が、絶対的な《死》が訪れた、と。
2014-06-16 01:02:56同刻、重心を軸足から両足へ移して得物を構え直した少女もその音に気付いた。 「お前は漆黒……たしかゼンヤと言ったか」 すぐにその変わり果てた姿にも気付き、僅かに困惑を顔に浮かべる。傍らにあった者の姿も、傍らにあるべき腕の一つもそこには無かった。
2014-06-16 10:37:24