一日目夜 - 極彩鮮滅

「06/15/22:30」から「06/19/22:30」までの記録です。
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フィーネ・ゾフィーア・エーデルヴァイス @ve_fine

思わず黄昏への追撃の手が止まる。直感。夜が、来る。 渦を巻いて頭上の空が暗く黒く染まりゆく下で、白の少女は新たな来訪者へとまず素直な疑問を投げた。 「ゼンヤ、お前たしかシオンと行動していたのでは無かったか?」

2014-06-16 10:37:31
御通ヨサリ @torima_nama

 娘は瓦礫の山の上で、色彩の拮抗を続けている。  必然、この戦場をもっとも見渡せる位置にいる。  彼女ははっきりと空の色が移るのを見た。  灰色の空の太陽に、娘は最初に黒点を見た。それが空を犯すように、世界は鮮やかな『夜』に染まっていく。

2014-06-16 20:56:13
御通ヨサリ @torima_nama

「いらっしゃいましたね、【漆黒】の方」  柔らかく笑む娘に、相変わらず敵意の気配はない。 「ここで出せるものに、大した違いってないんですけど。――何になさるんです?」  受け取った缶詰に口づけるようにして口元を隠しながら、娘は思考する。

2014-06-16 21:00:03
御通ヨサリ @torima_nama

 初見の相手だ。  幸いにも娘の世界に学生服という概念はなく、彼を不必要に見くびるようなことはなかった。ただ味の読めない脅威とだけ認識する。  何が来るか、わからない。戦場を一望できるこの位置は、この場で最も目立つ位置でもあるのだ。

2014-06-16 21:03:28
御通ヨサリ @torima_nama

 しかし、彼らの口ぶり、流れる空気から読み取るに、【純白】と【漆黒】は一度まみえているようだ。  娘は、己の判断と感情が、正解を選んでいることを確認する。ここで「組んで」いなければ、乱戦の中で【漆黒】の手をいちから探り直さねばならなかったのだから。

2014-06-16 21:07:15
御通ヨサリ @torima_nama

 押し戴いた缶詰のふちを軽く舐める。  戦場が一度止まったこと、邪魔にならないこと……悪く言えばすべてに水が差されたことを確認してから、 「あの、……」  【純白】になにごとか、【漆黒】について問おうとして、ふと娘は気付く。  ――なぜ、【黄昏】までもがその動きを止めている?

2014-06-16 21:11:21
鈴木善哉 @Black_zenya

聞き覚えのある声を聞いて善哉は顔を上げた、左腕でぎこちなく上半身を起こし地べたに座る。辺りに漂う他の色の気配に刺激されて、善哉の意志とは関係なく漆黒の球体達が善哉の背後に浮かんだ。「紫苑は…燃やされて死んだ。」そう言葉にした瞬間思い出してしまった、人の焼ける香りを。

2014-06-16 21:45:11
鈴木善哉 @Black_zenya

顔色が真っ青になる、そしてこみ上げてきた嘔吐感を必死にこらえて。「だから僕は殺さなきゃいけないんだ…。殺せなかった紫苑は殺されちゃったから。僕も殺せないと殺されてしまう。」ゆらりと立ち上がる、漆黒の球体達は辺りを警戒していた。「ねえそうでしょ?フィーネ?」

2014-06-16 21:48:42
鈴木善哉 @Black_zenya

不安そうにそう純白に語りかける。次に敵意の感じない雰囲気を感じる蒼色には怯えた様子で視線を向けて。「笑っているけど貴方も殺すんでしょう?じゃなければ消えてしまうんだから。」そう震える声を向ける、ひどく頼りない印象を受けるだろうか。「あの赤い男みたいに。」

2014-06-16 21:48:53
鈴木善哉 @Black_zenya

黄昏には何も答えない、何も問われていないからだ。ただ一度黒い瞳を向けてその姿を確認した。

2014-06-16 21:49:48
フィーネ・ゾフィーア・エーデルヴァイス @ve_fine

「そうか、死んだのか」 戦の機微にかけてはこの中で随一であったであろう男の死。それは意外であると同時に酷く自然なことのようにも思えた。 「あれのことだ、さぞかし運が悪かったんだろうさ。それをお前が気に病む必要は無い」

2014-06-16 22:39:59
フィーネ・ゾフィーア・エーデルヴァイス @ve_fine

「やつがしようとしていたことはそういうことだ。命を奪うために、命を懸けて、賭けに負けた。今のお前が言っていることは逆だ。恐怖から逃れるために、他者から奪うと言う。どんな理由があってもそれは悪いことだと、俺はお前にそう言おう」 純白の少女は漆黒の少年にそう告げる。

2014-06-16 22:40:05
ダスク @dusk_v

夜が来る。 「……ねぇ、君」 視界が暗い。忌むべき夜が来る。 「漆黒の君」 その時、ダスクは自分が何をしようとしているのかを理解しなかった。 元より動物的尺度で動いている彼女に思考など関係がない。

2014-06-16 22:58:51
ダスク @dusk_v

【純白】の注意が【漆黒】に向いた隙を見計らって、右腕と足で地を蹴り間合いから逃げたことにも、明確な理由はない。 右掌の傷が裂けて溢れる血にも、明確な理由はない。 ただ、気付けば【漆黒】の恐怖を宿した目を見て、問いかけていた。 「誰を、殺すつもり……?」

2014-06-16 23:04:24
御通ヨサリ @torima_nama

 おかしい、と娘は断定する。新たな闖入者を見据えて動かない【純白】に、【黄昏】は手を出さない。距離を置いて、それだけだ。  もちろん【純白】とて不用意に隙を晒しているわけではないだろう。次の一手が打たれれば、即座に呼応するはずだ。その次の一手が、打たれない。

2014-06-17 01:50:59
御通ヨサリ @torima_nama

 【漆黒】の言っていることはもっともだ。自分とて、全員殺す心づもりだ。全ての色を料理して、美味しく食べて終わりにして、あの人の明日に朝ごはんを届けたい。  成せるかはどうかはどうでもいい。そうしたいと願うことがこの灰色の世界での正しさだ。それが、【漆黒】と自分の違いだろうか。

2014-06-17 01:58:03
御通ヨサリ @torima_nama

 けれど、視線の先の【黄昏】はそれをしない。最善手どころか、そのための一手すら打とうとしない。  先ほどまでの、つまずくことはあっても全力で向かってきた彼女とは、あんなにもこのゲームのレシピに忠実だった彼女とは…… 『……ねぇ、君』  その瞳が【漆黒】を捉えるのを見た。

2014-06-17 02:13:53
御通ヨサリ @torima_nama

『漆黒の君』  生への欲望に満ちていた瞳は……今も変わらず欲望に満ちている。  けれど、まるで、それがまるごと『ひっくり返ってしまった』ような。 「――いけませんね」  娘は青と白の戦場に飛び込んだ。缶詰を懐に放り込むのに費やした一瞬は、無駄な動作だったろうか。今は考えない。

2014-06-17 02:17:27
御通ヨサリ @torima_nama

 兵士を「作り変えた」のが【蒼天】であっても、今それを操っているのは【純白】だ。自分が集中を解いたところで、増加が止むにしろ、一瞬で形勢が変わることはあるまい。  乱戦の密度の中を、空色の娘は駆ける。  身のこなしは【純白】には及ばず、存在の希薄さだけを不可視の盾とする。

2014-06-17 02:26:22
鈴木善哉 @Black_zenya

誰をと聞かれると頭を左右に振る泣きはらした顔は無様でひどく弱々しい。「でも殺さなきゃいけない、殺さないと僕は…。」今にも泣き出しそうな子供のような頼りない顔をした。「帰りたい…僕の世界【ばしょ】に。」そう黄昏に訴えた。

2014-06-17 02:29:39
御通ヨサリ @torima_nama

 誰を殺すつもりか?  そんなもの、 「全員殺すに決まってるじゃないですか。彼だって――あなただってそのはずでしょう」  これ以上【黄昏】に【漆黒】と向き合わせてはいけない。それは根拠のない不穏な予感ではあったが――そこから導き出される算数は、それが自分の不利になると告げている。

2014-06-17 02:32:42
御通ヨサリ @torima_nama

 青と白の拮抗地帯を「狙われにくさ」で抜けることはできても、いまだ【黄昏】の軍勢が色濃い地帯を抜けるには正面突破しかない。  肉斬り包丁の一振りで、兵の数体を両断。空色の娘の表情に、わずかにらしくない焦りが浮かぶ。 「何を、――どうでもいいことを考えているんですか。【黄昏】」

2014-06-17 02:37:59
ダスク @dusk_v

「そうだね。僕も、帰らなきゃいけないんだ」 不安を宿した瞳を捕える赤い双眸は細められて――笑っていた。 まるで友達に話しかけるようなフランクなそれは、学生服を着た【漆黒】に相応しいようにすら思えた。実際、精神年齢で言えば、ダスクは【漆黒】よりもずっと幼いだろう。

2014-06-17 02:52:01
ダスク @dusk_v

「僕も……帰らなきゃいけない」 語感に違和感を感じた。 【蒼天】の声を煩わしく感じた。もう一度、確かめるように呟く。 「……かえら、な、きゃ……」 何処に? 言葉に質量が伴わない。今のダスクの言葉は酷く空虚である。恐怖に突き動かされる【漆黒】の彼のそれと同じように、空虚である。

2014-06-17 03:03:07
ダスク @dusk_v

何処に。 何処に、帰ればいい。 元いた世界? その問いに直観は答えない。 言葉はきっと間違っていない。唯、そこに温度が、質量が、欲望が、伴っていない。 『何を、――どうでもいいことを考えているんですか。【黄昏】』 【蒼天】の声が耳に届く。僅かに苛立った。

2014-06-17 03:26:15
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