ザ・ドランクン・アンド・ストレイド #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネギトロ」「アイアイ、ネギトロ」「アタシはイクラだ」「アイアイ、イクラ」「チャを頼む」「チャはセルフです」「サケを温めて」「アイアイ、サケね」路上立ち食いスシ屋台に二人は並び、腹ごしらえをする。そうする間も、他の屋台や濡れた路上を行き交う人々を注意深く観察する事は忘れない。25

2015-08-12 01:20:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「しかしその……なんだね?バッカスだっけ?」レッドハッグがサケを呷り、フジキドのオチョコにも注いだ。「ふてえ奴だよ。酩酊ッてのはさ、無防備じゃないか。楽しい時間……それをアンタ……つけこんで」「うむ」「やり方が汚いよね」「うむ」「台無しにするなんてさ」「うむ」 26

2015-08-12 01:25:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おやじ、ワサビ・ロール」新たな客がノレンを上げながら注文した。「アイアイ、ワサビ・ロール」「カカカ!ワサビ・ロール」レッドハッグが声に出して笑った。「よせ」フジキドが咎めた。「……」男はフジキドを見た。そしてフジキドも。沈黙が数秒間支配する。「勘定を」フジキドは素子を払う。27

2015-08-12 01:34:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだい、せわしないね」屋台を後にしたフジキドを、レッドハッグが追う。「どうした?」「いや」「妙だったじゃないか。知り合いかい?」「とにかく、次だ」フジキドは歩きながら言った。「腹もこなれた。夜が明ければタイムオーバーだぞ」「そうだった!こうしてる場合じゃない」「そうだ」28

2015-08-12 01:37:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「次はどこに行くかね」「くれぐれも……ヨコ……ヨコジ=サンが入りそうな店にせよ」「こんな時間まで空いてる店は限られてくるからね。大丈夫さ」「うむ。水は無いか」「次の店で頼めばいいじゃないか」「水は」 29

2015-08-12 01:39:50
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……「イヤーッ!」KRAAAASH!フジキドは路上に積み上げた瓦に拳を打ち下ろし、割り砕いた。レッドハッグは鼻を鳴らし、自分の目の前に積み上げられた瓦に拳を打ち下ろした。「イヤーッ!」KRAAAAASH!「これじゃ勝負にならない!瓦を倍持って来なきゃ」「時間の無駄だ」 30

2015-08-12 01:43:01
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……「そうじゃ!あれも若者に非があった。そう、ちょうど今日から4年前の事だぞ。操車場に迷い込んだワシは……いや……夜の駐車場だったか……つまり……」キャプテン・ジェネラルは記憶を辿り始め、凍り付いた。「ロシア帽の男は?」「ロシア帽……あれは4年……」二人は唸り、サケを呷る。 31

2015-08-12 01:47:36
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「アンタらは気をつけなされよ。奴らは恩を仇で返す。必ずな」「長生きしてね」レッドハッグは当たり障りのない言葉を残した。二人は梯子を上がって地上に戻った。途中、危なく手を滑らせた。「何なんだい、あの爺さんは」「うむ……」 32

2015-08-12 01:50:23
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……「ロシア帽ロシア帽、どこもかしこもロシア帽だ」レッドハッグが大声を出した。「何だと?どこだ」フジキドが振り返った。「ヒッヒヒヒ!」レッドハッグが笑った。「だって、あのロシア帽赤いだろ!」レッドハッグが指さした先を見、フジキドは息を呑む。そして走り出した。「ヨコジ=サン!」33

2015-08-12 01:53:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ!」飲み屋から出て来たロシア帽の男は、走って追いかけてくるトレンチコートの男に仰天し、逃げ出した。足を縺れさせて転倒した。「アイエエエ!」「ヨコジ=サン、話を」フジキドはふらつきながら追う。その横をレッドハッグが走り出る。「イヤーッ!」タックルだ。「アイエエエ!」34

2015-08-12 01:57:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨコギ=サン!アンタねえ。どれだけ探したと思ってるんだい」レッドハッグはロシア帽の男にのしかかり、揺さぶった。「アイエエエ!」揺さぶられながらロシア帽の男は帽子を強く押さえ、決して脱げないようにした。「何だよ!カネなら返さんぞ」「アタシャ借りてないね!」「話を訊きたいのだ」35

2015-08-12 02:00:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ、アンタは一体……カネは借りてないぞ!」「カネではない。整理する」フジキドは息を吐き、ロシア帽の男の前にしゃがみ込んだ。「整理する……オヌシは酩酊して前後不覚に、陥り、ディオニュソスというニンジャに襲われ、行方不明になった」「なってはいない」レッドハッグが訂正した。36

2015-08-12 02:03:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨコジ=サン。犠牲者は出続けているのだ。否、そればかりか、オヌシに再度危険が及ぶかもしれぬ。覚えている事を、なんでもいい、話してくれ……」「俺はヨコジじゃない!カネも借りてないぞ、アンタからは!」「何だと」フジキドは呻いた。「オヌシはヨコジではない……だがそのロシア帽……」37

2015-08-12 02:06:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「帽子の事なんていいじゃねえか!」男はロシア帽を強く押さえた。「人違いだと?」フジキドはレッドハッグを見た。レッドハッグは首を振った。「俺はヨコギだ!ヨコギ・ヤマダだ」「何……」「だから、あってるよ!続けな!」レッドハッグがフジキドを叱りつけた。「頼む、ヨコジ=サン」 38

2015-08-12 02:08:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨコギ=サン。アンタさ、この前したたか酔っ払って、夢の中で見たんじゃないのかい」レッドハッグは敢えてその単語を口にした……「ニンジャをさ!」「ニンジャ!」ヨコギは目を丸くした。「ニンジャ……ア……アイエエエエ!あれは、ニンジャ!ニンジャ、ナンデ?」「ニンジャなんだね!?」 39

2015-08-12 02:10:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャが、お、俺と、トミの事を……そんな!アイエエエ!」ヨコギは頭を激しく振り、泣き叫んだ。「トミ=サンとは?友人か?行方不明になったのか?」フジキドは尋ねた。「嫌だ!」ヨコギは叫んだ。「嫌だ!連れて行かないでくれ!」ヨコギはレッドハッグを……否、その後ろを凝視している。40

2015-08-12 02:15:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは弾かれたように後ろを振り返った。霞の漂う裏路地の闇、何かが身じろぎした。目を細める。グラつく視界の中、恐ろしげな姿はニンジャめいて……「アイエエエエ!」ヨコギが叫んだ。彼にははっきりと見えているのだ!「アイエエエ!」その叫びは酒臭い。フジキドはこの瞬間、思い至る!41

2015-08-12 02:21:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨコ……ヨコギ=サン」フジキドはヨコギがしっかりと握った瓶をもぎとった。「シツレイする」「アイエエエ!」レッドハッグがフジキドを見る。フジキドは瓶のラベルを見る。アルコール度数の表記を。そしてうんざりと首を振ったのち、それを呷った。「何やってんだい!こんな時に」「酩酊だ」42

2015-08-12 02:23:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは立ち上がり、たたらを踏んだ。「ムム……」今や彼のグラつく視界には、しめやかに接近してくる恐るべき影がはっきりとした輪郭を伴って見えていた。ナムサン……ニンジャ第六感と状況判断、そしておそらくはこの奇妙な夜のアトモスフィアが寄与し、彼を正解に導いたのだ。不可視の敵に!43

2015-08-12 02:27:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SSSSHHHHH……」幽鬼じみたニンジャは……然り、今のフジキドには、それがニンジャだとはっきりわかった……己の獲物の前に立ちはだかった存在を認識し、訝しむように立ち止まった。フジキドはせり上がるものをこらえながら、かろうじてアイサツする。「ドーモ。ディオニュソス=サン」44

2015-08-12 02:31:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SHHHHH……ニンジャだと?俺が見えるのか?」幽鬼は歪んだ声を発した。「異な事よ……そして俺の名はディオニュソスではない」幽鬼はアイサツした。「ドーモ。バッカスです」フジキドは頭を押さえ、踏みとどまり、アイサツを返した。「ドーモ。バッカス=サン。ニンジャスレイヤーです」45

2015-08-12 02:33:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんだって!?」レッドハッグが叫んだ。「どうなってる?」「なんということだ……酩酊者が知覚する……ニンジャだ」「成る程ねえ」レッドハッグも相当に酔っており、素直に頷いた。ニンジャスレイヤーはヨコギの瓶をかろうじてレッドハッグに手渡す。そしてカラテを構えようとして、嘔吐した。46

2015-08-12 02:37:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ザ・ドランクン・アンド・ストレイド】#2 終わり。#3 に続く

2015-08-12 02:38:02