ザ・ドランクン・アンド・ストレイド #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」薄れかけるバッカスがレッドハッグに蹴りを入れた。「グワーッ!」不可視となったバッカスにレッドハッグは更に打撃を受けた。彼女はキリモミ回転してアスファルトを転がった。「アイエエエ!」ナムサン!ヨコギが無防備だ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは自動販売機に走った。21

2015-08-15 01:29:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは泣き叫んで不可視の者に引きずられるヨコギ、フラフラとフラつきながらなんとか立ち上がったレッドハッグを振り返りながら、懐から財布を取り出し、素子をベンダースロットに入れた。彼は血走った目で商品ラインナップを吟味。「悪い金塊」という銘柄のサケのボタンを押した。22

2015-08-15 01:34:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャバァーン!販売機から吐き出されたアルミ缶のプルタブを開け、得体のしれぬ安アルコールを流し込んだ。ゴクゴクと喉を鳴らしてサケを飲むうちに、ヨコギを引きずるバッカスの姿が見えて来た。「大当たりドスエ!」ストコココピロペペー!自動販売機がマイコ音声を発した。キャバァーン!23

2015-08-15 01:37:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そう、この自動販売機はスロットマシン機能がついており、数字が揃うともう一本吐き出されるのだ!ニンジャスレイヤーは「悪い金塊」を迷わず押した。キャバアーン!吐き出されたアルミ缶のプルタブを開け、得体のしれぬ安アルコールを流し込んだ。「大当たりドスエ!」ストコココピロペペー! 24

2015-08-15 01:39:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サケを流し込むうち、レッドハッグがよろよろと殴り掛かる相手の姿の輪郭がはっきりし始めた。ニンジャスレイヤーは今度も迷わず「悪い金塊」を押した。キャバアーン!素早く缶を取り出す。時間が惜しい。「イヤーッ!」チョップで缶の上部を切断し、それをゴクゴクと呑んだ。「フウーッ……!」 25

2015-08-15 01:42:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」ヨコギが悲鳴を上げた。「ハアーッ……今……待っておれヨコジ=サン」ニンジャスレイヤーは左によろけ、右によろけた。「ヒック」ジュー・ジツを構えようとする。「ヒック。私、が相手だ。デュオニュソス=サン……否、バッカス=サン?」 26

2015-08-15 01:46:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」バッカスはクナイを投擲した。「ウ……」ニンジャスレイヤーはよろめき、上体をそらした。そこを恐るべきクナイが通過した。「ウム」ニンジャスレイヤーは頷き、一歩踏み出した。二歩。三歩。「イヤーッ!」断頭チョップが襲い来た。ニンジャスレイヤーはぐらりと身体を揺らした。27

2015-08-15 01:50:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウム……」ニンジャスレイヤーの顔の横をチョップが通り過ぎた。「ワカル」ニンジャスレイヤーは左に、左によろめいた。「ナラク。これはつまり、ヒック」そして右によろめく。倒れ込みながら、どうにか蹴りを繰り出す。「イヤーッ!」「グワーッ!」変則的な蹴りがバッカスの鳩尾を捉える。 28

2015-08-15 01:53:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは地面に手を付き、バックフリップした。着地でフラついた。彼は「電話王子様」と書かれたネオン看板にカラテを構えた。「ちょい右だね」座り込むレッドハッグが指さした。「ウム」ニンジャスレイヤーは腕を振り上げ、ぐるりと向き直った。裏拳だ。「グワーッ!」29

2015-08-15 01:57:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

予測しづらい裏拳を受けたバッカスはよろめく。ニンジャスレイヤーは倒れかけ、地面に手をついて転倒を免れる。そのまま強引にメイアルーア・ジ・コンパッソを繰り出す。「イヤーッ!」バッカスはブリッジでこれを回避!ニンジャスレイヤーは勢い余って再回転、バッカスのブリッジに倒れ込んだ。30

2015-08-15 02:01:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チャンスだよ!やっちまえ!」レッドハッグが腕を振り上げた。彼女はせり上がるものを押さえた。レッドハッグの声で我に返ったニンジャスレイヤーは、己を強いてバッカスを押さえ込み、マウントを取った。この機会逃すべからず!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」 31

2015-08-15 02:04:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

酩酊者がしらふの者にまともなカラテでかなう道理は無し。その前後不覚の境地にかえっておぼつかない勝利の手がかりを見出したニンジャスレイヤーは、思いがけずブッダの微笑みに恵まれたか、あるいはフーリンカザンの一側面か?どちらにせよ今の彼に深甚な考察は不可能だった!「イヤーッ!」32

2015-08-15 02:10:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「ハアーッ……ハアーッ……ウム……イヤーッ!」「グワーッ!」「ワカル」ニンジャスレイヤーは右腕を振り上げ、力を込めた。「……イイイイヤアアアーッ!」「グワーッ!」33

2015-08-15 02:13:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの拳はバッカスの超自然のメンポを破砕、煮えたぎる混沌めいた顔面を打ち砕いた。「アバーッ!」バッカスは悶絶し、エクトプラズムめいたものを幾つも吐き出した。それは行方不明の泥酔者達にまつわる何かであったかもしれない……「サヨナラ!」バッカスは爆発四散した。34

2015-08-15 02:15:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエ、アイエエエ!」ヨコギは泡を吹いた。「これでオヌシが幽鬼に苛まれることは、」ニンジャスレイヤーは立ち上がり、後ろによろめいた。「ない……あるまい」「……」ヨコギは気絶していた。泥酔してなおNRSの閾値を超えたのだろう。「ウィーピピー!」レッドハッグは両手を叩いた。35

2015-08-15 02:19:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー」ニンジャスレイヤーは壁に手をついた。「少し……休む」「大したもんだ、アンタ」レッドハッグは笑った。「さすがにアタシもこんな体験は初めてだ」「水を」「ああ、そうね、そうね」レッドハッグはニンジャスレイヤーの背中をさすった。「うん、そこの店は朝までやってる。水でも飲もう」36

2015-08-15 02:25:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ザ・ドランクン・アンド・ストレイド】#3 終わり。/ 【ザ・ドランクン・アンド・ストレイド】エピローグ

2015-08-15 02:27:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは鉄板のように焼けた石畳の上に放置され、苛まれていた。ジゴクの怪物が鼻息荒く頭の近くを行き来していた。その鼻息はゴウゴウとうるさく、フジキドは苦悶に頭を振った。後頭部が床を打ち、頭蓋が割れんばかりの痛みが反射してきた。フジキドは叫び声すら上げられず、ただ目を見開いた。 1

2015-08-15 02:30:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」頭の下に枕。否。誰かのスニーカーだ。横を見た。レッドハッグの死体めいた寝顔があった。頭の上の怪物の唸りが止んだ。それは掃除機の音だった。フジキドは息を止め、ガバと起き上がった。「起きたか」女の声。振り返る。エーリアスだ。「ここは」「俺のアパートだ。で、当然そこは玄関だ」2

2015-08-15 02:35:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは己の身体を叩いた。トレンチコート。泥が乾き、皺だらけだ。髪に触る。ハンチング帽は無い。「あンたら」エーリアスは掃除機を片付けながら言った。「二人して無理やり入って来て、そのままそこにブッ倒れて、そのあと、テコでも動かねえ」フジキドは反射的にレッドハッグの肩を揺すった。3

2015-08-15 02:38:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フフ」レッドハッグは目を覚まさず、口元を微笑ませた。エーリアスはフジキドを見た。そして繰り返した。「俺のアパートで、そこは、玄関だな」「私は」フジキドは口を開きかけ、沈思黙考に入った。エーリアスは冷蔵庫から水のボトルを取ってきて、フジキドに差し出した。「ドーゾ」「申し訳ない」4

2015-08-15 02:43:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まあ、あンたがさ、よっぽどの事だと思うんだよ」エーリアスは憮然として言った。「何があったのかっていう話になるけどさ」「つまり」フジキドは立ち上がった。彼は泥酔者だけが接触可能なニンジャの恐るべき行いについて、断片的な記憶を修復しようと努めた。そして言った。「整理しよう」 5

2015-08-15 02:50:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ザ・ドランクン・アンド・ストレイド】終わり。

2015-08-15 02:53:58