ラバウル珈琲農園 孤独

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赤肩 @fuyutuki67

ことの始まりは一本の内線だった。ラバウル珈琲農園では日用品類はすべて外部に発注し軍のルートとは別に会計を行っていた。その日はちょうどその日用品類購入決済日だった。財産管理部担当艦娘、大淀はここ数ヶ月の駆逐艦寮からの要望に疑問があった。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 14:57:28
赤肩 @fuyutuki67

「なぜこんなに下着類が必要なんでしょうか?」女児用下着50セット、常識的に考えれば時期的な買い替え、または駆逐艦の大規模増強などが考えれるがここは常夏のラバウル珈琲農園、季節の変わり目も無ければ大規模増強する金も無い。何かがおかしい、大淀はそう直感した。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:00:09
赤肩 @fuyutuki67

そうして彼女は受話器を取った。本体に貼られた内線番号シールに書かれた数字を回し司令部にこの件の一応の確認をとった。司令部の受話器を取ったのは当直秘書艦大井だった。彼女は大淀からの内線を自らの上司たる提督に回した。秘書艦として応答できる内容ではなかったからだ。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:03:59
赤肩 @fuyutuki67

ラバウル珈琲農園提督、コーヒーバカは驚愕した。女児用下着50セットの量ではなく、その金額にである。「早急に原因を確認します、大淀さんはその書類を今すぐ司令部まで持ってきてください」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:07:55
赤肩 @fuyutuki67

この日の彼の判断は的確だった。受話器をおろすとすぐにこの問題に対応できる部署、即ちラバウル農園警備隊警備隊長神通を司令部に呼び出した。部屋に入った神通は普段の野菜泥棒や野良猫対策とは比べ物にならない空気を悟り状況を聞かされるとすぐさま行動を開始した。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:10:19
赤肩 @fuyutuki67

二時間後、神通は再び司令部に出頭した。この事件は軍規に抵触していた、所謂下着泥棒である。「報告を聞こう」提督は神妙な面持ちで神通からの報告を聞いた。「まず私は駆逐艦寮に行き状況を確認しました。結論だけ先に述べますと本件は内部犯による下着窃盗事件です」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:14:35
赤肩 @fuyutuki67

秘書艦大井は驚愕した。そのような者がこの基地にいるはずがない、何かの間違いではないのか。しかし現実に事件は起きている。「被害を確認したところ盗まれていたのは駆逐艦朝潮や暁を初めとする計五名の下着でした」神通はこの二時間で完璧に調べ上げていた。無論、犯人も。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:19:39
赤肩 @fuyutuki67

「入渠記録と衣服洗濯記録の下着類に差があることから当直洗濯係のミスということも考慮しましたが量的に不自然であり本件を窃盗と断定、被害艦入渠時の監視カメラ記録映像をすべて確認したところ犯人らしき艦の顔と姿が映っていました」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:23:59
赤肩 @fuyutuki67

淡々と報告する神通の姿に大井は戦慄した。この艦は敵にしてはならない、本能がそう告げている。「一応当基地唯一の男性である部屋も確認しましたが該当物は確認されませんでした」この行動は無許可であった。「え、俺なんも……」提督は見られたらまずい別の物を脳裏に浮かべた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:27:30
赤肩 @fuyutuki67

「提督」神通の透き通った眼が提督の眼窩を貫く。「あとで一緒にお片づけしましょうね」提督は何も言わず、ただ無言で頷いた。あの眼に逆らってはならない、武装していないから安全とは限らない、その気になればこの机を飛び越え首に一撃入れることだって可能なのだ。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:30:59
赤肩 @fuyutuki67

「報告を続けます。監視カメラに映った艦の部屋に確認に向かったところ部屋にはいるが扉を開けたくないと申しましたので警備隊長としての権限により突入、被疑者長門型一番艦長門を確保しました」神通の傍らにはTシャツ一枚にスウェット姿で体育座りしている戦艦がいた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:35:12
赤肩 @fuyutuki67

首には赤い首輪が巻かれており手綱はしっかりと神通の手に握られていた。「該当品も発見されました。改めて報告致します、本件の犯人は長門型一番艦長門の犯行です」反論は無かった、弁護を求める声も弁解しようという気力ももはや長門には残されていなかった。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:38:30
赤肩 @fuyutuki67

本来ならばこの基地の最高責任者である提督が本人に罪状を確認する場面ではあるが彼はあまりの情けなさに言葉が出なかった。秘書艦大井はあまりの事態に手で顔を隠し泣いている。「大井、君は外の空気を吸ってきなさい……」「は、はい、そうします」この場は彼女には酷だ。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:42:09
赤肩 @fuyutuki67

部屋には提督、神通、長門の三名のみが残った。しばしの沈黙を最初に破ったのは他ならぬ長門本人だった。「私は、私は悪くない」何を言い出すか、神通が手綱を引っ張り黙らせようとするが提督はそれを止め長門に言葉を続けさせた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:44:04
赤肩 @fuyutuki67

「貴様らにはわかるまい。戦艦の孤独というものが、誰に褒められるでも無し勝って当然という圧力の中で戦う戦艦の苦しみが!」長門は立ち上がり提督に詰め寄ろうとするが首輪の手綱を握った神通がそれを許さない。「一発でも外せば蔑まれ、殺し損ねれば陰口の嵐だ……」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:47:16
赤肩 @fuyutuki67

戦艦の重圧、海戦の花形であるが故の重責が彼女を犯行に追い詰めたのか。否、戦場に立つ者全てにその重責は圧し掛かっている。彼女だけが命を張っているわけではないのだ。しかし戦場の風と戦艦故の孤高さが長門の心から潤いを奪い続けたことは事実だった。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:50:09
赤肩 @fuyutuki67

「私の乾きを癒す物が必要だったんだ。酒でも娯楽でもなく、ただそれが駆逐艦の下着だった、ただそれだけなのに何故私はこのような辱めを受けねばならんのか!?」駆逐艦を辱めた戦艦、長門の言葉はもはや空虚に響いていた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:52:31
赤肩 @fuyutuki67

あまりの弁解に神通は言葉を失いただ手綱を強く握り締めた。この戦艦を野放しにしてはならない、彼女は狂っている。「なぁ、提督よ」眼に涙を浮かべ長門は提督に聞いた。「お前は知っているか?あの使用済み女児下着の湿気と肌触りを」無論、彼はそのような事は一切知らなかった。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:55:07
赤肩 @fuyutuki67

「あの芳しい香り、サイズの違いからくる性器への締め付けが何度も私を癒してくれたんだ」提督は俯いたまま動けず、神通は肩から力が抜け手綱を放してしまっていた。「なぁ提督よ、私から目を背けないでくれ。ちゃんと私を見続けてくれ」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 15:58:44
赤肩 @fuyutuki67

長門は提督の隣に立ち、提督の肩を掴んで自らのほうへ目線を向けさせた。「貴様が私を見てくれればそれで良かったんだ。そうすれば私はこのようなことはしなかっただろう」そういうと長門は自らのスウェットに手をかけ下着ごと下に下ろした。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 16:02:29
赤肩 @fuyutuki67

露になる長門の下腹部からは透明な糸が垂れ下がり、駆逐艦のものと思われる下着に滴っていた。そして、そこにあるはずの陰毛は無かった。「全て剃ってしまったよ。こうしていると私が駆逐艦になったように思えて、歩くと余計食い込んでたまらないんだ」 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 16:05:21
赤肩 @fuyutuki67

「私はか弱い駆逐艦だ、お前がいてくれなければダメなんだ」長門は錯乱していた。提督は、決断した。「神通、彼女を独居房へ」「そんな?!まだ、また私から眼を背けようというのか!また私から逃げようと」提督は長門の肩に手を回し、彼女を抱きしめた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 16:07:50
赤肩 @fuyutuki67

長門は膝から崩れ落ち、こどものように泣いた。「俺が悪かった、あそこから出たらちゃんとお前の手を握っていてやる。もうお前を一人になどしない」長門の頭を抱きしめながら彼女に謝罪と誓いを立てた。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 16:11:12
赤肩 @fuyutuki67

「俺も自分の罪を償う、だからお前も自分の罪を償ってくれ」そこまで言い終えると神通が長門の肩に手を置いた。長門にはわかった、自分はここからやりなおせるのだと、自分はもう一人ではないことを。 #ラバウル珈琲農園

2015-08-17 16:13:58