アリ・フォルマン『コングレス未来学会議』について

ロラン @malgre_nuit

アリ・フォルマン『コングレス未来学会議』鑑賞。カメラ目線で涙を浮かべるロビン・ライトの実写で始まる本作が、歩み寄る彼女の声に振り返る息子のアニメーションで終わる時、離れるには長すぎた年月を経て、親子は再び巡り会う。空想でも構わない。現実と幻想を行き交う果ての奇跡にひたすら涙した。

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『コングレス未来学会議』映画界への批判的視座やアニメーションの幻覚的ユートピア／ディストピアよりも本作は、女優としてのアイデンティティーを、終幕には身体をも引き替えに息子を探し守り続けるロビン・ライトの旅であり、故に息子が夢見る飛行機の如く、彼女が大空を羽ばたく瞬間が美しく。

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『コングレス未来学会議』ロビン・ライトの泣き顔に接写したファーストショットで風に揺れる旗々、その飛行場の柵の向こうの航空機、聴力テストの場面の水槽、アニメパートの群衆や草花、建物の屋上に見える黒煙、そして空に浮かぶ無数の飛行船など、実写・アニメ共に遠景が徹底された映画でもある。

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『コングレス未来学会議』聴力テストで息子は、医者の単語のほとんどを聞き間違えてしまうが、彼の答えが「孤独」や「恐怖」「痛み」あるいは「愛」など彼の状況を表すような言葉であること、「凧」や「空」といった彼にまつわる言葉は決して聞き間違えないことに、作り手の登場人物への愛を感じた。

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『コングレス未来学会議』ロビン・ライトが女優としての自身をデジタルデータとして売り渡した20年後、年老いた彼女は、警察官の男から2度「あなたがロビン・ライトか」と訊ねられる。絶大な人気を誇るCGの彼女と、街を歩いても（CGのスターと同一人物だと）気づかれない実存との落差が切ない。

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『コングレス未来学会議』実写パートでロビン・ライトに約束された「永遠の若さ」が、アニメパートで彼女自身が歌う"Forever Young"としても実現する。同時に、彼女が揚げた凧が飛行機と衝突し、息子の夢も母親によって叶えられる。 pic.twitter.com/VnSONMwu06

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『コングレス未来学会議』ロビン・ライトは終盤、息子の誕生から成長、そして彼女への眼差しを追体験する。このシークエンスで、実写と全く同じ構図のショットがアニメーションで反復されることで、実写パートで母親が訪れた場所を、アニメパートで息子も辿っていたことが、観客とロビンに明かされる。

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『コングレス未来学会議』前述したシークエンスでロビン・ライトの息子は、モニターや水面、窓、鏡などに反射して登場する。彼の人生を追体験することで母親が息子を見つめるように、画面に反射する息子もまた母親を見つめている。時空を越えて成立する眼差しの交換に涙が止まらなかった。

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『コングレス未来学会議』本作を観ずして上半期ベストを決めたことを後悔させる大傑作だった。時間が経つにつれてより大切になっていくであろう映画。実写には身体を、アニメーションには声を捧げたロビン・ライトが素晴らしい。上半期ベストに追加。きっと年間ベストの1本にもなるはず。