歪んだ世界と愛の唄外伝[朱璃]

劇団The LAST PEACE @LastPeace815

第五項 帰ると朱璃の様子がおかしかった。 どうしたの？ 話しかける。 何でもない。 慌てたようにランドセルを隠した。 嫌な予感がした。よく見ると、赤いランドセルに白い文字が書かれていた。何と書かれているかはわからなかったけれど、それが良い意味ではないことは明らかだった。

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第五項 帰ると朱璃の様子がおかしかった。 どうしたの？ 話しかける。 何でもない。 慌てたようにランドセルを隠した。 嫌な予感がした。よく見ると、赤いランドセルに白い文字が書かれていた。何と書かれているかはわからなかったけれど、それが良い意味ではないことは明らかだった。

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僕は朱璃に問い詰めた。 いじめ？ 朱璃はただ、首を振った。 違うの、ただの悪ふざけ。じゃんけんで負けたから、悪戯されただけ。 頑なに否定した。朱璃はその日、妙な明るさと共に笑顔で僕に接した。その気持ち悪さは言うまでもなかった。 どうしよう。 それだけが頭をめぐった。

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僕は朱璃に問い詰めた。 いじめ？ 朱璃はただ、首を振った。 違うの、ただの悪ふざけ。じゃんけんで負けたから、悪戯されただけ。 頑なに否定した。朱璃はその日、妙な明るさと共に笑顔で僕に接した。その気持ち悪さは言うまでもなかった。 どうしよう。 それだけが頭をめぐった。

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学校に問い詰めようかとも思った。 それが、さらにエスカレートさせる要因になるかと思って、止めた。 朱璃がいじめを受けているのは明らかだった。 こっそりランドセルを開けると、そこには、ボロボロの教科書がしまってあった。 何故気づけなかったのか、そればかり責めた。 ＃朱璃

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学校に問い詰めようかとも思った。 それが、さらにエスカレートさせる要因になるかと思って、止めた。 朱璃がいじめを受けているのは明らかだった。 こっそりランドセルを開けると、そこには、ボロボロの教科書がしまってあった。 何故気づけなかったのか、そればかり責めた。 ＃朱璃

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僕はただ、見守ることしかできなかった。 気を張って観ていると、朱璃が段々とボロボロになっていくのがわかった。 僕は…何も出来ないのか。 自分の無力さをただ呪った。 仕事は軌道に乗り始めていた。 けれど、どんなときも朱璃の事が気にかかってしょうがなかった。 ＃朱璃

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僕はただ、見守ることしかできなかった。 気を張って観ていると、朱璃が段々とボロボロになっていくのがわかった。 僕は…何も出来ないのか。 自分の無力さをただ呪った。 仕事は軌道に乗り始めていた。 けれど、どんなときも朱璃の事が気にかかってしょうがなかった。 ＃朱璃

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そんなある日、仕事の途中でラジオを聴いているなか、いじめの話題が流れた。 いじめは、誰にでも起こりうる、と、どんな人でも、恨まれることはあるのだ、と、その言葉にうちひしがれた。 じゃあ何故、朱璃だったんだ？ その答えは出なかった。ただただ、苦しかった。 ＃朱璃

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そんなある日、仕事の途中でラジオを聴いているなか、いじめの話題が流れた。 いじめは、誰にでも起こりうる、と、どんな人でも、恨まれることはあるのだ、と、その言葉にうちひしがれた。 じゃあ何故、朱璃だったんだ？ その答えは出なかった。ただただ、苦しかった。 ＃朱璃

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その時の運転手は、小野田さんという人だった。今まで、それなりに仲良くやって来たつもりだった。 しかし、僕は耳を疑った。 でもさ、結局いじめられる側になんか問題あるんじゃない？これって。 そういう隙がなきゃいじめられないでしょ？ その言葉で、我を忘れた。 ＃朱璃

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覚えているのは、小野田さんの歪んだ笑顔だった。 僕は必死に殴り続けたのだと思う。運転中だったけど、気にしなかった。 どうやら、僕が生きていることを見ると、無事に車は安全なところで止まったらしい。 あとから思い出して、自分の行動にぞっとした。 ＃朱璃

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翌日、告げられたのはクビの宣告だった。そりゃ、そうだ。運転中に突然殴りかかる男なんか、僕だって雇わない。 何故、そんなことをしたのか？そんなことは自分自身にもわからない。 後悔だけがひたすら募り、僕は気付くと、家のベッドで涙を流していた。 ＃朱璃

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そのさらに翌日、事務所に行くと小野田さんに謝られた。 自分の心ない発言で怒らせてしまったこと、嫌な思いをさせてしまったことを。 僕も応じて謝った。突然殴ってしまったこと、小野田さんには、悪気はなかったはずだということ。 こんな風に人と接せれば、楽なのに、そう思った。 ＃朱璃

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しかし、クビはクビだ。僕は事務所をあとにして、違う仕事を探した。 けれど、この間すんなりいった仕事探しが、嘘みたいにうまくいかなかった。 面接官たちが、もしかしたら僕の心を透かして見ているのではないか、と不安になった。 きっと、その動揺は面接官に伝わっていたと思う。 ＃朱璃

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一週間ほど経って、半年かけてやっと貯めたお金も、半分くらいまで減っていた。 築き上げるのには、何年もかかっても、崩れ去るのは一瞬。 そんな言葉を思い出していた。 そんなとき同級生から、同窓会をやろう。そんな誘いがあった。 僕はそれにチャンスを求めた。 第五項 終 ＃朱璃