《魔饗クランフォール》1日目|昼の饗宴

『母』がおっしゃる。 さぁ、宴を始めよう。賑やかに、厳かに。
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―― 鉄箱の中の魚の息は…

【北の魔王】フォルカ @folca_CFF

崩れ落ちた人魚を見て、フォルカは数瞬間黙り、ゆっくりと顔を上げてギルガを見る。 「………ギルガ、僕は君がいつかやるんじゃないかと思っていたよ」 しかしまさかこんな形でとは思わなかったが、と言葉を締めた。

2015-09-01 01:09:49
【東の魔王】ラヴィ @Lugh_CFF

”自慢の娘(リトル・レディ)”の堂々たる仕草に満足げに笑みひとつ零し。 ぐるりと他の『供物(こ)』らに目を遣ったならば。 白百合の内より現れた少女の、憮然とした表情に瞬きをひとつ。 それから。 横倒しになった鉄箱から動かぬ、艶やかな黒髪の──

2015-09-01 01:13:32
【東の魔王】ラヴィ @Lugh_CFF

状況を認識するや否や、無意識に体が動いていた。 倒れ伏した少女へと駆け寄れば、傍らに屈み込んで。 「大丈夫かい?」 気遣わしげに問いかけると同時、伸べた手から幾許の水滴を生み出す。 ──二度ほど、南よりの『供物』を迎えた事がある。 彼女らには水が不可欠であるとも知っていたから。

2015-09-01 01:17:19
【東の供物】ニエ @nie_CFF

主の広い背中が向かう先を数秒みやり、遅れてから脚を踏み出した。 主の隣へ、ドレスのスカートを広げるように腰を下ろす。 「ニエにお手伝いをさせてください、ラヴィ様。」 豪奢なドレス姿には似合わぬ、無骨なカバンを開けば、取り出したのは細石の詰まった小瓶。

2015-09-01 07:51:41
【東の供物】ニエ @nie_CFF

水晶を一つ手に取れば、スシラのそばへと置く。 「rig.」 小さくこぼした単語に反応して、水晶は光を抱き、吐き出したのは濃度の高い酸素。 そうしている間にスシラの周りに光が走り、陣を描いた。 水晶に封入していた酸素の増幅。

2015-09-01 07:53:21
【東の供物】ニエ @nie_CFF

それから。 陣の中に手を置いて、光を浮かべた。 自分を熱源に空気を温める。 その動作の間、娘自体が光っているのだけれど。

2015-09-01 07:53:43
【南の供物】スシラ @Susila_CFF

そして、クッション――魔族特製の、緩衝材兼酸素供給器――に埋もれた顔は上げないまま。 娘は手首に白くオーロラ色に輝く鱗を持つその腕を持ち上げ、水かきのある褐色の手を、東の魔王の手の上に重ねた。 「……すー……」 娘が少し深めに息を吸う。

2015-09-01 09:34:34
【南の供物】スシラ @Susila_CFF

クッションからの酸素を吸い尽くし、箱の中の酸素濃度は少し薄くなっていたようだ。 そして、東の魔王の水滴に、その手が触れたとき。 娘はやっと言葉らしい言葉を発した。 「どうか……」 それは魔王に対する呼びかけというよりも、うわ言のような響きで。 「どうか、肝だけは生で……」

2015-09-01 09:37:58
【南の魔王】ギルガ @guilgoer

──ピシリ。と、音でも立てそうな、強張った表情で、箱から覗くピクリとも動かぬスシラを見て、硬直していたギルガ。 駆け寄った東の二人が彼女を解放するのを見れば、とたんにオロオロと、外巻きに様子を伺って。

2015-09-01 11:22:53
【南の魔王】ギルガ @guilgoer

「ぁぁぁぁぅぅぅぅ、なに、なに、どうしたの??スシラ死んじゃうの??え、え、スシラ食べられちゃうの??」 赤い輝きの円陣の中心にぐったりと横たわるスシラの図は、とろ火で炙られる様子にも見えて。 ラヴィの優しい声かけより数倍大きな声で騒ぎながら、オロオロ、ぐるぐる、わたわたと。

2015-09-01 11:22:54
【東の魔王】ラヴィ @Lugh_CFF

くす、と思わず、うわ言のような言葉に笑みをこぼす。 「食べたりしないよ?」 幾許、活気を取り戻した様子の少女──スシラと呼ばれていたろうか──と重ねた手はそのままに、言葉を紡げば。 立てるかな──と小首を傾げ、問いを向けた。

2015-09-01 10:07:07
【西の魔王】リッカ @Licca_Queen

東の供物の一礼にはほうと小さく声を上げて、主従のようにも見える彼らが向かう先、南の供物の様子を窺う。 「そいつはまだ誰の物でもない。そんな状況で供物を食うバカはいないよ、安心おし」 朦朧とするスシラ、狼狽えるギルガの双方へ、やや呆れも交えつつ声をかける。

2015-09-01 12:00:06
【西の魔王】リッカ @Licca_Queen

それが終われば色を失った天井を見上げる。白亜の壁とシャンデリアのあったそこには、今や視界を埋め尽くさんばかりの鉄塊が鎮座していて。 「あんたのところの機械はまた進歩しているね、フォルカ。これが魔法抜きで走るってんだから凄い話だよ」

2015-09-01 12:00:27
【北の魔王】フォルカ @folca_CFF

「なんだ、生きてたのか。そりゃあ良かった」と笑う。 リッカの言葉に対してはわずかに首を振り、「いまの速度じゃ、水生の魔物に船を引かせる方が速いくらいさ。普通の帆船と変わりゃしない。魔力無しで人だけで動かれるとはいえ、まだまだ欠陥品だね」

2015-09-01 12:04:29
【西の魔王】リッカ @Licca_Queen

天駆ける船から降りてくる北の供物の毅然とした姿を興味深げに見つめた後、はたと気づいて隣を見遣る。沈黙を守り、その瞳の光を見せようともしない自らの供物へ。 「何をしているんだい、四魔王の御前だよ。早くおまえも挨拶しな」 様子にも、施された拘束魔法の気配にも怪訝そうな顔をしながら。

2015-09-01 12:09:30
【南の供物】スシラ @Susila_CFF

「う……」 落ち着いた優しい声と、狼狽した幼い少年の声が、娘の鼓膜を叩く。 ――あの声は。 「ダバダバ様!?」 がば、と顔を上げ、南と東の魔王に交互に顔を向けては。 「た、大変なご無礼を! 供物が魔王様に介抱していただくなど!」 手に掴まり、立ち上がって頭を下げた。

2015-09-01 12:13:18
【南の供物】スシラ @Susila_CFF

他の国の魔王たちのおおまかな外見については書物で読んでいた。 咄嗟にその知識を引き出し、目の前の存在が東の魔王だと判断したのだ。 「わ、わたくし、ラズイオリから参りましたスシラと申します! 大変お見苦しい登場失礼致しました!」 ちらり、心配そうな南の魔王を見遣り。

2015-09-01 12:13:53
【南の供物】スシラ @Susila_CFF

「あの、その、ダバダバ様……えっと、ギルガ様御自らわたくしを運んでくださるとは思っておらず……その」 ――ダバダバ様に恥をかかせるな、という父の言葉が脳裏をよぎる。 「感極まって気を失っておりましたのです!」 そして再び、南の魔王の顔色を窺う。

2015-09-01 12:30:54
【南の魔王】ギルガ @guilgoer

そんなスシラの懸命な取り繕いを、120%鵜呑みにした顔で 「なんだ、そういうことだったのか!あははっ、相変わらず魚人達はボクのこと大好きだなぁ!」 満足げに頷きながら。

2015-09-01 12:38:35
【北の供物】グリース @gris_clownF

北の魔王の杖の音を合図に、少女は歩を進める。 四人の魔王と三人の供物を見渡せる位置に着くと、絹のスカートの裾を摘んでお辞儀をひとつ。 「北のライリクの地より、供物となるべく参りました」 そして、顔を上げた後、僅か首を動かし周囲を窺う。 魔王と異国の娘。どちらも、初めて見る。

2015-09-01 12:41:12
【東の魔王】ラヴィ @Lugh_CFF

勢いよく立ち上がるスシラの様子に、安堵したように笑みを浮かべ。 乱れた髪と花を整えようと、細い指先で触れようとしながら。 ちらと、傍らにて魔法陣を展開した愛娘へと視線を向ける。 「有難う、"可愛い娘(リトル・レディ)"。本当に立派に育ってくれて……」 ほろりと勿忘草色の瞳から涙。

2015-09-01 12:43:42
【東の供物】ニエ @nie_CFF

少し、後ろで南の王が狼狽える声がする。 彼を嗜める声がする。 それを聞きながら、呼吸をゆっくり、ゆっくり繰り返す。 意識を失っていた少女が動く気配が、元気な声が聞こえるのに、ほっと息ついた。 それなら、熱も、酸素も、必要なかっただろうか。 それでも。

2015-09-01 12:44:21
【東の供物】ニエ @nie_CFF

「…おはようございます、スシラさ…ん。足元に、陣がありますが、そちらから出られますと、少し酸素が少なく涼しくなっていると思われますので、心の準備をしてから出て頂けますか?」 唐突に切っては、苦しかろう、寒かろうと。

2015-09-01 12:44:25
【東の供物】ニエ @nie_CFF

口を開けば、少し陣は歪む。 耳からは音を、声を集めるけれど…瞼を伏せて、集中を高める。 「いえ、お役に立てて、何よりです。」 褒めて下さる声に、少し緩めた音。 嬉しくて。

2015-09-01 12:46:54
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