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laurassuoh
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元・お嬢様、現艦娘の秋月が戦況悪化で実家に呼び戻されそうになり、実家に向かう駅のホームで見送りに来た朧に「さようなら、です……朧先輩」と涙声で言うんだけど「だめ。秋月、まだ私を好きだもん」と言って手を掴んで「一緒に逃げよう? 朧、秋月と一緒ならどこへだって行ける」と駆け出す話
2015-09-01 18:55:12![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
反対方向の電車に飛び乗って、知らない海があるところまで電車に乗って昼も夜も逃避行を続ける朧と秋月。二人はついに津軽海峡まで辿り着く。しかし、そこには深海棲艦の出現により荒廃した町と濁った海、生きる気力を失くしかけた人々がいた。かつて存在した鎮守府も閉鎖されフェンスに囲まれている。
2015-09-01 19:01:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
朧と秋月がいた鎮守府はまだ機能を保っていたが、政府に見捨てられた土地ではこのような参事が当然の如く起きていたのだ。 「また奴らが来たぞ!」 叫び声がする。海の方から三角形の悪機が緑色の目を光らせて飛んでくる。人々は貫かれ、燃え、潰されるだけ。 「助けましょう!」 秋月が言う。
2015-09-01 19:05:11![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「……無理だよ」 「どうして!?」 目の前で守るべき人が、町が蹂躙されているのに。 「だって私たち、艤装がないし……それに、あったとしても、ここで戦ったら艤装のGPSで探知されて、逃げたってことも、私たちのいる場所もばれちゃうよ」 朧は町に背を向けて避難列車の出る駅を目指す。
2015-09-01 19:08:59![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「待ってください!」 秋月はその場に背負っている荷物を下ろす。 「まだあの鎮守府に予備の艤装があるかもしれません!」 「それで?」 「それで戦えば……」 朧は秋月に向き直って空を指さす。 「無理だって、秋月。駆逐艦2隻に何ができるの? 相手は航空戦力をあれだけ持ってるんだよ」
2015-09-01 19:11:57![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「どうしたんですか朧先輩! いつもの先輩らしくないですよ!」 秋月は叫んで朧に一歩詰め寄った。朧は目を伏せたまま動かない。 「いつもみたいに言ってくださいよ! 負けませんからって!」 秋月は朧の肩を掴んで、自分より小さなこの先輩に届くようにと叫ぶ。 「……無理、だよ」
2015-09-01 19:14:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「なんで!」 「無理なんだよ!」 秋月が問い詰めると、朧は肩に置かれた手を振り払った。 「朧、秋月が艦娘やめるって聞いてホッとしたんだ……これで秋月は死ななくてすむ、って……だけど、それから毎日が苦しかった……辛かった! 秋月がそばにいないと、朧、ダメな風に、なっちゃってたんだ」
2015-09-01 19:20:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
秋月は朧の目の端に光る粒を見た。 「本当は秋月を見送るつもりだった……だけど我慢できなくって、連れ出して……逃げてる時は幸せだったよ……これでずっと一緒なんだって……だから無理なの! ここで秋月が死ぬのも、生きて帰って朧とお別れするのも……だから、ずっとこのまま……」
2015-09-01 19:22:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「朧先輩……失礼しますっ」 「えっ……」 秋月は指を伸ばすと俯く朧の脳天に軽いチョップをお見舞いした。朧は秋月の突然の行動に困惑しながらその顔を見上げる。 「秋月、ずっと勘違いしていました」 「勘違い?」 朧は痛くもない頭部を押さえる。
2015-09-01 19:29:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「秋月、朧先輩に憧れて、朧先輩が必要だって今までずっと思っていました……だけど違う。朧先輩にも秋月が必要だったんですね……ごめんなさい」 秋月はその場で頭を下げた。 「あ、秋月っ?」 あたふたしながら、朧は何を言えばいいのかと考える。秋月はそんな朧を見て微かに笑った。
2015-09-01 19:33:26![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「ねえ、聞いてください……秋月が好きになった朧先輩は、かっこよくて優しくて、口数が少なくて照れ屋で、誰よりも仲間思いの人……秋月、もう逃げません。敵からも、両親からも、自分の、気持ちからも。朧先輩の隣にいたい……それが秋月の願いって、気が付きましたから」 秋月は手を差し出す。
2015-09-01 19:35:03![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「この手を握ってください、朧先輩……どうか」 朧は秋月の言葉に目を見開いて固まっていたが、やがて自分の前に差し出された手が小さく震えているのに気が付き、凍った表情を融かして笑顔を見せた。 「いつもの朧らしくなかった、かな……うん……秋月、ありがとね」
2015-09-01 19:38:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
朧は手を握って、引き寄せて、あっという間に秋月に口づけした。 「っ……朧先輩!?」 「フェンスの向こう、行ってみよ? きっとまだ艤装があるよ」 朧は荷物を下ろす。 「近くの海域にSOSを送っておけば、さすがにこんな近海、強い敵はいないはずだから……あとはあの艦載機をどうするか」
2015-09-01 19:41:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
フェンスをよじ登る朧。秋月はハッと我に返りその背中を追う。 「待ってください! 朧先輩!」 秋月もフェンスに飛び乗り、朧に続いて向こう側に飛び降りた。 「生き残ろうね、秋月」 朧がそう言って秋月の手を握る。 「はい、必ず! それとですね、朧先輩」 「なに?」
2015-09-01 19:47:11![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「秋月は防空駆逐艦、艦載機撃破はお任せください!」 胸を張る秋月。朧はニヤリと笑って、その手を引いて走り出す。 「任せる!」 「はい!」 閉鎖された鎮守府から救難信号が発信され、秋月と朧、失踪した2隻の位置情報も所属鎮守府に送られた。 「駆逐艦、朧」 「秋月」 「「行きます!」」
2015-09-01 19:51:26