小説「呪名終刻」プロトタイプ、トレーラーエピソード 「着任」

『某ゲーム二次創作小説「名称未定」プロローグ「蝋人形と戦争」』だったもの。 翻案して「呪名終刻」に組込むことにした。
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白面真人・命式 @mailbox_is_full

小説の設定作んのめっちゃ楽しいな!

2015-09-14 20:17:31
白面真人・命式 @mailbox_is_full

そんなわけでいま書いてる小説のトレーラー?プロローグ?を投下しますん

2015-09-14 21:34:20
白面真人・命式 @mailbox_is_full

小説『名称未定』(まだ考えてない) プロローグ 「蝋人形と戦争」

2015-09-14 21:41:46
白面真人・命式 @mailbox_is_full

文明暦135年 某所 『ラボ』にて 1

2015-09-14 21:43:04
白面真人・命式 @mailbox_is_full

ピピーピピ。カタカタカタカタ。 ピーピピピピピピ。ジジッ、ガリガリガリ… 2

2015-09-14 21:43:23
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「……。……。あ、……、あっ……」 「気が付いたかね」 「ここは…どこ。わたし、わた、し、は…」 「自我と記憶の再構築までしばし時間がかかる。大人しく寝ていなさい」 「……は、い、……。」3

2015-09-14 21:44:25
白面真人・命式 @mailbox_is_full

少女は一糸まとわぬ姿で、生温い液体の満たされたヒョウタン型のバスタブに横たえられている。 『ラボ』は薄暗く、かすかに寒く、所有者の趣味の悪さを窺わせる。4

2015-09-14 21:45:33
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「ケージの外に出られるまで、あと二日は我慢しなさい」 一体、何度繰り返したのか。 本人ですら思い出せない程に、全く同じ、繰り返されたセリフ。 『ケージ』は少女の両脇に平行に並んでいる。かなりの数だ。5

2015-09-14 21:46:25
白面真人・命式 @mailbox_is_full

せわしなく動き回る、しわがれた男の声の「あるじ」は、暗い照明の中に、異様な姿を浮かび上がらせた。 おおよそ人間には似ても似つかず、動物、植物、そのどちらでもなく、どこまでも人工的な直線と流線型で構成されている。6

2015-09-14 21:47:38
白面真人・命式 @mailbox_is_full

彼は男、なのだろうか?いや、そもそも「人」なのだろうか? 立方体の「頭部」から複数の「触手」を生やし、その先端は様々な工具、人間の手首、ワイヤー、そういったものに分化して『ラボ』の操作を行っている。7

2015-09-14 21:48:30
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「そうそう。私が、お前の『お父様』だ。これからはそう呼びなさい」 「お父様…?」 「そうだ」 「頭が…頭が痛い」 「まだ『出来上がって』間も無いからな。致し方あるまいて」 少女は前後不覚のまま『お父様』の講義を受け続けた。 一つずつ、一つずつ、失った人間性を拾い集めるように…。8

2015-09-14 21:49:37
白面真人・命式 @mailbox_is_full

同日 『大本営』司令部 にて 10

2015-09-14 21:51:01
白面真人・命式 @mailbox_is_full

少女が複数、演習場のトラックを駆け回っている。 どうやら「獣の革で縫製された球を奪い合い、敵陣の目標を攻める球技」を行っているようだ。 その様子は如何にも一方的で、相手をさせられている男達は不甲斐なくも半分、諦めた調子である。 11

2015-09-14 21:52:02
白面真人・命式 @mailbox_is_full

走力、判断力、腕力、柔軟性、そのどれを取っても「彼女達」は人間離れしている。 それは男達を縮み上がらせるには十分すぎるほどの「性能」であった。12

2015-09-14 21:53:44
白面真人・命式 @mailbox_is_full

その様子を一瞥した将軍は、緊張感に顔を青くした新米司令官に向き直ると、おもむろに本題を切り出した。 「と、まあ、前置きはこの程度にして。今日君に出向いて貰ったのは他でもない。君に頼みたい、重大な任務があるのだ」 「……!」13

2015-09-14 21:55:20
白面真人・命式 @mailbox_is_full

新米は青ざめた顔をさらに青くして次の言葉を待つ。 「本日未明、南西諸島の、最終防衛線が突破された。これは君も知っているだろう。君だけではない。皆、気が気では無いのだ……」 事実、最終防衛線は突破されていた。敵方のデッドロイド融合体艦隊の恐るべき機動力によって。 14

2015-09-14 21:56:35
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「もはや一刻の猶予もない。君には、急ごしらえの『英雄』になってもらう。拒否権は無いぞ」 ハナからそんなものがあるとすら考えもしなかった新米は面食らった。サボりがバレたのではないかと内心怯えていたのだ。 15

2015-09-14 21:58:22
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「作戦と構成要素については1600時に後述する。兎も角、まずはあの子達に挨拶して来い。我が方の唯一の希望、君の盾となり、矛となる。最強の味方だ」 アゴで示された先には、獣皮ボールを軽やかに目標へ蹴り込む戦闘用少女デッドロイド部隊「マリーナーズ」の姿があった。 16

2015-09-14 22:00:18
白面真人・命式 @mailbox_is_full

マリーナーズ。 数ある戦闘用デッドロイドの中でも特に選別され、「艦隊戦に特化した教育」、「戦艦に融合し運用する能力」を与えられたエリート集団である。 その存在は軍内部でも秘匿され、独り歩きした噂がまことしやかに囁かれている。鬼だ、悪魔だ、いや殺戮機械だと。 17

2015-09-14 22:02:26
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「怖いか?ふふ、怖かろう。私も実は怖い」 おどけた口調で「提督」の肩を軽く叩きながら一人ごちる。 「ああ見えて、案外普通の女の子達だ。身体能力と、戦闘能力以外はね」 18

2015-09-14 22:04:19
白面真人・命式 @mailbox_is_full

『大本営』は、今まさに背水の陣にある。 突如現れ戦局を大転換させた敵方の新兵器「デッドロイド融合艦」に対し、為す術のなかった『大本営』に対し、 謎の技術者から「ネクロファクター」が提供された。 19

2015-09-14 22:06:54
白面真人・命式 @mailbox_is_full

「ネクロファクター」は瓶詰めの銀色の液体であり、それ自体は水銀とそう変わることのないありふれた金属に見える。 しかしながら、それは擬態であり、その実「ネクロファクター」は人工生命である。 20

2015-09-14 22:08:41
白面真人・命式 @mailbox_is_full

腐敗が進行する前、あるいは防腐措置を施した人間の遺体に「ネクロファクター」を投与し、しかるべき素材の追加と手順を踏むことで、その遺体の肉体、人格、感情をコピーした機械人形「デッドロイド」が誕生するのだ。 21

2015-09-14 22:11:08
白面真人・命式 @mailbox_is_full

彼女達「マリーナーズ」は、特に孤児、あるいは天涯孤独となった肉体的素養に優れた遺体から選別され、「ネクロファクター」による「再定義」を経てこの世に舞い戻った、いわば戦闘用ゾンビアンドロイドである。 22

2015-09-14 22:13:00