雨のレース【短編】
戦士の座をかけて山を登る、二人の青年の競争の話です
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ランズラは宝石を受け取って、沢を登り始めた。 「ありがとう。お前が戦士になったんだもんな。俺はもう急ぐ必要もない。ゆっくり登らせてもらうよ」 ランズラはしばらく登って、ふと振り返った。ガルマルは沢に突っ立ったまま、じっとしている。薄暗くて表情は見えない。 24
2015-09-27 17:47:20
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「ガルマル……どうしたんだ?」 ガルマルはゆっくりと手を振って、沢を下り始めた。そしてそのまま闇に消えた。不思議に思ったが、ランズラはそのまま沢を登った。辺りはすっかり暗くなっていたが、しばらく登ると雨がやみ始めた。雨雲の切れ間から、夕日が覗く。 25
2015-09-27 17:50:09
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ここまでくれば、山頂はもうすぐだ。全身が疲労で悲鳴をあげていたが、なんとか宝石だけは奉納することができる。男として、最低限の矜持を保てる。その安堵感でいっぱいだった。山頂の祠では、神官が祈祷を続けていた。「ただいま到着しました」 神官に声をかける。 26
2015-09-27 17:52:11
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神官は驚いた顔でランズラを見た。 「遭難したんじゃなかったのか。麓では大騒ぎだぞ。しかし、無事登れてよかった。宝石をここへ。お前が今年選ばれた戦士だ」 「戦士? ガルマルが先に来たんじゃ……」 27
2015-09-27 17:54:49
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ランズラは衝撃で全く動けなかった。あの時出会ったガルマルはいったい……? 手の中の宝石を確かめる。それは、薄暗い中では分からなかったが、ガルマルの宝石だったのだ! ランズラは神官に先程の出来事を伝える。 29
2015-09-27 17:58:23
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神官は祠に祈りを捧げて言った。 「ガルマルはお前を助けようと、死んだあと宝石を渡しに行ったのだろう。ガルマルの死体から宝石は無くなっていた。沢のルートからガルマルの宝石を回収するのは物理的に不可能だ」 ランズラは顔をあげる。 30
2015-09-27 18:01:37