フォガットゥン・フューチャー　＃４

劉度 @arther456

【フォガットゥン・フューチャー】＃４

劉度 @arther456

（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。投下中はTLを余り見ないので、感想・実況などを #ryudo_ss に書いて頂けると、後でチェックして小躍りします。では、宜しければ暫くの間お付き合い下さいませ）

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ブイン泊地元帥乗艦、『六甲』は、この時代には珍しいダズル迷彩の護衛艦である。表向きはテロリストによる小型モーターボート肉薄攻撃に対する、視覚的撹乱を狙ったものと言われているが、現実は違う。ブイン元帥の出身地の野球球団のユニフォームと同じ模様なだけである。 1

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《さあさあみんな！ここ一番の大仕事やで！》「黒潮水雷戦隊！準備完了や！」「那珂ちゃんセンター！一番の見せ場やで！」「ウチの艦載機が無いんだけど！？」《僕自身六甲を出る喜びはあった》「村田ァ！敵前逃亡は銃殺やぞ！」《はいはい！あるもんでなんとかするー！》 2

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関西弁が乱れ飛ぶ。中にはエセ関西弁も混ざっているが、戦場ではそんなことを気にしている余裕はない。《敵が見えたで！戦艦棲姫２！赤い駆逐艦も２！》「そんだけ？」瑞鳳が聞いた瞬間、彼女の操っていた艦載機が撃ち落とされた。《あとツ級も》「先に言えや！」 3

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艦隊が単縦陣をとる。敵に空母はいない。防空棲姫もいない。ならば制空権はこちらのもの。戦艦棲姫２隻程度に怯んでは、ブイン第一艦隊の"猛虎"の異名が泣く。「やったるでえ……瑞雲！弾着観測ゥ！」《あいよ！》上空の瑞雲に連絡し、伊勢は牽制弾を放った。 4

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戦艦棲姫の周りに水柱が上がる。戦艦棲姫も対抗し、砲撃を行う。伊勢の周囲に同じような水柱。だが伊勢は怯まない。上空の瑞雲が弾着データを転送してくれている。データを元に砲塔が動き、確実に命中する方向と角度に合わせられる。「よぉーし……！」 5

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風と波、敵の動きと勘を元に微調整。これは伊勢の仕事だ。「ごぉーっつい……」ここぞ、というタイミングで、伊勢は引き金を引いた。「タイガーバズーカじゃあっ！」４基８門の主砲から放たれた徹甲弾は、見事戦艦棲姫に命中し、炸裂した。「っしゃあ！」 6

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一方、ガッツポーズする伊勢を見て、隣の部隊の日向は頷いた。「ほう。伊勢の奴にゃあ負けてられんな」副砲を戦艦棲姫に撃ちつつ、彼女は間合いを見定める。伊勢とは違い、日向は既にミドルレンジに突入していた。一瞬でも気を抜いたほうが、主砲の餌食になる。 7

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「黒潮！」《あいよ！》「魚雷をくれ！」《アレ、やるん？》「ああ！」《よっしゃ、まかしとき！》斜め後方から、黒潮が日向に向けて魚雷を放った。日向は戦艦棲姫の副砲を避けながら、魚雷を待つ。隙を縫って主砲を放つ。外れた。全砲門は再装填中、隙を見逃さず戦艦棲姫が攻める！ 8

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その時、二者の間に黒い物体が飛び上がった！黒潮の放った魚雷である！戦艦棲姫は突如垂直射出された危険物体からとっさに距離を取る！逆に日向は魚雷に向け疾走！「喰らえ！これが……」魚雷は落下し、日向の足元へ。「私の新必殺技・ネオタイガーショットだーっ！」 9

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日向は魚雷を蹴った。強靭な足腰から放たれたシュートは、装甲を捻じ曲げんばかりのパワーを持って、魚雷を飛ばす！戦艦棲姫へ！KABOOOOOM!戦艦棲姫が爆炎に包まれる！「うおおおおっ！」日向が、天に向かって吠えた。 10

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KABOOOOOM!「うおおおおっ！？」日向に砲撃が命中！《アホか！魚雷一発で戦艦棲姫を倒せるわけないやろ！》《ちょっと日向、しっかりしなさ、グワーッ！》《伊勢、お前もや！ボケツッコミに気を回すより、敵に気を、グワーッ！？》《敵の潜水艦を発見！》《なんでや！》 11

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混戦模様に陥るブイン第一艦隊。戦艦棲姫２隻も中破したが、ここから轟沈に追い込むまでには時間がかかるだろう。早く長門の応援に行きたかったが、防空棲姫は彼女に任せるしかないようだった。《頼んだでぇ、ながっつぁん……！》 12

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ガシャン。金属のぶつかり合う音と共に、防空棲姫の高角砲が長門を睨んだ。長門は拳を構えたまま動かない。いかに総旗艦といえど、地上で戦艦砲を放てば反動で自分がダメージを受ける。一方防空棲姫は、自分自身でもあるイージス艦に術式を施しているため、平気で砲を撃てる。 14

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敵に手はない。防空棲姫が砲を放った。心臓を狙った砲弾を、長門はサイドステップで避けた。「チィ……ッ！？」砲を向けようとした防空棲姫は目を剥いた。長門は動きを止めず、稲妻のようなフットワークで防空棲姫に近づいてくる。狙いが定まらない！ 15

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「くっ！」狙いがつかないまま、防空棲姫は発砲！足元を狙った砲弾を長門は避け、すぐに防空棲姫との距離を詰める。今の一発で防空棲姫は確信した。間違いない。この艦娘は、発射された砲弾が見えている。レーダーで相手の筋肉の動きを分析して、動きを先読みしている防空棲姫とは違う。 16

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長門が防空棲姫の懐に飛び込んだ。砲撃ができないなら、彼女の武器は一つだけ。拳だ。艦の格闘戦など正気の沙汰とは思えないが、戦艦がぶつかってくるという概念だけを見れば、十分な脅威である。防空棲姫は顔をガードしようとして――次の瞬間、彼女の顔は空を向いていた。 17

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「え？」続いて、横面を強かに殴られる。「ぐあっ！？」防空棲姫の体が吹き飛び、甲板を転がる。慌てて起き上がると、顎の右側と左の頬が傷んだ。右顎。いつ殴られた？レーダーは長門の動きを注視していたはず。一瞬前の記録を遡ると、確かに長門は防空棲姫を殴っていた。 18

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顔の前で拳を構えた姿勢から、長門の左腕だけが伸びる。ガードしようとした防空棲姫の腕を潜り抜け、軽く握った拳が顎に当たる。防空棲姫がのけぞった時、既に長門の左手は元の位置に戻っていた。この間、僅か0.1秒。拳が動いたと認識する前に殴られたのだ。 19

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そして二撃目、右のパンチで防空棲姫が吹き飛ばされた。「何だ、これは……」レーダーのログを参照した防空棲姫は困惑する。彼女は長門の戦い方を知らない。船であるが故に、艦娘ボクシング戦艦級チャンピオン・長門の戦闘スタイルを見極められない！ 20

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長門が防空棲姫に再び迫る！間合いに入れば、また反応できないコンビネーションブローを叩き込まれる。たまらず防空棲姫は距離を取り、艦橋を昇る。長門も飛び上がり、防空棲姫を追う。先に艦橋のてっぺんにたどり着いた防空棲姫は砲口を下に向け、長門を撃つ！ 21

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次の窓枠に飛んでいた長門は、壁を走って軌道を変えこれを回避！「デタラメな……！」艦娘だの戦艦だのという問題ではない。あれは本当に人間なのか。長門の錨が艦橋にかかる。時間はない。防空棲姫は後方、前部甲板へと飛びながら砲を構えた。 22

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登ってきた長門に一斉射！長門はこれを避け、あるいは腕で防ぐ。やはり戦艦、一、ニ発では傷にもなりはしない。甲板に着地した防空棲姫を追って、長門も跳ぶ！高角砲の装填は――間に合わない。ズシン、と甲板をひしゃげさせながら、防空棲姫の目の前に長門は降り立った。 23