艦これ妄想『青葉棲姫と提督』

艦これの妄想、青葉の深海化した姿『青葉棲姫』と、かつてその青葉が所属した鎮守府の提督の話です。
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シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

『生体反応、過去ログに一致』 その通信は、俺に何度かの激痛を思い出させた。 頭が痛くなる、胸が苦しい。 もしそれが、あの子、だったら…。 「……‘‘誰‘‘なんだ。」 俺は戦う意味を失ってしまいそうだった。

2015-10-17 02:58:55
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze あの子はまだ不慣れだった俺を、隣でサポートしてくれた。 そもそも俺にも、普通の奴らにも不慣れで、人間不信のくせに。 やらなきゃっていう意志だけで、自分自身もそんなことやった事無いのに。 ずっと、俺を手伝ってくれた。

2015-10-17 02:59:53
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 思考を終わらせるように、通信が入る。 『反応……青葉さんです……』 その通信が、嘘であると願いつつ。 ゆっくりと近づいてくるその巨体、人型の本体にカメラをズームする。 わらにもすがるような気持ちだった。

2015-10-17 03:01:23
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 俺は知っている、この海域で、青葉という艦で沈んだのはたった一人だと。 そもそもこの海域で青葉という艦が少ないのも、知っている。 そしてそのただ一人が、皆を庇ったあの子だ、ということも。

2015-10-17 03:02:24
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 遺骸も、艤装も、痕跡は一切なく、反応もない。 青葉はあの日、走って逃げる俺たちの後ろで、死んだのだ。

2015-10-17 03:03:09
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze それならば割り切れた、乗り越えたつもりだった。 だが、その人型本体の髪を見て、俺は膝を折った。 そこには、俺が彼女の為にあげたネーム入りの髪留めがついていたのだ。 アレは青葉だ、俺らを守って沈んだ青葉だ。

2015-10-17 03:04:55
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 「青葉……」 刀を持った手を広げ、武器を捨てる。 唯々歩み寄りたかった、少しでもそこに行きたかった。 例え敵でも、沈んで怨念と化しても、青葉であるなら。

2015-10-17 03:07:22
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 何より、その髪に未だ付けている髪留めには、紛れもない愛の意味があった。 俺は青葉に、青葉の為だけにそれを作ったのだ。 掃き溜めに生まれ、掃き溜めで生き、保護されてからもつらい目に沢山遭いながら。

2015-10-17 03:09:29
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 人が嫌いなのに、信頼なんか出来る筈もなかったのに。 そもそも、俺のサポートなどしたい筈もなかっただろうに。 なのに、隣で秘書艦を続けてくれた。 その彼女への、俺なりの告白だった。 それが……どうしてこうなったのか。

2015-10-17 03:10:43
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 『提督ッ!!』 通信から、大淀の叫ぶ声が聞こえる。 が、そんなものはどうでもいい。 会えた、青葉に。 それが俺の心を高揚させていた。 悲しく思う気持ちもある、でも今は再開を祝おう。 「大淀……戦闘終了だ、青葉を、青葉を休ませなきゃ…」

2015-10-17 03:12:56
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 『提督……!?』 「み、みんな喜べよ……青葉だ、青葉が帰って来た……。 生きてたんだよ青葉は、青葉は生きてたんだって…!! 早く帰って祝宴の準備しなくちゃな…!青葉、青葉……青葉ぁ……」 ぼんやりとする頭でも、俺は踵を返すべきだと思った。

2015-10-17 03:14:49
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 青葉は帰って来た。 敵でも皆知ってる青葉だ。 この際大本営なんてどうだっていい、青葉が生きていればそれでいいんだ。 隠居だ、隠居をしよう。 どこか遠い無人島の地下に、施設でも作って、二人で。 いや、皆も一緒に、だ。 「青葉……おかえり、青葉」

2015-10-17 03:16:26
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze その時だった。 「……っ!?」 青葉に、砲撃が撃たれた。 どこから? 咄嗟に空を見上げるが、そこには青空だけだ。 なら……そう思わずとも、音で分かった。 艦娘の、ホバー音だ。 だがその音の方向は、紛れもなく、後方の本陣からだった。

2015-10-17 03:18:59
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 村雨に夕立、瑞鶴、最上に摩耶、榛名が、物々しい格好でそこに立っていたのだ。 「何やってる……青葉は疲れてるんだから、演習の相手なんて他に頼めよ……ッ!!」 そうは言うも、皆の表情はまるで晴れない。 それどころか、ひどく深刻そうな顔をする。

2015-10-17 03:21:18
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 夕立が、口を開いた。 「……提督、退いて。」 ありえない。 俺の頭が理性を否定する。 違う違うんだ。 「お前ら、何言ってるんだ……コイツは___」 「ごめんね、提督。」 村雨がそう言って抜刀し、跳ぶ。 その先は、後方に居る青葉だった。

2015-10-17 03:25:31
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 青葉が攻撃される。 そう思ったとき、俺の中で何かが吹っ切れた。 ここから刀を拾いに行くには時間が掛かる。 なら作り出してしまえばいい。 ヘッドユニットが精神汚染の警告を示す。 まさか自分の長年使ってきた全身艤装にすら否定されるとは。

2015-10-17 03:27:56
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 「良いさ……じゃあ…!!」 いつの間にか手に現れていた長刀で、村雨の剣戟を弾いて、薙ぎ払う。 着地した所に掌内蔵のパルスライフルを放ち、その距離を放させた。 「提督!!目を覚まして!!」 「うるさい……っさいんだよぉぉオ!」

2015-10-17 03:30:12
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 「コイツハ青葉だ!!俺の、俺の鎮守府の!!お前らの知ってる青葉だ!! やめろ!!喧嘩すんな!! 違う、深海棲艦じゃない!! 青葉は深海棲艦じゃないだろ!? なぁ……なぁって!!!!」

2015-10-17 03:31:28
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 俺がそう叫ぶも空しく、摩耶が一気に踏み込んでアッパーを繰り出す。 相変わらず速い、流石は武闘派と言った所だ。 「……目ェ覚ますのはおめえだ!!」 倒れる俺を見下すように、彼女は続けた。 「…青葉は、もう居ないッ!!」

2015-10-17 03:33:58
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze そう言って彼女は俺の言ったすべてを否定した。 すぐ近くでは爆音が鳴り響いていた、青葉が戦っている。 でもその戦っているのは味方だ。 何でだろうな、そんな思いが頭の中をグルグルグルグルとめぐる。 でも思い返す。 俺はさっき言った。

2015-10-17 03:35:55
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 「この際大本営なんてどうだっていい、青葉が生きていればそれでいいんだ……」 意識せずとも、自然と口が動いて、そう言っていた。 俺はやっと理解する。 何が敵で何が味方で、誰に刃を向けるべきなのか。

2015-10-17 03:37:26
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 「…あぁぁぁああああ辛いなぁあああ………。」 「…提督?」 海中から現れた黒い靄が、俺を包む。 青葉は一人で寂しかった筈だ、それは俺も同じである。 俺にはできない、例えそこに居る青葉が今までの青葉でなくとも、否定が出来ない。

2015-10-17 03:39:21
シャオ3@創作呟きマン @ValiantSnowhaze

@ValiantSnowhaze 誰かが呟いた 「そんな……澱み纏い……。」 それは、紛れもない深海棲艦化の通称だった。 ここまで来て現実を見れない俺じゃない。 「辛いけど、青葉が死ぬよりずっとマシだよな?」 そう言って、俺はかつての見方と対峙した。

2015-10-17 03:41:02