#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#3~#4

ニンジャスレイヤーをリスペクトした艦これファンジンSSです。 デモ隊を襲うテロ事件と、消えた僚艦。 before:http://togetter.com/li/871688 続きを読む
0
春魔解丼 @vespiking

●●●●●●●●●●●●●●●●● #KZNPLN

2015-10-18 16:08:37
春魔解丼 @vespiking

(これまでのあらすじ:ウシミツ・アワーに謎の電波ジャック放送を観測した弥生は『過激派』洗脳電波である可能性を危惧。くだんの放送を観た可能性のある翔鶴を追い、報道特派員に偽装しインタビューを行っているさなか、デモ隊のいた近郊の大通りで爆発が発生した!) #KZNPLN

2015-10-18 16:13:26
春魔解丼 @vespiking

ナムアミダブツ……。先ほどまで無軌道デモ隊による平和的ヘイトスピーチ行為で賑わっていた大通りはいまや炎と黒煙に包まれていた。被害範囲はそう広くはない。野次馬の喧騒が焦げ目を境にくっきりと途切れているさまは、現実離れした光景をより一層際立たせていた。 #KZNPLN

2015-10-18 16:21:29
春魔解丼 @vespiking

「アイエエエ……」「爆発ですか?」「デモ隊が……」「軍の鎮圧砲撃?」「言論統制だ!」「自爆テロかもしれない」「カメラの電池が切れた!」「たぶん政府が悪い!」弥生の背筋をぞうっと寒気が走る。この焦げ目より先は、かれらにとって異世界なのだ。弥生は変装を解き、叫んだ。 #KZNPLN

2015-10-18 16:29:50
春魔解丼 @vespiking

「ドーモ!私は軍人です!これより救援隊などが通ります!一般市民は退避してください!」弥生の声を聞き、あたかも豆鉄砲に驚いたハトめいて、艦娘や妖精がばらばらに逃げていった。ほどなくして、爆発を聞きつけた大本営の対テロ班と救護班が到着。緊急テントが設営された。 #KZNPLN

2015-10-18 16:32:36
春魔解丼 @vespiking

艦娘は基本的に水上で戦闘を行う。海戦と陸戦の決定的な違いは死体処理だ。艦娘が放った砲弾は黒煙と水柱をあげ、敵艦を隠す。それが晴れたとき、そこにいるのは生き延びた敵だけだ。死んだ敵艦はいずれ海中へ没する。だが陸戦は違う。爆炎の下には血と肉片が残り続ける。 #KZNPLN

2015-10-18 16:38:59
春魔解丼 @vespiking

そこかしこに、深海棲艦だったものと思わしき腕や脚が転がっている。弥生はそれをトングでパンのように拾い、仮設テントに運ぶ。右腕。左足。右腕。右腕が2本ある深海棲艦はいただろうか。この惨状を前にして、それでも自ら拾う2本目の右腕は重い。弥生はテントを一望した。 #KZNPLN

2015-10-18 16:44:53
春魔解丼 @vespiking

重傷の深海棲艦や艦娘が10隻から20隻ほど、ビニルシートの上に並ぶ。辛うじて、爆発でヴァイタルパートを奪われなかった艦。まるでツキジだ。弥生は彼女らに結ばれたタグの色を極力見ないようにした。胃の底から、酸っぱいものが逆流してきた。弥生は必死で飲み込む。 #KZNPLN

2015-10-18 16:53:56
春魔解丼 @vespiking

黒い瓦礫をトングで拾った。それが瓦礫ではない事に気付いたとき、ふと、先ほどまで会話していた深海棲艦の顔が頭を過った。トングががたがたと震えた。ひと呼吸おき、爆発の瞬間、彼女は目の前にいた事を思い出し、安堵した。それが誰であろうと、同じ罪なき命だというのに。 #KZNPLN

2015-10-18 16:57:58
春魔解丼 @vespiking

ひっきりなしにドップラー不協和音を奏でていた救急車のサイレンも止み、夕刻まで続いた撤去作業が終わった。「ありがとうございます」「イエ……私も……たまたま、居合わせた、だけです」弥生はぺこりとオジギし、対テロ部隊の敬礼に応えた。 #KZNPLN

2015-10-18 17:01:20
春魔解丼 @vespiking

翔鶴の姿は最後まで見当たらなかった。この騒ぎだ。途中で引き返してもなんら不思議ではない。爆発の原因は、状況からみて何らかのテロ攻撃の可能性が高いという。それがデモ隊によるものなのか、反対派のものかはまだ、わからない。わかったところで、弥生にはどうにもならない。 #KZNPLN

2015-10-18 17:10:21
春魔解丼 @vespiking

弥生は最寄の駐屯地で制服を着替え、ふらふらとシンカンセンに乗り込み、帰路についた。車両内はいつもと同じだった。この車両に乗る艦娘らの多くは、あの現場にいない。爆発とは無関係に、日常を営んでいる。弥生はそれがただただ恐ろしく、義憤とも無念ともつかぬ感情が胸に渦巻く。 #KZNPLN

2015-10-18 17:20:55
春魔解丼 @vespiking

弥生が帰投すると、鎮守府はちょっとした騒ぎになっていた。翔鶴と夕張が、ネオヨコスカで消息を絶っていた。弥生は心臓が握りつぶされたような激痛を胸に覚え、その場で海に嘔吐した。 #KZNPLN

2015-10-18 17:24:19
春魔解丼 @vespiking

ほとんど空だった胃から無理に搾り出した吐瀉物の酸味が抜け切らぬまま、弥生は工廠になだれ込んだ。道中、何度か吐き気を催し便器に向かったが、咽から胸に痛みが走るばかりで、口からはなにも出なかった。鼻水と涙を拭き、呼吸を整え、管理室のドアを叩く。 #KZNPLN

2015-10-22 00:03:10
春魔解丼 @vespiking

重たい空気と、低くよどんだ管理室長の声が弥生を出迎える。「……ごめん、なさい」「何故謝る。おまえが、わたしに」管理室長、秋雲はぎろりと鋭い瞳で弥生を切り裂いた。「おまえが贖罪しても、わたしが安心しても、何も意味はねえよ。どうでもいいんだ、そんなことは」 #KZNPLN

2015-10-22 00:08:45
春魔解丼 @vespiking

弥生はもう一度謝罪しかけて、その言葉をぐいと飲み込んだ。先の空嘔吐よりも強烈な痛みが、咽と胸を駆け抜けた。「今一番安心させにゃならんのは、北上=サンだ。あの人は何も悪くねえ……話を先に進めよう。わたしらの為の、無駄な気休めはナシだ」弥生はこくりと頷いた。 #KZNPLN

2015-10-22 00:13:41
春魔解丼 @vespiking

「工廠長は……まあ放っておいていいか。死んでたら死んでたで、サンマ漁の網にでもかかって出てくるだろ」工廠長、夕張は不死身だ。「翔鶴=サンはどうだ。爆発事件があったそうだが、巻き込まれたりしてねえだろうな」「大丈夫……正規空母の死体は、なかった」「そうか、何よりだ」 #KZNPLN

2015-10-22 00:16:49
春魔解丼 @vespiking

「全く騒がせてくれる……翔鶴=サンを探すぞ。いっそぶっ飛ばしてでもやりてえ気分だが、それは北上=サンの意に反する。絶対に五体満足で回収する」秋雲は複雑な気分を味わっていた。翔鶴はかの大戦における、秋雲の主要な護衛対象だ。その記憶はおぼろげながらも秋雲の根底にある。 #KZNPLN

2015-10-22 00:21:45
春魔解丼 @vespiking

「やっぱり、何かあの爆発、からんでるのかな……」弥生がおずおずと呟いた。「何か心当たりが?」「深海棲艦のデモだった。プラカードとか見るに、たぶん、過激派がらみの……」「『停戦派』か。能天気な連中だよ、全く」「それに、例の放送……」「お前が調べてる奴か……フム」 #KZNPLN

2015-10-22 00:27:35
春魔解丼 @vespiking

秋雲はモニタに半分船体を向け、片手でパチパチとタイピングを開始した。「『停戦派』。深海棲艦『過激派』との和解、停戦……いや寧ろ降伏か?最近、日本国籍を持つ深海棲艦二世や、新造の非軍用艦娘なんかに広まってる思想だな。世界大戦の終結、その先陣を日本が切れという連中だ」 #KZNPLN

2015-10-22 00:33:12
春魔解丼 @vespiking

「理想論で寄り集まった暇人の余興、と切り捨てるのは簡単だが……連中は何の為に動いていると思う?」「『過激派』のため?」「違うね」秋雲はクルリと椅子を回した。「連中は自分の、自国の平和のために動いてる。連中は『過激派』の事なんて考えちゃいない。当然帝国軍の事もだ」 #KZNPLN

2015-10-22 00:36:37
春魔解丼 @vespiking

「『停戦派』は、『過激派』にとっても、不都合……?」「ブルズアイ」秋雲は指でピストルの形をつくり、発砲リコイルめいて上に向けた。「『過激派』にとって不都合な連中が大勢死ぬ。同時に、帝国の庇護下にある深海棲艦たちは、同胞を殺される。帝国の防ぐべきテロが防がれず、だ」 #KZNPLN

2015-10-22 00:42:04
春魔解丼 @vespiking

「……決起の、煽動の、ため?」「あくまで状況証拠だ。だが、そのくだんの怪電波……深海棲艦に、決起を促すような内容だったんだろ?色々と符合する部分も多い。引き続き、そっち方面で調査を続けて欲しい」「うん、わかった」弥生は強く頷いた。胸の痛みが少し、和らいだ。 #KZNPLN

2015-10-22 00:46:57