#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#3～#4

春魔解丼 @vespiking

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――時間は少し遡り、ネオヨコスカ北部・オールドナガタチョ区画。 #KZNPLN

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「だ、大丈夫ですか！？お怪我は……」「ええ……私は大丈夫です。でも、こんなことに……」翔鶴は黒髪の深海棲艦を助け起こした。ストリートは騒然としている。爆発があったのだ。「救助に行かないと……ウウッ！」翔鶴はよろめいた。脚には血が一筋、垂れている。 #KZNPLN

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ストリートの爆発が吹き飛ばした瓦礫は、榴弾片めいて近辺の店舗や民家に突き刺さった。幸いにも瓦礫片による死者や重傷者はいなかったが、向かいの飲食店にいた翔鶴らは軽傷を負った。「翔鶴＝サン、今は離れましょう。その怪我では、かえってアブナイかもしれない」 #KZNPLN

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水母棲姫ブルーバブルは脚を怪我した翔鶴を抱え、店員の避難指示に従い、店の裏口から避難した（この飲食店は先払い式だ）。「夕張＝サンは大丈夫かしら……」「心配ですね……ああ、こんな日に重なってしまうなんて……私のせいだわ」「いえ、元はといえば、私の謹慎が……」 #KZNPLN

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お互い奥ゆかしく謝罪し合いながら、ブルーバブルはひとまず、近郊の自宅へと翔鶴を運んだ。「おそろしいものです……きっと『停戦派』の自爆テロでしょう。自分達が平和になるために、若い深海棲艦をだまして、凶行に及ばせたのだわ……なんてひどい事を」「そんな……」 #KZNPLN

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ブルーバブルは翔鶴の傷を手当てしながら、呟いた。「『停戦派』も、一枚岩ではないんです……私たちのように、純粋に、平和を願う艦ばかりではない……私たちの主張を借りて、暴力に訴えて、自分たちだけ利益を享受しようとする……私たちの力不足が原因なんです」 #KZNPLN

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「そんな事はありません！ブルーバブル＝サン、貴女はこの国や、艦娘と深海棲艦の未来を本気で案じてくださっています……それは今日、確かにわかりました。帝国軍人として、とても貴重なお話ができました。貴女は悪くない」「ありがとうございます……今、コブチャを淹れてきますね」 #KZNPLN

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――10分後。コブチャを飲み干した翔鶴が完全な睡眠状態に入った事を確認し、ブルーバブルは時計をチェックした。「あら。我ながらベストタイミングだわ」翔鶴を寝室のベッドに寝かせ、ドアを閉め、居間に戻る。ちょうど、インターホンが鳴った。「ドーモ、夕張です」 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#3終わり。#4に続く。 #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 【コレクティヴ・サブコンシャスネス】#4 #KZNPLN

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「ドーモ、夕張です」インターホンから聞こえる、抑揚のないアイサツ。水母棲姫ブルーバブルは翔鶴のいる寝室を指差し確認。ドアは閉めた。コブチャに混ぜた睡眠薬は一般的な大型空母用の3倍の濃度に調整してある。壁は防音仕様。ドア周辺に痕跡なし。「は、はーい。今行きます」 #KZNPLN

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少し慌てた様子の声色をつくり、ブルーバブルは玄関へと向かった。かの天才工廠長、戦艦霧島の後釜。(((ワイオミング＝サンのジツは実際強力だが、さてこの女、如何程のものかしら)))精神を偽装に集中させ、もうひとりの自分を自身に憑依させる。ブルーバブルというペルソナを。 #KZNPLN

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「ドーモ、ブルーバブルです。本日はどうも、ご足労を……」「アッハイ」夕張は腑抜けた声で返答した。少し思案し、「外、大変な事になっていたようですね……お怪我はありませんか？」「外……？ああ、ハイ。何か騒がしく……」ブルーバブルの高角が上がる。この女、効いている。 #KZNPLN

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その後しばらく会話をしたが、夕張の挙動は要領を得ない。『効果』が強く出ているのだ。常に上の空である。ブルーバブルは思案する。(((効きすぎるというのも問題だわ……仕方がない。少々リスクは高いけれど、多少目を醒ましてもらいましょう)))「コブチャをお持ちしますわ」 #KZNPLN

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惚けた表情で居間にしゃがみこむ夕張を尻目に、ブルーバブルは台所に立った。そして意識を切り替えた。本来の彼女に。――然り。ブルーバブルなどという深海棲艦は本来、存在しない。熱心で意欲的、平和主義の『停戦派』活動家。そういう人格を、彼女はつくり出したのだ。 #KZNPLN

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単なる演技ではない。彼女は一定の条件下において完全に、ブルーバブルに『なる』のだ。それはいわば自己の洗脳に等しい。ゆえに、条件も相応に重くなる。先の問答がそれだ。問答の成立せぬ状態で、彼女はブルーバブルを維持できない。コブチャに軽巡用の睡眠薬を混ぜ、今度は薄める。 #KZNPLN

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これは奇しくも、今彼女が難儀している夕張の酩酊状態とも深く関与している。夕張もまた、一定の条件下で思考力を奪われる。そういうジツを受けたのだ。ただし、条件はより緩慢。ゆえに状態は移ろい易く、完全な制御ができない。不完全な洗脳状態。それを完全にする。己の手で。 #KZNPLN

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すうっ、と、台所のフスマを開く。台所を出たとき、彼女は半分ブルーバブルになる。異なる2つの人格がせめぎ合い、自律神経が混乱する。会得したばかりの頃は大いに苦しんだが、今やこの浮遊感が愉快ですらある。グラグラと揺れる視界で器用にコブチャを支え、居間に入る。「……？」 #KZNPLN

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夕張が、いない。『条件』が揺らぎ、急速にブルーバブルが崩れてゆく。本来の彼女が全身を支配する。「……どこへ」ガチャリ。ズルル。奇妙な音。この音は……。「しまった！寝室か！」コブチャをテーブルに置き、走る！ナムサン！廊下には、ドアを開く夕張！ #KZNPLN

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「アレ……何か、何か良い匂いが……嗅ぎ覚えのある香りが……」夕張はブツブツと呟きながら、半ば本能に引き摺られるように寝室へ！「くそッ！人の家を勝手に……！」もはや形振り構わず、夕張の手を掴む！「マッテ！」スポン！リストバンドが抜ける！「アーッ！」夕張は這い進む！ #KZNPLN

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ナムサン！夕張がそこで見たものとは……！？「翔鶴＝サン？」然り！翔鶴である！グッタリと青い顔を枕に埋め、苦しそうに寝息を立てる翔鶴の全身は汗でじっとりと湿り、えもいえぬアトモスフィアをまとっていた。「翔鶴＝サン！いけない！」ギュン！夕張の単相高角砲が仰角を上げる！ #KZNPLN

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「ウオーッ！」本能のまま飛びかかる夕張！アブナイ！青少年のなんかが！そして彼女の計画もだ！「キエーッ！」彼女は……恐るべき『過激派』水母棲姫、マンオウォーは腰から触手を伸ばす！その先端は、ナムサン！カギヅメ状に湾曲した危険な毒トゲである！「ちょっとやめないか！」 #KZNPLN

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マンオウォーの危険な毒トゲは夕張の頭部を狙うが、距離が足りぬ！「オノレーッ！仕方がない！」彼女は素早く触手の方向を変え、夕張の脚に巻きつく！そして刺す！「グワーッ！神経毒グワーッ！」そして引き寄せる！拘束する！「捕らえた！」ナムアミダブツ！ #KZNPLN

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「ウオゴゴゴゴ、わ、私は……アイエエエ！？貴女は一体！」神経毒ショックにより夕張の洗脳が解ける！だが彼女の船体は2本の触手でガッシリと敵の船体に固定され、顔面は豊満なバストに押し付けられる！「モガーッ！ハニートラップか！」このままでは窒息の危険が実際大きい！ #KZNPLN