バニーと楓ちゃんの初恋

兎虎※死ネタ
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壱子 @borboros

お父さんとバーナビーが付き合ってるのは知っていた。同時に私は失恋したのだ。お父さんは何度かバーナビーとの関係を伝えようとしていた。気付いていたけれど、私はその度わざと話を反らした。事実を受け入れられなかったのだ。初恋だった。私を助けてくれたヒーロー。

2012-07-17 20:11:58
壱子 @borboros

あの時意地悪をしてごめんなさい。お父さんの遺影に手を合わせて、いつも後悔をする。こんなに早くに逝ってしまうのならバーナビーとののろけも聞いてあげれば良かった。

2012-07-17 20:14:29
壱子 @borboros

後悔ばかりの日々が過ぎて、バーナビーはヒーローを引退した。今はオリエンタルタウンで家を買い、時々村正おじちゃんのお手伝いをしている。そしてお父さんの遺影に線香を挙げるのだ。

2012-07-17 20:17:50
壱子 @borboros

そして春、私は大学生になる。外国の大学に進むことになった。バーナビーさんと会うのも後わずかだ。遺影に手を合わせる彼を見るのは後悔と嫉妬と胸が締め付けられる思いをしていた。それも限界だったから良かったのだ。このままこの恋から逃げてしまおう。

2012-07-17 20:22:24
壱子 @borboros

今日も村正おじちゃんのお手伝いを終えてバーナビーはやって来た。「今晩は楓ちゃん。久しぶり」いつも襖の隙間から覗くようにしか見ていなかったから、バーナビーと対面するのは久しぶりだった。故意にそうしていたのだが。彼は痩せた。髭で隠れているけれど、頬は痩けて腕も骨が浮き上がって見える。

2012-07-17 20:27:41
壱子 @borboros

「楓ちゃん、虎徹さんに似てきたね」にっこりと笑われて、飼い慣らしたはずの嫉妬が暴れだした。お父さんが生きていた時に何度も味わった気持ちだ。「私はお父さんじゃない」「えっ?」呟いた言葉は伝わらないのだ。この恋心と同じ。「私はお父さんじゃない!!」

2012-07-17 20:31:08
壱子 @borboros

情けないことに涙が溢れた。このまま好きですと言えればいいのに。それはきっと受け入れてもらえないだろうから…だから嗚咽にしかならない。「………ごめんね」少し落ち着きを取り戻した頃にバーナビーが口を開いた。「楓ちゃんの気持ちには気付いていたんだ」

2012-07-17 20:34:41
壱子 @borboros

「酷い男だと思うけど、楓ちゃんが言葉にしない事も知っていた。我儘だろうけど、そのまま言葉にしないでくれないかな。僕は虎徹さんを忘れられない。愛していたから」ぐすぐすと鼻をすする。最悪だ。ここまで来て好きだとも言わせてもらえないのだ。

2012-07-17 20:39:53
壱子 @borboros

「君を悲しませたくないんだ。僕と同じ思いをさせたくないから」涙を拭いて顔を上げる。バーナビーも泣きそうな顔をしていた。「虎徹さんに告白した日は今でも覚えているよ。なかなか頷いてけれなくて、8回目の告白だった。はっきり言われたよ。『俺は友恵を忘れられないから、それ覚悟か』って」

2012-07-17 20:44:53
壱子 @borboros

「最初はね、そんな簡単な事って思ったよ。僕は一番じゃなくて良かったんだ。ただ好きだと受け入れて貰えて、隣に居ることを許されただけで、とても幸せだったんだ。"友恵さん"の存在が彼の中でどれだけ大きいのか知らなかったから」

2012-07-17 20:50:34
壱子 @borboros

「簡単な恋じゃなかったよ。毎日が片想いだった。辛かったよ。逃げ出したかった。でも逃げてしまえるような恋でもなかった。最初にした覚悟も嘘にしたくなかったしね…こんな恋は僕以外にはして欲しくないんだ」バーナビーそれって物凄い愛の告白だよ。

2012-07-17 21:00:23
壱子 @borboros

失恋をした。それも大失恋だ。私は彼のような恋をする覚悟はまだない。大失恋から程なくして私は無事大学生になった。時々帰るあの家には、変わらず線香を挙げるバーナビーの姿が。彼の片想いは継続中だ。

2012-07-17 21:05:27
壱子 @borboros

虎徹さんが友恵さんを想うように、いや、それ以上、僕も虎徹さんを想うので、それでも好きでいれますか?って事。すげーな。

2012-07-17 21:15:00