ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ #1

ニンジャ二次創作小説 ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ #1 のまとめ
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じょう @jou110

「ようこそ、温泉宿カクレガへ、私はグレーターオカミのヤイユミドスエ」カクレガ入口のノーレンを潜ると、華美ではないが上品なキモノを着た初老の女性が出迎えた。「長旅でお疲れでしょう、生憎の空模様で露天風呂は閉鎖しておりますが、室内温泉は何時でも利用出来ますよ」 23

2015-11-01 23:00:32
じょう @jou110

幾人ものナカイを引き連れた彼女はこの温泉宿カクレガのあるじ、グレーター・オカミのヤイユミ・ミノだ。このような伝統ある温泉宿は男性の支配人ではなく、モテナシの心を持つ女性のオカミが勤めるものとされる。彼女の顔に刻まれた皺は深く、歴史ある温泉宿の主としての貫禄を醸し出していた。 24

2015-11-01 23:02:56
じょう @jou110

「御部屋までは当宿のレッサー・オカミのシキが御案内致しますドスエ」ミノの後ろから妙齢の女性が進み出る。彼女はレッサー・オカミのヤイユミ・シキ。オカミの長女は通例、次代のオカミとなるべくグレーター・オカミの後ろに付き修行を行う。その修行期間を、レッサー・オカミと呼ぶのだ。 25

2015-11-01 23:06:10
じょう @jou110

「ドーゾ、こちらへ」シキの先導でガンドーは温泉宿の奥へと案内されていく。カクレガは築100年以上の歴史を持つ、電子戦争以前から存在する由緒正しい温泉宿だ。(様子は全然別だが……なんとなくキョート城を思い出すな)床にが歩く度音が鳴るのは、古いばかりでは無いとガンドーは感じた。 26

2015-11-01 23:08:09
じょう @jou110

一説によれば、カクレガの母体となった温泉宿は江戸時代にまで遡るという。実際この宿の建築様式も、何らかの歴史的な謂れのあるものかもしれないが、ガンドーには詳しい事は分からなかった。「こちらがタカギ様の御宿泊部屋、蜂の間ドスエ」シキが客間のフスマを奥ゆかしく開ける。 27

2015-11-01 23:10:45
じょう @jou110

「こいつは……!」ガンドーは部屋に入って直ぐに、トコノマに置かれたあるものに気付いた。「それは当宿カクレガの守り神の1つ、スリケンドスエ」シキが答えた。「スリケンって、アンタ……」雷鳴が響き雨音が強くなる。「お客様、ご安心下さい、刃は潰してありますわ」シキは微笑んでいる。 28

2015-11-01 23:12:38
じょう @jou110

「そ、そうかい」ガンドーの様子を見たシキはおどけるように続けた。「ふふふ、よく皆様びっくりされますの。あくまでイミテーションです。当宿にニンジャが出たことなんてありませんわ」ガンドーは苦笑するしか無い。「そりゃ出てもらっても困るがよ……」見れば確かに本物のスリケンではない。 29

2015-11-01 23:14:26
じょう @jou110

(ナンシー=サン、知っててこの宿を選びやがったな……冗談キツイぜ)ガンドーの荷物を部屋に運び込むと、シキは膝を折り頭をタタミに付けた。タタミの縁にはキモノすらかかっておらず、一枚のタタミの中に綺麗に収まっている。オカミとしての修行を積まぬナカイにこの完璧な振る舞いは出来ぬ。 30

2015-11-01 23:16:23
じょう @jou110

「お夕食は7時に御部屋にお持ちいたします。温泉にはご自由にお入り下さい。ドーゾ、ゴユルリドスエ」シキはガンドーに背を向けず部屋から出ると、音もなくフスマを閉めた。1人部屋に残されたガンドーは、縁側から庭を見つめた。凄まじい雨音が聞こえてくる。時折走る稲光が部屋を照らした。 31

2015-11-01 23:18:39
じょう @jou110

トコノマに飾られたスリケンが稲光を受けて妖しく光る。「どうにも嫌な予感がするな……」ニンジャ第六感か、それとも探偵としての勘か、ガンドーは言い知れぬ予感に身を震わせるのだった。 32

2015-11-01 23:20:14
じょう @jou110

「ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ」 #1 終わり #2 に続く

2015-11-01 23:20:37