ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ #1

ニンジャ二次創作小説 ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ #1 のまとめ
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じょう @jou110

◆!注意!◆ これから当アカウントはニンジャスレイヤーの二次創作小説を垂れ流す状態となります 不都合が生じる場合は当アカウントをミュートにするなどして下さい なお今日のプログラムは私立探偵、タカギ・ガンドーをフィーチャーしたものとなります 読んで頂ける方はお楽しみ下さい

2015-10-31 23:55:46
じょう @jou110

ウシミツアワー、中国地方トットリーヴィルの片隅にある温泉宿「カクレガ」。宿の一室の金庫から取り出されたのは、非人道兵器、マキビシである。それを扱う手は実にぎこちない。取り出されたマキビシに、脇に置かれた小瓶の中の液体を慎重に塗ってゆく。 1

2015-10-31 23:59:02
じょう @jou110

「ハァーッ、ハァーッ」震える手先を抑えながら、作業は続く。部屋の中は薄暗く、マキビシを扱う者の顔は伺い知ることは出来ない。全てのマキビシに小瓶の中身が塗られると、その人物は慎重にマキビシを別の容器に移し替えた。泥のように重い時間の中、血走った目だけが闇の中に光る。 2

2015-11-01 00:02:05
じょう @jou110

瓶の蓋を閉めると、その人物はポツリと喋りだした。「準備は全て出来た。何食わぬ顔でのうのうと生きている奴らに……復讐を!」稲光が走る。これから嵐が来る。誰もこの宿から出ることは出来ない。復讐を遂げる、その時までは……!くぐもった笑い声は、やがて訪れた雨の音にかき消されていった。 3

2015-11-01 00:05:14
じょう @jou110

「ア・マーダー・ケース・バイ・レジェンド・オブ・クルエル・クラブ」 #1

2015-11-01 00:10:02
じょう @jou110

雨足が強くなり、遠くからは雷鳴が轟いている。嵐が近づいているのだ。重金属酸性雨の少ない中国地方において、数年ぶりの大嵐は土砂災害をもたらすだろう。既にオナタカミ系列の土木カルテルは復興作業分担の談合を始めている。彼らに災害の予防という概念はない。復興の方が経済的であるからだ。 4

2015-11-01 00:11:46
じょう @jou110

理由さえ用意できれば、メガコーポ達は災害復興とは名ばかりの非道な埋め立て行為を行うだろう。元いた住民達は全て投げ出され、新たな温泉リゾートが建設される。カネを産まぬ田舎者を駆逐し、都会からカネを流す。これが経済だ。利益を狙う無機質な捕食者はネオサイタマを離れても存在している。 5

2015-11-01 00:14:46
じょう @jou110

舗装が崩れ始めた頼りない道路を一台の車が走る。山賊の類いの襲撃に備えるため過剰に武装された鎧タクシーが風を受けてガタガタと揺れた。タイヤが石に乗り上げると車体が跳ね、その衝撃は車内にも伝わった。後部座席で浅い眠りについていた大柄な男は、小さく唸りながら目を覚ました。 6

2015-11-01 00:17:47
じょう @jou110

「ああ、すいませんね、起こしちゃいましたか」運転手が振り返らずに話しかける。「アー、いや、別にいいさ」後部座席の男は大きな手で顔をこすりながら答えた。目覚める前に見た景色よりも、心なしか自然が増えている。ネオサイタマを離れた証拠である。男はゴソゴソと懐を探り始めた。 7

2015-11-01 00:20:36
じょう @jou110

「チッ、こんだけしか無かったか……?」ポケットを探り取り出したのは紙に包まれた小さなガムが3粒。それが男の持つZBRガムの総数だ。「しばらく仕入れて無かったらこれだ、ついてねぇな」男がなけなしのZBRガムの包み紙を1つ開いて口に放り込むと、鈍ついていたニューロンが動き出した。 8

2015-11-01 00:23:27
じょう @jou110

「お客さん、随分体格が良いですねぇ。カラテでもやられてるんですか?」運転手が会話の間を埋めようと話しかけてくる。「あ?ああ、まあな」ZBRが全身に駆け巡る感覚に身を任せていた男は曖昧に答えた。「へぇ、やっぱり。もしかしてヨージンボだったり?」運転手が茶化すように続けた。 9

2015-11-01 00:25:51
じょう @jou110

「ヨージンボ……?いやいや、俺はしがない私立探偵さ」「へえ!探偵!私の子供がいつも見てますよ、サムライ探偵サイゴ」運転手の言葉に男は少しばかり目を伏せた。「俺はそんなカートゥーンの探偵みたいなものじゃ無いさ」男の名はタカギ・ガンドー。キョートに居を構える私立探偵である。 10

2015-11-01 00:28:07
じょう @jou110

本来はキョートにて活動を行うガンドー何故中国地方にいるのか。彼は直前までジャーナリスト、ナンシー・リーの依頼を受け秘密裏に行われていたキョート・ネオサイタマ間の非道人身売買を暴くべく捜査を行っていた。ガンドーは綿密な捜査の末、誘拐組織の証拠を掴んだ。 11

2015-11-01 00:31:16
じょう @jou110

キョートから攫われた人間を乗せた武装新幹線に乗り込んだガンドーとナンシーは、新幹線の支配者レイルバレットを倒し裏に潜むアマクダリの陰謀を打ち砕いた。ナンシーからの報酬としてガンドーの口座には数百万程のクレジットが振り込まれ、それとは別に温泉宿カクレガのチケットが手渡された。 12

2015-11-01 00:33:48
じょう @jou110

「思えばあなたにはいつもお世話になっているわね。キョートにスワローターンするよりも、少し羽を伸ばしてゆっくりすると良いわ」そう言って半ば無理やり温泉宿のチケットを握らされたガンドーは渋々ではあるが、捜査で無茶をした体を休めるためにありがたくこの話を受けたのだった。 13

2015-11-01 00:37:38
じょう @jou110

(しかしZBRが無くなっちまうな)ガンドーは既に味のしなくなったガムを噛みながらぼんやりと考えた。残るZBRは2つ。一泊二日の湯治の予定だが、近づいてくる嵐のためそれ以上の日数止められるだろう。(もう少し大事に使えば良かったか)ガンドーはマサシのコトワザを思い浮かべた。 14

2015-11-01 00:40:23
じょう @jou110

「ハイ、到着しましたよお客さん」鎧タクシーが温泉宿の前で止まった。「ああ、ありがとう」ガンドーは運転手にトークンを支払うと車を降り大きく伸びをした。宿の前には屋根付きのカーポート、モテナシの精神だ。「多分明日は迎えに行けません、何年かぶりのこの嵐です」「ああ、だろうな」 15

2015-11-01 00:46:03
じょう @jou110

「やれやれ、この季節の嵐、まるで血染め蟹の伝説ですよ」荷物をトランクから降ろしながら運転手がボソリと呟いた。「血染め蟹?なんだいそれは」その不吉な名前にガンドーは眉をしかめた。「この辺りに伝わる伝説ですよ、古い言い伝え、迷信みたいなものです」 16

2015-11-01 00:47:53
じょう @jou110

運転手は脅かすように声色を変えた。恐らくガンドーが眠っていなければ道中で話したかったのだろう。「昔、この辺りには動物達の住む集落を支配する邪悪なモンキーがいたそうです。ある日モンキーは集落に住む蟹の親子の作った作物と自分の持っていた芽の出なかった種とを無理やり交換しました」 17

2015-11-01 00:50:21
じょう @jou110

蟹の親子は仕方なくその種を植え育てた。すると芽が出なかったはずの種から桃の木が生えたのだ。蟹の親子は喜んだ。しかし、邪悪なモンキーは種を渡したのは自分だと言い、自らの所有物として抵抗する親蟹を殺し桃を奪ってしまったのだ。残された子蟹はモンキーを憎悪し、そして復讐を誓った。 18

2015-11-01 00:53:03
じょう @jou110

怒れる子蟹はモンキーをズタズタに引裂き、首を捩じ切った。なおも子蟹の怒りは収まらず、見て見ぬ振りをしていた他の動物、蜂、亀、バッファロー等を皆殺しにした。子蟹はその鋏を血に染め、怒り尽きることなく殺戮を繰り返した。そして嵐が訪れ崖崩れに集落が飲み込まれるまで殺戮は続いた。 19

2015-11-01 00:54:58
じょう @jou110

「この辺では嵐が来る夜に土砂の底から血染め蟹が蘇る、眠りを妨げてはならぬと伝えられてるんですよ」運転手はそう締めくくった。「寓意的だな、真相がどうであれとんだ曰く付きだ」ガンドーは溜息を吐いた。「どうです?探偵さんなら、こういう伝説めいた事件を解いた事あるんでしょう?」 20

2015-11-01 00:58:47
じょう @jou110

「あのなぁ、運転手さん、そんな事件なんてカートゥーンの世界にしかねえよ。現実に事件を起こすのは普通の人間のつまらない理由さ」「へえ、そういうもんですかね」運転手は少し残念そうにトランクを閉めた。「そういうもんだ……現実は探偵もカートゥーンみたく、単純じゃ無いのさ」 21

2015-11-01 01:00:30
じょう @jou110

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2015-11-01 22:59:15