アンド・ストライク・ア・ゴング　＃３（再放送）

劉度 @arther456

新しい声に、ジャンゴウは顔を上げた。二人の黒服を付き従えて、一人の女性が仁王立ちしていた。金髪をツインテールに仕立てあげた、目付きの鋭い顔つき。その服はジャンゴウの足元でラリっている金剛のものと同じ。「Oh,shit……艦娘か！？」 23

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「お、お疲れ様です！」ジャンゴウと戦っていたヤクザたちが一斉に頭を下げる。「ヘイヘイヘイ、まさかこいつらのボスなのか？」「その通り。ヴァジュダラ・ニオー・ヤクザクランを率いる、大戦艦コンゴウとは私のことだ」艦娘の組長。いかなる経緯でそのような地位に着いたのだろうか。 24

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「Holy,shit!そんなやべぇladyが俺たちに何の用だってんだ！」彼らがヤクザに狙われる理由は、今のところ無いはず。しかしコンゴウは苛ついていた。「貴様らは勝ちすぎだ。私は３勝２敗に賭けているのだ。残りの二戦はなんとしても負けてもらわねばならん」 25

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「……そんなんで木曽と金剛を襲ったのか、ファッキン野郎」ジャンゴウが前に進み出る。彼の背中は怒りに燃え、背後のヤクザたちをたじろかせる威圧感を放っていた。「兄弟のファイトを邪魔する奴は許さねえし、それにケチつける奴も許さねえ……！」「やる気か？」 26

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「よせ、ジャンゴウ……」木曽の静止に、ジャンゴウはニヤリと笑った。「No problem.お前はそこで休んでろ」そしてジャンゴウはコンゴウに相対した。コンゴウはその場から動かず右手を振り下ろした。「烈風拳！」腕から放たれた強力な気の奔流が、地を這いジャンゴウに襲いかかる！ 27

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ジャンゴウは腕をクロスさせこれを防御！衝撃が屈強な体を打つ！「Wow……すげェな、こりゃ」さしものジャンゴウもこれには驚いていた。それは気を放ったコンゴウも同様だ。「あれを防ぐとは。体格差もあるが、よく鍛えている」「次はこっちから行くぜ！」ジャンゴウが間合いを詰める。 28

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「ハァッ！」ジャンゴウが飛び蹴りを放つ。だがコンゴウはこれを腕で受ける。「Predictable！」更に勢いを利用しジャンゴウを投げ飛ばす！「Ouch!」床に叩きつけられるジャンゴウ。咥えたハッパが床に落ちる。「そんなものではないだろう。本気で来い」コンゴウが手招きする。 29

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「……Yah-man.それならお望み通り、ジャマイカ・ストリート・スタイルのビートをかき鳴らしてやるぜ」ジャンゴウが構えを変えた。顎の前で両手を構えるボクシングスタイルから、踊るように左右でステップを踏む奇妙なスタイルに。「カポエラ……」「え？」木曽の隣の金剛が呟いた。 30

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「ブラジル発祥の格闘技デース。独特のステップでプレッシャーを与え、逆立ちすら組み合わせる変幻自在の足技で相手を圧倒しマース」「金剛、お前正気が……」「まー実際には普通に殴ったりもするんだけどﾈｰｰｰｰｰｗｗｗｗｗﾌｯﾌｩｰｰｰｰｰｗｗｗｗｗ」「やっぱラリってんのか！」 31

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奇妙な動きにコンゴウは攻めあぐねている。大きく左右にステップを踏む姿は、他の格闘技では見られないものだ。下手に踏み込めば、リーチの長い蹴りが襲ってくるだろう。気を溜めて、右腕を掲げる。「烈風……ッ！」だが気が繰り出される前に、ジャンゴウが踏み込んだ！ 32

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顎目掛けた鋭いジャブ。コンゴウはそれを的確にガード、だが突如ジャンゴウの体が沈み、逆立ちになって蹴りを放つ！「くぬうっ！」遠心力を乗せて放たれたカポエラのキックは、ジャブの数倍重い！ガードごと金剛を弾き飛ばし、壁に叩きつける！そこにジャンゴウが側転して接近！ 33

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「ちいっ！」踵落としを回りこんで避け、コンゴウはジャンゴウの首に手刀を放つ！しゃがんでこれを避けたジャンゴウはそのまま足払い、コンゴウは跳躍して回避、しかしブレイクダンスに似た軌道で二本目の足が飛来！慌ててコンゴウはバックステップで距離を取る。攻防一体、迂闊に手を出せぬ！ 34

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ならば一瞬の隙にできうる限りのダメージを与えるしかない。コンゴウが右腕に力を込めた。「HA!」ジャンゴウの中段回し蹴り、それを前に出て防ぐコンゴウ。「チィッ!」打点を外された蹴りはパワー不足。二人の距離がワン・インチに縮まる。ここはコンゴウの間合いだ！ 35

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「Deadly rave!」息もつかせぬ連続打撃がジャンゴウを急襲する！ガードするも徐々に押されるジャンゴウ！「イィィヤァーッ！」そして渾身の掌底が遂にジャンゴウの体を吹き飛ばした！後ろには壁！「Shit!」ジャンゴウはその壁を蹴って跳躍、空中回し蹴りでコンゴウの首を狙う！ 36

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「Nice try!」だがそこまでがコンゴウの読み通りだった。連撃によって両腕に滾った気を、床に叩きつける。「Razing Storm!」溢れた気が地から吹き上がり、ジャンゴウに襲いかかった！「ウオォォォッ！？」紅く輝くオーラがジャンゴウを吹き上げ、天井に叩きつける！ 37

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コンゴウが素早く立ち上がる。最後の一撃、落ちてきた敵に渾身の掌打を叩き込む。それで終わりだ。「Yah-man,きついサーフィンだぜ」降ってきたのは陽気な声だった。コンゴウが目を見開く。気に押し上げられたその勢いを利用して、ジャンゴウは"天井に"逆立ちしていた。 38

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「Bang-a-rang！」ジャンゴウの踵が半月を描き、コンゴウの側頭部を力強く打った。メイア・ルーア・ジ・コンパッソ。カポエラを象徴する、逆立ちしたままのキックは、コンゴウの意識を蹴り飛ばすには十分だった。「よっと」気の嵐が途切れ、ジャンゴウが床に降りる。 39

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「さぁーて……まだやんのか、Guys?」居並ぶヤクザたちも、最強のボスを倒されては立ち竦むしかない。「木曽、OKか？」「なんとか、な……」「みなサーン、ついて来て下さいネーwwwﾌｯﾌｩ――wwwww」金剛が走りだす。それを追って、ジャンゴウと木曽もその場を逃げ出した。 40

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「……ぬうっ」数十秒後、床に伸びていたコンゴウが頭を振って立ち上がった。「ボス！」「ご無事で！」部下のヤクザたちが駆け寄りタオルを渡す。「倒されたのか、私は」「……はい」恐る恐る側近が答えると、意外にもコンゴウは笑みを見せた。「……フフッ」 41

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「クックックッ……」その笑いは次第に大きくなり、「ハァーッハッハッハッ……！！」遂には、廊下全体に響き渡る哄笑となる。ダァンッ！「許るさーん！！」壁に拳を叩きつける。「私の遊びの邪魔をしおって！」一瞬前までの哄笑は消え、彼女の顔は憤怒で塗り尽くされていた。 42

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「奴に電話しろ！」「しかしボス、最終試合は……」「分かっておる！奴らが勝てるはずがあるまい！だが、このままでは私の気がすまん！」コンゴウは部下から電話をひったくる。「私だ。……そうだ、撃て」短い通話の後、電話を切ったコンゴウはニヤリと笑った。「目にもの見せてくれる」 43

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「どすこぉぉぉい！」大鳳の上手投げが、夕張を投げ飛ばした。力を使い果たした夕張は、受け身も取れずに地面に叩きつけられる。九十九の武術を全て出し切った彼女が最後に繰り出したのは、最初と同じ古代ローマカラテだった。それがバトル・サイエンティストである彼女の誇りだったのだろう。 45

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《夕張、戦闘不能！よってこの勝負、横綱・大鳳の勝利！決まりては上手投げだぁっ！》古代ローマカラテ、恐るべき相手であった。割れんばかりの歓声が上がる中、大鳳は強敵に深々と頭を下げ、リングを降りた。「よくやった、大鳳」提督が肩を叩き、大鳳をベンチに迎え入れる。 46

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その光景を、観客席後方の整備用の空中通路から見下ろす人影があった。黒いコートを羽織った男の懐で、電話が鳴る。「もしもし。撃つか？……了解した」彼は電話を懐に仕舞い、傍らに置いてあったライフル銃を手に取る。麻酔銃である。 47