ニンジャスレイヤー二次創作【 ソロウ・オブ・ザ・スティーラー・オブ・ソウルズ 】#1まとめ

ニンジャスレイヤー×エルリック!
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篠原天佑。 @shinohara0714

渡り板は腐ってぬるぬるで、裏側を何匹ものフナムシが這い回り、足を踏み出すだけで今にも崩れ落ちそうに見えたが、ニンジャスレイヤーは些かの躊躇いもなく足を乗せ、板を踏みしめた。足を掛けてみると、渡り板は見た目に反し、固い大地を踏むが如く、この世のいかなる橋よりも堅牢に思われた。24

2015-11-03 21:09:31
篠原天佑。 @shinohara0714

危なげない足取りでフジキドがボートに乗り込むと、コルセアは舫い綱を解き、巨大なオールで鶏の脚を突いて、ボートを荒屋から押し離した。「ご機嫌よう、ニンジャスレイヤー=サン!そなたに〈天秤〉の加護があらンことを!」妖婆のアイサツに見送られ、ボートは滑るように異界の海に漕ぎ出した。25

2015-11-03 21:10:16
篠原天佑。 @shinohara0714

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2015-11-03 21:10:32
篠原天佑。 @shinohara0714

コルセアによれば、鉛の如きこの重い海は、嵐や人食い鮫、殺人マグロといった通常の危険とは無縁であったが、超自然の危険には未だ満ち溢れているのだという。「恐ろしいのは凪と、そうさな、アルゴスの目よ」特に急ぐでもなくのんびりとオールを漕ぎながら、海賊帽のニンジャはそう説明した。27

2015-11-03 21:15:56
篠原天佑。 @shinohara0714

「だが、今回は次元間のあわいをゆく旅だ。アルゴスは自らの次元から出てゆくものには無関心でな」パイプに正体も知れぬ草を詰め、火口から取り出した火種を移しながらコルセアが云う。「オヌシにとっては幸運なことだ。もっとも、今回はそれとは異質な別の危険に備える必要があるが」28

2015-11-03 21:16:43
篠原天佑。 @shinohara0714

「オヌシは〈白い狼〉とやらに心当たりがあるか、コルセア=サン」ニンジャスレイヤーが尋ねると、コルセアは申し訳なさげにかぶりを振った。「よくは知らぬ。わしが知るのは、そやつが〈魂の盗人〉だとか〈白面の魔〉だとかいった、様々な異名で呼ばれていることのみよ」パイプを一吹かしする。29

2015-11-03 21:17:41
篠原天佑。 @shinohara0714

「だが、これからオヌシが訪れる次元については些か心得ておる」精神の奥底で、ナラクが身じろぎする。「オヌシが慣れ親しまぬ種類の危険よ。〈新王国〉は魔法使いと妖魔の跋扈する土地だ」「ニンジャは。ニンジャはいないのか」餓えたようなニンジャスレイヤーの声に、コルセアが身を震わせた。30

2015-11-03 21:21:32
篠原天佑。 @shinohara0714

「それの手綱はしっかり握っておれよ」畏怖したようなコルセアの様子に、ニンジャスレイヤーは己を強いてナラクを抑えつけた。コルセアを殺すことはできぬ。ここが何処かもわからぬ場所で、水先案内人を失う事は、永劫に次元間の狭間を漂う結果をもたらしかねない。「済まぬ。続きを」31

2015-11-03 21:22:07
篠原天佑。 @shinohara0714

ほっと息をついて櫂を握り直したコルセアは、いつもの人を食ったような笑みを取り戻すと、「続きも何も、それ、あそこがオヌシの目的地よ」眼前に姿を現した浅瀬に向かって手を翳してみせた。フジキドが後にしてきた清涼の岸辺と比べ、こちらは日光と柔らかな白砂に覆われた、自然の浜辺に見える。32

2015-11-03 21:22:50
篠原天佑。 @shinohara0714

膝程の深さの自然の浅瀬に降り立ち、装束の裾を自然の水に濡れるに任せながら、ニンジャスレイヤーは浜辺に向かって歩き始める。あまりに決断的な、吹き抜ける風のような思い切りの良さに、コルセアが呆れたように呵々大笑した。「呆れたものだ。命知らずというのも足りぬ御仁であることよ!」33

2015-11-03 21:24:59
篠原天佑。 @shinohara0714

「世話になった、コルセア=サン」振り返りもせず、フジキド・ケンジは礼を云った。「ここはザフラ=トレペック河が大海に流れ込む汽水域だ。ここいらは〈新王国〉でも〈混沌〉の影響の少ない土地でな」コルセアが大音声を張り上げる。「恐らくは物盗り、山賊、そう云った危険に備えればよい!」34

2015-11-03 21:29:28
篠原天佑。 @shinohara0714

コルセアの最後の心遣いに感謝しつつ、ニンジャスレイヤーは浜辺に上がり、白い砂に足跡を残しながら、当面内陸を目指して河沿いを歩き始めた。超自然の光景に慣れた目にとって、浜辺の光景は風光明媚と云ってよく、フジキドはユカノとの岡山県への旅を思い出しながら、足取り軽く歩を進めた。35

2015-11-03 21:30:07
篠原天佑。 @shinohara0714

足元の地面はいつしか柔らかい草地に変わり、空気から潮の香りが失せたころ、ニンジャスレイヤーは前方の河原に転がる苔むした大岩の上に、ゆったりとした衣装を纏った人影が立ち上がるのを目にしてカラテ警戒に入った。36

2015-11-03 21:30:30
篠原天佑。 @shinohara0714

人影は、ほっそりとした肢体を七彩の長衣に包んだ女であった。素晴らしい金髪に囲まれた顔は頬骨高く、鼻筋は通っていて、豊満なバストと大きな尻がゆったりした長衣の上からでも見て取れる。その腰の後ろに黄金の長剣を佩き、その柄に手を添えて、ニンジャスレイヤーを睨んでいるのであった。37

2015-11-03 21:32:04
篠原天佑。 @shinohara0714

「ナンシー=サン?」呟きかけて、フジキドはその問いを呑み込んだ。コトダマ空間なら知らず、ナンシー・リーがこのような超自然の次元を訪れる筈がない。「止まられよ、妖魔どの」女は黄金の長剣を抜き放ち、フジキドに告げた。「シュタインウルフガーの思索を妨げるのはいかなる地獄の魔物だ?」38

2015-11-03 21:32:55
篠原天佑。 @shinohara0714

【 ソロウ・オブ・ザ・スティーラー・オブ・ソウルズ 】#1 終わり。

2015-11-03 21:33:22