「トワイライトシンドローム」に関する覚書

「トワイライトシンドローム」探索編・究明編の制作スタッフの一員として、制作時に考えていた事などを回想モードで折々Twitterに投稿してきました。 一覧で参照しやすいようにTogetterで整理したのが以下のまとめになります。 2016/2/19 各記事をまとめた上でタイトルを更新。
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Hiroshi Kasai @heron64

「トワイライト」のまとめを更新したら、「屋上」という言葉に反応したのかTogetterにお勧めされたまとめw 興味深く読んだ。 .@sohsai さんの「屋上が印象的に使われている作品」をお気に入りにしました。 togetter.com/li/666854

2016-02-19 20:39:54
Hiroshi Kasai @heron64

屋上というのは気持ち良く眺望が開けてビジュアル的に開放感があるので、映画などで使われるのは良くわかる。 出入り禁止にされている施設が多い関係上、その禁忌性によってある種の神秘性を纏っているのも手伝っているかもしれない。 自分の場合、中学だけは屋上が開放されていたな。

2016-02-19 20:46:43
Hiroshi Kasai @heron64

「トワイライト」における屋上と言うのは、最初「はじまりの噂」のラスト「追い詰められたドン詰まり」というシチュエーションのために用意した。 遠方に見える副都心のビル群の明かりみたいな開放されたイメージと「どこにも逃げられない」という切迫感の二律背反。典型的なクリフハング。

2016-02-19 20:53:01
Hiroshi Kasai @heron64

それと同時に、物語の推進力として「上へ上へ」という垂直方向のベクトルというのは、ある種特別な高揚感を持っていると思う。「カリオストロの城」を始め、宮崎駿の作品の多くで塔がクライマックスの舞台となるのは、ビジュアル的にも生理感覚的にもある種の「上昇」感覚を志向しての事だろう。

2016-02-19 20:58:51
Hiroshi Kasai @heron64

トワのメイン舞台となる雛城高校の校舎も、ある意味そういう垂直方向のベクトルを伴う階梯としての機能を持っていて、上り詰めると重い音で開くドアの「出口」をくぐって大きく開けた空の下へ出る… そういう生理的感覚に裏打ちされた構造性を物語世界に重ねられないかと考えていたように思う。

2016-02-19 21:20:53
Hiroshi Kasai @heron64

何やら言い回しがアラマタ氏めいてきてるがw、そういう「生理的構造感覚」を基軸として、「はじまりの噂」で辿ったルートをラストの「裏側の街」でもう一度辿り直すと言う「くりかえし」の構造が、実感を持って湧き上がってきた。 登って、くぐって、何かに会う… それ自体が何かの儀式のように

2016-02-19 21:31:09
Hiroshi Kasai @heron64

象徴とか隠喩・暗喩の体で言うなら、例えば校舎が「自我」で屋上が「世界に繋がる窓」みたいな感じになるのかもしれないが、何かそう言う言葉で片付けられる感じではなく、そのプロセス自体を「体験」として実感ある物にしたかった。ゲームというメディアの持つ参加性を活かして。

2016-02-19 21:45:11
Hiroshi Kasai @heron64

夕陽の校舎を歩きながらユカリが見る記憶の断片達。自分を形作る過去の体験を次々にくぐり抜けていく事で、自分の「生」を確かめて行く。いわゆる「走馬灯」による解体の逆プロセス的ななぞらえもちょっと意識している。 この場面での窓の外に広がる夕焼けの街、本当に綺麗に仕上がってて良かった。

2016-02-19 22:03:41
Hiroshi Kasai @heron64

そうやってユカリが全一的な自我を取り戻してきた所でドアをくぐって表に出る。 この「屋上」シーンの要は、やっぱり「広がる空」。大判のビジュアルシーンで横PANまでかけて強調したかった空間の広がりw 心細くて縮こまってた自我は、空の下、風に吹かれて、再び呼吸を始める。

2016-02-19 22:14:26
Hiroshi Kasai @heron64

振り返ってみるとトワの物語の中で「屋上」は、やっぱり何らかの意味で「境界」的な位置付けになっていると思う。おかっぱの少女に会い、裏側の街から帰還し、ミカがサクラの声を聞き…要所で二つの世界の接点として機能している。 後付け的な理屈でならアラマタ氏的に論ずる事も可能だろうw

2016-02-19 22:25:12
Hiroshi Kasai @heron64

しかしながら、制作中に自分が「屋上は彼岸と此岸の境界」みたいな事を明示的に意識した事はなかったように思う。 そう言う理屈からではなく、「ドアをくぐって開けた空間に出る」というその感覚を場面に適用する時、自然とそういう「気持ちの入ったシチュエーション」に割り当てられていた気がする。

2016-02-19 22:30:29
Hiroshi Kasai @heron64

人間というのは、結局どこまで行っても五感の生き物なのだと思う。皮膚感覚として実感できる「気持ち良さ」とか「開放感」を通してこそ「屋上」が理解され描かれる。 屋上を舞台とした場面が人々の印象に残るのは、それだけ「屋上体験」が人々にとって特別な物だという事なのだろう。

2016-02-19 22:41:21

「トワイライトシンドローム」美術編。
ビジュアルシーンについての諸々などをまとめました。

Hiroshi Kasai @heron64

トワイライトシンドローム 美術編。 トワは初代PSでも比較的初期のタイトルにあたり、制作時にもかなり明確に「次世代機向け」という位置付けが意識されていた。 バイノーラルを駆使した3Dサウンドは勿論の事、ビジュアル面においてもかなり潤沢な制作費が投入されていたと記憶する。

2016-02-25 01:56:17
Hiroshi Kasai @heron64

OP・EDやクライマックスシーンでのCGムービー、学校など怪談の舞台をフルスケールでポリゴン構築したステージ、実写演技を参考にドット起こししたキャラモーション、アニメ美術を全面導入したビジュアルシーンなど、構成要素だけ見てもかなりのビッグバジェットだと思う。

2016-02-25 01:56:53
Hiroshi Kasai @heron64

これらの内、ポリゴンステージとビジュアルシーンの素材制作に、かなりアニメ美術のノウハウが導入されている。 ポリゴンステージに配置される様々なパーツが書き割りやテクスチャとしてアニメ美術によって起こされ、ビジュアルシーンも絵画的なテイストで構成されている。

2016-02-25 01:57:19
Hiroshi Kasai @heron64

美術をお願いしたのは美術監督 池田繁美さんのアトリエ・ムサ。ガンダムなどサンライズ系の作品を多数手がけられていたベテランで、当時の企画課主任I氏が元サンライズで制作を務めていた時の繋がりからお願いしたと記憶している。

2016-02-25 01:57:54
Hiroshi Kasai @heron64

自分も前歴がアニメ畑だった事もあり、制作初期はビジュアルシーンのレイアウトを必死こいて描いてた記憶がある。途中でクオリティやスケジュールの問題からビジュアルスタッフをきちんと入れてもらったが、一応コンテまでは全カット面倒見たぞと言うのが密かな自負w

2016-02-25 01:58:24
Hiroshi Kasai @heron64

トワの実況プレイ動画のサムネなどを見ると、エピソード毎に「ああ、ここのビジュアルシーンを使ったのか」と判る程度には「印象的な場面」を各話ごとに提供できたと言っても良いのだろうか。 ビジュアルシーンは絵的に独立してる分、パブリシティなどで使い勝手が良かったのかもしれない。

2016-02-25 02:02:04
Hiroshi Kasai @heron64

ビジュアルシーン、使い所としてかなり明確に意識したのは「ポリゴンステージだけでは伝えきれない空間感覚」を積極的に出して行こうという事。 その事によって、舞台となる雛城高校を始めとした主人公たちの「生活空間」の構造性を伝えようとした。

2016-02-25 02:02:50
Hiroshi Kasai @heron64

例えば、第二の噂で渡り廊下を歩いて行く奥野教諭のビジュアルシーン。 雨の降りしきる梅雨期の陰鬱さと同時に、新校舎と旧校舎の二段階の校舎で構成されている舞台を印象付ける目的もあったりする(新校舎が探索の対象となるのは、この回が初)。

2016-02-25 02:03:40
Hiroshi Kasai @heron64

また、同エピソードで校内放送をかける場面、誰もいない校舎に響き渡る放送音声という雰囲気作りと同時に、階段、下駄箱、玄関、公衆電話と言ったパーツを印象付けている(ちなみにここは各カット視点を微妙に人間の目の高さから外して「何かに見られてる感」を醸し出してみた)

2016-02-25 02:04:31
Hiroshi Kasai @heron64

雛城高校の全景ショットや門から見上げる上り坂なども、この高校の「高台に建っている」という気分を強調するため。 裏山と言うのは「もうひとつの噂」で急遽追加になった設定なのだけど「裏山に登って来るユカリたち越しに街の夜景を見渡す」という1ショットでなんとか納得させられただろうかw

2016-02-25 02:05:46
Hiroshi Kasai @heron64

作画にあたって通常のアニメ制作同様「美術ボード」と呼ばれる色味やテイストなどを確認するための場面場面の基本設定画が美術監督によって起こされた。 メニュー画面で各エピソードのタイトルとして表示される絵がこれを素材として有効活用した物。S氏設計のインターフェイスと相俟ってカッコいい。

2016-02-25 02:07:22
Hiroshi Kasai @heron64

ビジュアルシーンは、最初のうちは見た目視点の「美術素材オンリー」のつもりで考えていた。しかし要所要所で人物を入れ込んでシチュエーション説明に使いたいという欲求が高まって来た。 実写撮影素材はアングルが限られるので、やはりI氏経由でアニメーターの人に作画発注する事になった。

2016-02-25 02:09:30
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