アンド・ストライク・ア・ゴング #5(再放送)

※当時は秋津洲未実装です
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劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

2015-11-05 20:31:33
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2015-11-05 20:32:37
劉度 @arther456

《ご来場の皆様、ここまでお付き合い頂き真に、真にありがとうございます!》ネオカルイザワ地下の闇コロッセウムに、スピーカーで増幅された声が響き渡る。《今宵この場面に立ち会えたことは奇跡でしょうか?数々の困難を乗り越え、今、『サーティースリー』による伝説が作られようとしています》 1

2015-11-05 20:33:29
劉度 @arther456

主催者チームと優勝者チームの戦いは、あくまでもエキシビジョンである。勝ち数に応じて、賞金の上乗せ、副賞の追加など与えられるが、それはオマケにすぎない。そもそもこれはあくまでも余興であり賭け試合。挑戦者が勝つこと、ましてや全勝することなど想定されていないのだ。 2

2015-11-05 20:37:09
劉度 @arther456

《それでは、闘技場初のエキシビジョン全勝に挑戦する……『サーティースリー』最後の挑戦者の入場です!》実況に促され、不知火が立ち上がる。「不知火」提督が声をかける。「何でしょうか」「思いっきり勝って、それで、無事に帰って来て」「ご命令とあらば」 3

2015-11-05 20:40:21
劉度 @arther456

リングに上がった彼女を、照明が四方から照らす。《予選を通して無敗!青春はどこに置いてきた!?修羅少女・不知火!》今までのような歓声は無い。狩られるためだけの獲物に拍手を送る人間がどこにいるだろうか。それでも不知火は表情一つ変えず、向かいのベンチを睨みつけている。 4

2015-11-05 20:43:38
劉度 @arther456

《対して、挑戦者チーム!この方の入場です!》反対側のベンチから、一人の少女がリングに降り立った。動きやすい袴姿、左手には鷹匠めいた小手を装着している。注目すべきはその顔だ。何かの儀式のように、迷彩めいた厚化粧を施していた。《我が闘技場最強の闘士!秋津洲!》 5

2015-11-05 20:46:57
劉度 @arther456

「秋津洲……?」提督が眉根を寄せる。「ブッヒッヒ!あやつを知らぬとは、オヌシの財力も大したこと無いのう!」後ろの席のカネモチが嘲笑う。「水上機母艦、秋津洲!海軍が試作して、採用しなかった艦娘よ!"館長"は金の力で持ってあの艦娘を海軍技術研究所から買い上げたのじゃ!」 6

2015-11-05 20:50:16
劉度 @arther456

秋津洲と不知火の間に会話はない。お互いに一瞬だけ目を合わせると、不知火は腰を屈め、握り拳を地面につけた。観客席がどよめく。《し、仕切りの体勢だ!不知火も相撲を取る気なのかッ!?》大鳳が西の横綱なら、不知火は東の横綱である。取組の腕前は確かだ。 7

2015-11-05 20:53:27
劉度 @arther456

秋津洲は動じない。足を半歩引き、不知火を見据える。今までの対戦相手とは違う、圧倒的なオーラが不知火を取り囲む。そのプレッシャーの中で、不知火は突き立てられた刃のように毅然と己を奮い立たせていた。《では、最終戦!フリート・コンバット!セイリー……ゴォ!》 8

2015-11-05 20:56:37
劉度 @arther456

【アンド・ストライク・ア・ゴング】#5(再放送)

2015-11-05 20:56:54
劉度 @arther456

ゴングが鳴り響くと同時に、不知火が飛び出した。地を切るような相撲特有の低空タックルで、秋津洲に迫る!秋津洲がそれに対し取る行動は一つ。「ッ!?」提督が息を呑んだ。秋津洲の右足が消えた。セオリー通り、顔面のローキック。閃光めいたその速さは、目では捉えきれぬ! 9

2015-11-05 20:59:50
劉度 @arther456

だが、不知火はそれを腕で防いだ。秋津洲の顔に僅かな動揺が走る。この速さを見切られたのか?否、不知火にも今の一撃は見えていなかった。これは心理戦だ。低空タックルに対する顔へのローキックというセオリー、それを最初から読んだ上で、秋津洲の足が消えた瞬間に不知火は顔を守ったのだ。 10

2015-11-05 21:03:07
劉度 @arther456

そして二の矢が許される速さではない。不知火のタックルが、秋津洲の腰を捉えた。相撲で言うなら、まわしをとった体勢。ここから相手を押し倒し、マウントを――「……ッ!?」倒せない。倒れない。片足で立っているはずの秋津洲が、ピクリとも動かない! 11

2015-11-05 21:06:17
劉度 @arther456

「ふんっ!」不知火の背中に秋津洲が肘を振り下ろす!「ぐうっ……」たまらず離れる不知火。「なるほど、いいタックルだ」秋津洲が初めて口を開いた。「だが、この秋津洲流戦闘航海術の前では、いかなる攻撃とて無力そのものよ」袴の裾から僅かに見えた左足に、錨が巻き付いていた。 12

2015-11-05 21:09:27
劉度 @arther456

秋津洲流戦闘航海術。かつての大戦では、錨を使って船体を急カーブさせ、爆撃や砲弾を避ける航行法であった。その名の通り秋津洲だけではなく、戦艦伊勢や日向、ミズーリなどもこれによって戦果を上げた。時は流れ、艦娘となった秋津洲は、これを合気道と組み合わせ新たな武術を創始した。 13

2015-11-05 21:12:39
劉度 @arther456

不知火が再び距離を詰める。細かいジャブからボディーブローに繋げ、ダメ押しのハイキック。しかしいずれも秋津洲は軽々と受ける。打撃のダメージはない。特殊な技巧により、衝撃は全て足を伝って地面に逃されているのだ。「ぬるいっ!」一歩も動かず、秋津洲は不知火を投げ飛ばす。 14

2015-11-05 21:15:54
劉度 @arther456

両手をついて起き上がった不知火は、今度はゆっくり歩いて秋津洲に近づく。秋津洲流戦闘航海術は返しの武術。不知火が間合いの中に入っても、向こうから手を出さないと技を繰り出せない。「怖気づきましたか」不知火が呟く。挑発だ。「打ってこい」だが秋津洲は動じない。睨み合う。 15

2015-11-05 21:19:10
劉度 @arther456

不意に、不知火が秋津洲の襟を掴んだ。秋津洲は体を引き、その勢いで不知火を投げ飛ばそうと「ぬうっ!?」足が動かない!不知火の靴が彼女の足を踏みしめている!不知火が秋津洲の顔に拳を振り下ろすが、秋津洲はこれを右手で受け止める!両手が塞がった不知火が次に繰り出したのは――頭突き! 16

2015-11-05 21:22:26
劉度 @arther456

「ぬおっ……!」秋津洲が大きくよろめいた。間髪入れずに両手を振りほどいた不知火の猛烈なラッシュが始まる!秋津洲はこれを受けるが、先ほどとは違い構えが崩れているため軸足に衝撃を逃せない!「ふんっ!」手刀が繰り出されるが、不知火はこれを避け逆に腕を絡めようとする! 17

2015-11-05 21:25:40
劉度 @arther456

「舐めるなぁ!」腕を極められる前に手刀が肘打ちに変化し、不知火の側頭部を強打!たまらず不知火が吹き飛ぶ。だが強引な姿勢で打った肘打ちは、勝負を決めるには至らず、不知火は再び立ち上がる。ふぅ、と秋津洲が息を整えた。この少女、今まで戦ってきた艦娘とはまるで違う。 18

2015-11-05 21:28:56
劉度 @arther456

力は秋津洲が圧倒している。技術はあるが、これも秋津洲には及ばない。今まで戦ってきた艦娘の強さの軸はこの2つ。だが目の前の少女、不知火の強さの軸は違う。「覚悟。それがうぬの強さの源か」多少のダメージは無視して、ただ急所を狙う。それが彼女の強さの理由だ。 19

2015-11-05 21:32:12
劉度 @arther456

秋津洲が今までこの闘技場で戦ってきたのは、業前はあれど相手を傷つける、あるいは殺してしまう可能性に怖気づく少女たちばかり。それ故秋津洲は無敗で在り続けていたのだが、そのことを彼女自身は物足りなく思っていた。己の全力をぶつけて、なお退かぬ敵が欲しい。 20

2015-11-05 21:35:23
劉度 @arther456

「我が願い、このような地の底で叶うとは思わなんだ」秋津洲が軸足を動かした。静から動へ、これまで一歩も動くことのなかった彼女が、初めて攻撃に移った!鋭いハイキックが不知火の顔を狙う!不知火はこれを下がって避けようとし――異変に気づき、ブリッジ回避! 21

2015-11-05 21:38:50
劉度 @arther456

瞬間、蹴り足から錨が伸び、一瞬前まで不知火のいたところを薙ぎ払った!「ちぃっ!」舌打ちしつつ不知火は後転し、次の回し蹴りを躱す。「フンッ!フンッ!ジョイヤーッ!」秋津洲は次々と、無限に伸びる錨の回し蹴りを放つ!不知火は跳び、身を屈め、鉄鎖の暴風雨を凌ぐ。 22

2015-11-05 21:42:01