アンド・ストライク・ア・ゴング #5(再放送)

※当時は秋津洲未実装です
0
劉度 @arther456

ガァンッ!伸びきった錨が、闘技場の木製フェンスに突き刺さった。その隙を逃さず、不知火が貫手で喉を狙う!だが秋津洲はこれを回避、不知火の後ろに回り込み、後ろ蹴り!袴の下からは2個目の錨!不知火の頬を掠め反対側のフェンスに刺さる!2つの錨の間で、鉄の鎖が張り詰めた。 23

2015-11-05 21:46:03
劉度 @arther456

敵の武器は無くなった。止めを刺そうと不知火が間合いを詰める。「とうっ!」だが、秋津洲が飛び、宙に渡された錨の鎖の上に乗った。なんたるバランス感覚か!「せいやぁっ!」そのまま不知火の顔めがけ強烈なローキック!スパァン、と景気のいい音が、不知火をガードごと吹き飛ばす! 24

2015-11-05 21:49:24
劉度 @arther456

「これぞ秋津洲流戦場航海術!」不知火を追って鎖の上を駆け、秋津洲が跳ぶ。鎖の張力を利用した跳躍は常人では辿りつけぬほど高い。そこから不知火へ急降下、必殺の飛び蹴りを放つ!不知火はローキックの衝撃から未だ立ち直れない。「捉えたァ!」秋津洲が吠えた。 25

2015-11-05 21:52:38
劉度 @arther456

足が不知火の胸に突き刺さる瞬間、突然秋津洲の視界が回転した。不知火が彼女の足に両腕を絡めて、一本背負いの要領で投げ飛ばしたのだ。砂の地面が眼前に迫る。とっさに体を捻り、左腕で地面を叩いた。衝撃を僅かでも殺すための受け身だが――ズバァン!リングの砂が舞い上がる。 26

2015-11-05 21:55:52
劉度 @arther456

秋津洲はすぐさま立ち上がった。幾多の戦いの中で染み付いた習性だ。一秒でも長くダウンしていれば、それだけ追撃される可能性は高くなる。「……フフッ」秋津洲は不敵に笑う。痛めた右足を庇おうともしない。これからが本番だと言わんばかりに。 27

2015-11-05 21:59:14
劉度 @arther456

不知火が動いた。拳は握らず、貫手と掌底で攻める。ほんの一瞬、指の一本でも引っかかればそこから組み技に移行するためだ。だが繰り返される連撃は、秋津洲を捉えられない。右足を極められ投げ飛ばされたにも関わらず、むしろ秋津洲の動きは切れ味を増している! 28

2015-11-05 22:02:28
劉度 @arther456

「でぇい!」貫手を屈んで避けた秋津洲が、左の掌底を繰り出した。不知火の左脇腹、心臓のすぐ横を叩く。「……ッ!」いかなる技術か、不知火の脈拍が一瞬乱れる!そして動きを止めた不知火の腹に、秋津洲渾身の右掌底が突き刺さった!不知火の体が吹き飛ばされる! 29

2015-11-05 22:05:41
劉度 @arther456

「不知火ッ!」提督が身を乗り出す。不知火は――。「そんなんで、不知火は沈まないわ」ふらつきながらも起き上がった。口の端から血が流れているが、拳は握ったままだ。「そうだ、その眼だ」秋津洲が歯を剥き出して笑った。「その眼が見たかった!」 30

2015-11-05 22:08:53
劉度 @arther456

秋津洲が駆ける!勢いを載せたチョップを不知火は潜って避け、逆に秋津洲に足払いをかける。「甘いッ!」秋津洲はこれを片足跳躍して回避!「ぬうっ!?」しかし着地した秋津洲が唸る。「ブヒイッ!?」客席のカネモチも唸る。不知火が秋津洲の顔に放ったのは、地面の砂だ! 31

2015-11-05 22:12:07
劉度 @arther456

塞がれた視界の中で、しかし秋津洲の感覚は研ぎ澄まされた。目が見えずとも、ここまで拳を交わした相手の動きは脳裏で再現できる。視界を潰した不知火が放つ必殺の一撃は、喉の気道を潰す貫手!「そこだぁっ!」それに合わせ、秋津洲は不知火の顎に渾身の右ストレートを打ち込む! 32

2015-11-05 22:15:24
劉度 @arther456

一瞬の中で、必殺が交錯した。 33

2015-11-05 22:18:47
劉度 @arther456

「……甘く見ていた」最初に口を開いたのは秋津洲だった。目潰しから回復した視界が最初に捉えたのは、顎ではなく頬を捉えた己の拳。一撃を逸らしたのは技ではない、左肩の痛みだ。その痛みの元は、不知火の手刀ではなく、彼女の手に握られ秋津洲の肩に突き刺された金属片だった。 34

2015-11-05 22:19:21
劉度 @arther456

「お主の"勝利"への執念は、それほどまでだったか」彼女の方に刺さっていたのは、見覚えのある艤装の破片。第一試合で爆発四散した、モーターフルタカの金属片だった。さっきダウンした時に、拳の中に握りこんでいたのか。不知火と秋津洲はほぼ同時に、よろめきながら離れた。 35

2015-11-05 22:22:34
劉度 @arther456

「ザ……ザッケンナコラー!?」警備ヤクザたちが叫ぶ!目潰し、加えて凶器!闇カネモチたちの怒りを買うには、十分すぎるダーティープレイである!「静まれぃっ!」だが、強烈な一喝が会場に響き渡り、全ての者の動きを止めた。地獄めいた声の主は、秋津洲。 36

2015-11-05 22:25:48
劉度 @arther456

「さんざ殺し合いを愉しんでおきながら、ルール違反は許さぬと申すか、この痴れ犬どもがぁッ!」秋津洲の顔の化粧は、今や激闘と汗によって崩れ、彼女の顔に鬼神の如き表情を作り出していた。それに一喝されては何者も手出しはできぬ。ただ一人、冷たい目で彼女を見据える不知火を除いては。 37

2015-11-05 22:29:18
劉度 @arther456

二人がゆっくりと歩く。その軌道は円。互いの動きを探っている。傷は深い。次の一撃が最後となろう。どちらがそれを制したとしても、繰り出されるのは必殺の一撃。負けた方は生きていまい。「覚悟はいいな?」秋津洲が呟く。不知火に、あるいは自分自身に言い聞かせるように。 38

2015-11-05 22:32:27
劉度 @arther456

互いに向けて一歩踏み出す。その時だった。「そこまでぃっ!」野太い声が場内に響き渡った。秋津洲と不知火の睨み合いを妨げるほどの力強い声だ。会場の視線が一斉に声の主に集まる。「なん……だと……?」提督が目を見開く。「ウソでしょ?」観戦していたTヘッドも、驚きの声を上げた。 39

2015-11-05 22:35:42
劉度 @arther456

「館長」秋津洲を止めた声の持ち主は、スーツ姿、しかし筋骨隆々の壮年の男性だった。この闇コロッセウム艦娘トーナメントの主催者である。「……二人共、その辺にしておけ。それ以上は勝ってもただじゃ済まなくなる。この勝負、引き分けだ」「我に心配は不要。水を差すな、館長」 40

2015-11-05 22:38:55
劉度 @arther456

「その通りです。それに不知火が命じられたのは勝利だけ。引き分けは必要ありません」「そっちもかよ……参ったな。なら、勝負は一時預かりだ。後日、改めて再戦。それでどうだ?」「今すぐ」「おい、キミの主人の事も考えてやれ」不知火が振り返る。提督は首を横に振っていた。 41

2015-11-05 22:42:07
劉度 @arther456

ため息を付いて不知火が構えを解いた。秋津洲も不服そうにベンチに下がる。「……さて、お集まりの皆さん!少々華のない結末となってしまいましたが、どうかご容赦願いたい!」大仰な身振りで館長が語る。「しかし彼女の余りある才、ここで散らすにはあまりにも惜しい!」 42

2015-11-05 22:45:22
劉度 @arther456

「そこで2ヶ月後のバトルロイヤル戦!ここに彼女を特別枠で参戦させましょう!」「勝手なことを」忌々しげに提督が呟く。その横に近寄る影がある。「はーい、理事さん」第三試合で戦った夕張である。「おめでとう。館長があなたと会って話がしたいって。これからご案内するわ」 43

2015-11-05 22:48:34
劉度 @arther456

「今すぐ?」「今すぐ」ふぅ、と溜息をついて提督は大鳳に囁いた。「何かあったらすぐに逃げて。くマリンコがいるから」その表情は浮かない。「……提督、じゃなくて理事、あの館長を知っているの?」どうも様子のおかしいのに気付いた大鳳が聞くと、提督はTヘッドをちらりと見てから答えた。 44

2015-11-05 22:50:55
劉度 @arther456

「……引退したのは、5年ぐらい前だからね。そりゃみんなは知らないか」「引退?」「――元海軍大将にして、イージス艦『金毘羅』艦長。そして元衆議院議員、松場鉄山。艦娘が生まれる前から深海棲艦と戦ってた、旧国防海軍の生き残りだよ」 45

2015-11-05 22:54:05
劉度 @arther456

【アンド・ストライク・ア・ゴング】#5(再放送)おわり#6(再放送)へ続く

2015-11-05 22:55:12