茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1648回「思い出すことで育つ」

脳科学者・茂木健一郎さんの11月7日の連続ツイート。 本日は、感想です。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1648回をお届けします。文章はその場で、即興で書いています。本日は、感想です。

2015-11-07 08:27:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

人生のたいていのこと(実はすべてのこと)は、たった一度しか起こらない。しかも、それを記録する方法はない。ところが、一回性の印象的な出来事は、私たちの中で鮮やかで鋭い色を持って育ち、いきいきと、生き続ける。生命と同じ寿命を持って。

2015-11-07 08:28:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

昨日、上野公園の東京都美術館の前で、植田工が杉ちゃんの役をやり、石川哲朗が大竹伸朗さんの役をやって、杉ちゃんが大竹さんに食ってかかって、大竹さんがこのやろーとハイキックを決めて紙コップが飛んだシーンを再現した。vine.co/v/eLHejX6W5WT

2015-11-07 08:29:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

実際に、大竹伸朗さんが杉ちゃんの持っていた紙コップを蹴ったのは、2006年11月6日にこと。誰もその出来事を予想していなかったし、「あっ!」と思った瞬間には終わっていた。でも、その奇跡のような出来事は、その場にいた人たちの心に鮮明な映像として残る。

2015-11-07 08:31:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

人生で一回だけの出来事は、誰もカメラを回していないし、映像編集もされていない。ところが、私たちの脳は、視覚だけでなく聴覚や触覚や嗅覚や体性感覚やありとあらゆるデータを総動員して、その時の出来事を記録する。

2015-11-07 08:32:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

脳の中に刻まれた一回性のできごとは、脳の記憶の回路の中で、徐々に、ゆっくりと育って、その鮮明さは、振り返る機会が多いほど、私たちの中で植物のように育っていく。記録されていないからこその、成長の自由度もある。

2015-11-07 08:33:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

一回性の出来事が感情や記憶の回路を刺激し、活性化して育っていった結果出来上がったものは、ひょっとするともともとの出来事の物理的な再現ではないかもしれない。しかし、だからこそ、その「思い出」は私たちにとってかけがえのないものになる。

2015-11-07 08:34:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

一回性の出来事を育てるには、それを思い出すしかない。二度と戻ってこないその時間をしのび、全身全霊を持って思い出すしかない。すると、その繰り返さない人生の時間は、私たちの中で育ち始める。思い出すことが、水になり、太陽になり、滋養になって育つ。

2015-11-07 08:35:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1648回「思い出すことで育つ」をテーマに、7つのツイートをお届けしました。

2015-11-07 08:36:16