-Most of Braver- 掃溜めに光る刃のお話

MOB不参加ですとか言ったの誰だよ俺だよ。 MOBにユリウス・フェレトリウスにて途中参加しております。おじさんをよろしくね。 ※未完結/時系列順 同時間軸の別のお話 続きを読む
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消失中 @lv100uni

大戦中。戦場へ運ばれる医療品には限りがあった。 毎日無謀に死に急ぐ自分を長らえさせるために消費された消耗品で、一体何人の命が救えただろう。レダがくれたポーションも、自分以外で救えた命があったはずだ。 だが、彼等は、レダはユリウスを選んだ。

2016-02-08 00:27:04
消失中 @lv100uni

名も無き数多の死の上に生がある。自分のために喪われた命があるはずだ。そして、これからもそれは続いていく。 得た邪紋の力、影に潜る暗殺の刃で、これから先俺は何人の人を殺すだろう。ただの人間だった時よりも容易く、この手は人の命を葬り去れるようになった。

2016-02-08 00:32:31
消失中 @lv100uni

そうして、人を殺して生きていく。 俺にはそれしかできない。 レダに救われても尚、多分、この生き方は、変えられない。せめて彼女が、こんな醜い男の一面を知らずにいてくれればと願う。 他者の命を奪い、喪い、そして進む。この名前は自戒だ。己が殺した死者の軍団。 さぁ、共に連れ歩こう。

2016-02-08 00:39:13
消失中 @lv100uni

「……なーんか、色々抱えてるねぇ、ユールレイエンさんさぁ」 「はは、馬鹿言えよ。俺が抱えてるのはたった一つの約束だけだ。他は全部、棄ててきた。名前にくっつけてるのは、まぁ、オマケだな」 自分が犠牲にしてきた屍の山が無ければ今、此処に生きてはいないのだ。せめてもの感謝、なんて。

2016-02-08 00:44:19
消失中 @lv100uni

(つくづく俺ァクソ野郎だな。……レダを騙して、他人を踏み台にして、……やってることはあのシーザーの奴と変わんねぇってか。結局似た者同士だったってことだ) 自嘲するような笑みと共に、どこか吹っ切れる。 そうさ俺はクソ野郎だ。でも、そんな奴にも手を差し伸べる天使はいたんだ。

2016-02-08 00:48:25
消失中 @lv100uni

だったらもう迷わない。 俺は彼女の手を取って生きていく。 そう約束したから。 迎えに、行かないとな。

2016-02-08 00:50:54
消失中 @lv100uni

嘘は、吐くかもしれない。もう吐いてるかもしれない。それはこっそり黙っておこう。 でも。 レダ、お前との約束は、絶対守るよ。 だから、もう少しだけ、待っててくれ。 #邪紋と美学に約束を

2016-02-08 00:56:00

名もなき天使と邪紋の男

消失中 @lv100uni

季節は廻る。 春が過ぎ。夏が過ぎ。時空災害は浄化され。蟲の大群も追い払われ。 風がやや冷気を帯び、草木が鮮やかに色づく、秋。 ――半年後。 #邪紋と美学に約束を @GCrepi

2016-02-08 20:36:24
消失中 @lv100uni

とある、アルトゥーク条約の領地の一角にあるパン屋。何の変哲も無ければ、取り柄と呼べる程の絶品も無い、ただ変わりのない暖かで素朴なパンの味を売りとするその店で、一人の少女が働いている。何でも彼女には『待ち人』がいるそうだ。 少女が待ち始めてから半年が経つ。→ @GCrepi

2016-02-08 20:42:46
消失中 @lv100uni

パン屋の朝はとても早い。その日も少女は日が昇るより早く起きる。身支度、掃除、せっせとパンの仕込みをし、そして焼き上がったパンを店内に並べたところで気がつけば開店時間になっていた。 開店直後は人がそう滅多に来ない、僅かな休息時間だ。 しかし、その日は違った。→ @GCrepi

2016-02-08 20:48:47
消失中 @lv100uni

微かなベルの音と共に、一人の旅装の男が外の冷気を引き連れて入店してくる。日が昇り始めてまだ僅か、未だ薄暗い背景に不思議と溶け込むように、彼の纏う存在感は酷く薄い。 少女はその存在をあまり気に留めないだろう。気づけない、と言った方が正しいかもしれない。→ @GCrepi

2016-02-08 20:53:37
消失中 @lv100uni

店内に並べられたパンを一通り眺めた男は、どれを取るということもせずにカウンターの少女の元へ。 「店員さん」 声を掛けられて初めてその存在を認識できる。 はっとした貴方が顔を上げると。 「ここのパン、どれも美味しそうでさ。あんたのオススメのパン、選んでくれよ」→ @GCrepi

2016-02-08 20:58:06
消失中 @lv100uni

そこには。 「それと、あんたの今日の退勤時間もついでに教えてくれると嬉しいなァ。それまでどっかで適当に時間潰してくるから」 照れ臭そうに笑う、懐かしい、顔がある。 「……ただいま、レダ」 @GCrepi

2016-02-08 21:03:49
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk いつものように朝起きて、いつものようにパンの仕込みを始める。焼きあがったパンを鼻歌混じりに並べて、いつものようにカウンターへ。あの大戦終結後、この町の気前の良いパン屋の女主人に頼み込んで働き始めてからは、毎日同じことの繰り返しだ。 →

2016-02-10 23:21:12
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk でもパンを捏ね、焼くのは好きな事だから苦ではない。 邪紋使いの兄アーロンは、自分たちを誰も知らない町で、妹レダの働く場所と寝床が確保されたのを見届けてから、傭兵稼業へと出て行ってしまった。暫く戻っては来ないだろう。混沌をその身に刻む邪紋使いは、→

2016-02-10 23:23:01
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 一般の人間からは良く思われないし、その力で稼ぐには傭兵団へ潜り込むのが一番手っ取り早い。 兄が発ってからも、レダは自分の住む小さな家に帰ると、毎晩夕食を二人分作る。それが周りの噂にもなっていた。あの子には待ち人がいるらしい、と。そうなんです、と微笑む。→

2016-02-10 23:31:48
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 兄がいつ帰ってきてもいいように、…そして、もしかしたら、あの人が自分の元に帰って来てもいいように、と。そう、暖かい食事を用意して待ってると伝えたのに、戦が終わった日の混乱で、いずこかへ消えてしまった男のために。 →

2016-02-10 23:33:02
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 自分もその場にいたから最終決戦が激しいものだったのは知っている。もしかしたら本当に死んでしまったのかもしれない、探したけれどもその日誰も彼の姿を見たものはいなかったから。それでも食事は毎晩二人分作った。誰も訪ねて来なければ、朝に自分で残りとして食べる。→

2016-02-10 23:33:41
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 戦が終わって一週間ほどで、非戦闘員の自分は兄と共に部隊を離れ、仲間ともそれきりだ。 その日の朝一番の客には珍しく気づかなかった。カウンター上に、今日のお勧めのパンの籠を移動させようとしていたところへ気配のないその客から呼びかけられ、ハッとして目を上げる→

2016-02-10 23:34:38
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 耳にはっきり覚えている、低く響くかすれた声。 「…ただいま、レダ」 照れたように目の前のその男は言った。 籠を取り落とす。パンが床に転がる。 →

2016-02-10 23:34:58
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk ……ああ、食事を用意してたのに、家に帰って来るのかと思ってたのに、店に現れるなんて聞いてない、聞いてない……… →

2016-02-10 23:35:14
レダ@MOB @GCrepi

@hisyabun_sk 「お帰りなさい…!」 だが震える手で押さえた口から出た言葉はこうだった。言いながら、自分がカウンターの向こうへ回って駆けて行くのがわかった。そのまま、彼の腕の中に飛び込んですがりつく。 「生きてた…生きてたのね、お帰りなさい…!」

2016-02-10 23:35:23

おまけ

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