小噺②

だんけ@フリーダム @danke_ika_02

自分以外いない自室。ベッドに座り、ふと先日のデートを思い出す。二人で出かけた街は、すっかり秋色から冬色へと衣替えを済ませ、赤鼻のトナカイやモミの木が飾られていた。ギラギラと人工的なネオンに照らされた眠らない街を、二人で歩くだけで幸せだった。繋いだ手の温もりが今でも忘れられない。

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@danke_ika_02 手を握っては開いてを繰り返し、何度もあの時の感触を思い出す。我ながら気持ち悪いとは思うが、こればっかりは仕方がない。 ふとカレンダーを見れば、もうすぐやってくる12月25日。教科書曰く、12月の一大イベントはどこぞの誰かの降誕祭だとかなんとか。

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@danke_ika_02 そんな細かい事を気にすることなく街はざわつき賑わっている。人々は浮かれ、硝子越しにひと足早いプレゼントを物色してみたりする。そして、そんな大衆の中の一人が自分なわけで。はやる気持ちを抑えきれずにすでに買ってしまったプレゼント。

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@danke_ika_02 学校の帰り道、偶然見つけて一目惚れした腕時計。きっと彼の腕に良く似合うと思い、値段を見て目玉が飛び出たのはいい思い出だ。それでもこれを着けた恋人が見たくて死にもの狂いでバイトをして手に入れたそれは、今は綺麗にラッピングされ、小奇麗な袋におさまっている。

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@danke_ika_02 準備は完璧。後はホテルとレストランを予約するだけだったのに……。 俺はため息を吐きながら、軽くなった財布をそっと開く。中に入っている金額は口に出すのすら憚られる金額だ。プレゼントを奮発しすぎた、というよりも10月にかさんだ出費や他諸々。

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@danke_ika_02 最終的な結論は俺の計画性のなさで。 つまり、すっからかんなのだ。 大声を出して慌てるのはもうやった。クモイに電話をかければ「知るか」の一言で切られた。昔馴染みだというのに酷い奴だ。 幸い、渡すものはもう手元にある

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@danke_ika_02 一番大切なものは用意出来ているからいいとして、問題は当日、どうやって過ごすかだ。 瞼を閉じて恋人の姿を思い描く。自分よりも逞しい体格、高い身長、整った顔立ちに、落ち着いた性格。とても大人っぽくて、セクシーで。

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@danke_ika_02 そんな彼にピッタリと、大人のデートをイベント事に用意してきたつもりだ。 たつもりだ。 子供だと笑われないように、呆れられないように、――……嫌われないように。 それなのに、今年の最後の恋人たちのイベントでホテルもレストランも用意出来ないとなると、

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@danke_ika_02 彼は俺の事をどう思うのだろう。 の事をどう思うのだろう。 ぐるぐると不安が湧き上がって吐きそうだ。誰かを好きになるというのは、これほどまでに心がおかしくなるのか。 瞼を無理矢理開けて携帯を手に取る。こうなったら別の計画を立てるしかない。

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@danke_ika_02 クリスマス、デート、と打ち込んで検索を掛ければ大量に出てくるがどれもそこそこの金額だ。リムジンでデート、と出てきた時には携帯を全力で放り投げそうになった。 俺は焦りといら立ちを覚えながら、そっと、検索にワードを付け足す。 【学生】

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@danke_ika_02 絶対に入れたくなかったワードだ。こんなの、彼に似合うデートが出てくることがないのわかっているのに、今では藁にでも縋りたい。 必死に探していくうちに行きついた答えが【お家デート】というやつだ。だが、心が激しくそれを拒絶する。今までホテルだ、レストランだと

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@danke_ika_02 格好つけて来たのにいまさらお家デート！ （絶対に呆れられるに決まってるやん……！！） 持っていた携帯を放り投げ、両手で顔を覆いベッドに倒れ込む。 どうしようと思い悩み、ふと思いつく。 何も一日家にいる必要はない。

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@danke_ika_02 レジャー施設に足を運んで、日が暮れてから綺麗な夜景を見て、夕飯時に自分の家で食事をすればいい。 帰り道にいいお酒を買って…… 「せや、手料理や！」 がばっと勢いよく起き上がり起死回生の手段を思いついてガッツポーズをする。何故ここに辿りつかなかったのか。

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@danke_ika_02 手料理で家庭的なところをみせて、金銭面以外にも頼りがいのある男だと、彼に知ってもらうチャンスじゃないか！ そうと決まったら、25日に親父を家から追い出す計画をたてつつ、今から料理の練習をしないと。あと、レジャー施設のチケットも取らなければ。

だんけ@フリーダム @danke_ika_02

@danke_ika_02 きっとその日は人がいっぱいだろうから時間短縮のチケットも一緒に取っておこう。なるべく彼にお金は使わなせない。デートの鉄則で彼女にお金を使わないというのを俺は頑なに守っている。 絶望しかなかったクリスマスが、どうにか楽しいクリスマスになりそうだ。

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@danke_ika_02 「マール、喜んでくれたらええなあ」 勉強机の上に置いているプレゼントを見つめながら、俺は恋人の笑顔を想像し、いそいそと12月にむけて準備を始めるのだった。 おわり、