「午後0時の小説ラジオ」・「教育の偶発性について」

「午後0時の小説ラジオ」・「教育の偶発性について」
高橋源一郎
Ito1973 1337view 0コメント
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  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 11:38:46
    特別篇の予告編・昨晩の「小説ラジオ」・「『痛み』としての教育」で言い漏らしたことについて、この後、12時から……子どもたちの妨害がなければw……「午後0時の小説ラジオ」として呟くことにします。タイトルは、「教育の偶発性について」です。それでは、午後0時に。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:00:10
    「午後0時の小説ラジオ」・「教育の偶発性について」1・「まるごと(whole)と全体(total)」を区別することの意味について鶴見俊輔さんが書いた文章を引用することから始めてみたい。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:02:32
    「偶発性」2・「明治のはじめには、手ばやく強い国家をつくるために、集団として型にはめこむ教育が、小学校だけでなく、中学校、高等学校、大学に必要となった。この場合、教師は集団として養成され、教師用の教科書(マニュアル)をもって、おなじ教科書(これは生徒用)を使って…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:04:47
    「偶発性」3・「…集団としての生徒に対する。授業は規格化され、採点もおなじ基準によってなされる。生徒は、おちこぼれるものを別として均質化される。近代都市に鉄筋コンクリートの高層の建物がたちならぶように、その都市の形と相似た均質化が教育においても進行する…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:06:35
    「偶発性」4・「…集団としての生徒の数学における、あるいは英語における達成度は、規格によってはかることができるようになり、ここにひとりの生徒がいると、その生徒の位置は、達成度によって同年齢のものの中のこのくらいのものと確定することができる。それは全体(total)の中での…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:08:39
    「偶発性」5・「…位置づけである。まるごとというのは、そのひとの手も足も、いやその指ひとつひとつ、においをかぎとる力とか、天気をよみとる力とか、皮膚であつさ、さむさ、しめりぐあいをとらえる力とか、からだの各部分と五感に、そしてそのひと特有の記憶のつみかさなりがともにはたらいて…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:10:38
    「偶発性」6・「…状況ととりくむことを指す。その人のこれまでにうけた傷の記憶が、目前のものごとのうけとりかたを深めたり、ゆがめたり、さけたりすることを含む。プラトンは、知識の体系をつくったとは言え、今の日本の子どもよりも、先史時代の人に近かったから、においを手がかりとして…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:11:22
    「偶発性」7・「…記憶がたぐりよせられることがわかっていた」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:14:01
    「偶発性」8・ここでの鶴見さんの論旨は明快であるように思う。ぼくたちが受けているのは「全体(total)」を目指す教育だ。そして、その教育の本質は、マニュアルの使用である。だから、この教育は、「偶発」に対処できない。なぜなら、「偶発」は、マニュアルにかかかれていないからだ。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:17:31
    「偶発性」9・ここで鶴見さんは、以前「acumen(明察)とunlearn(学びほどき)」で紹介した、先住アメリカ人・イシとそれに対応した文化人類学者・アルフレッド・クローバーに触れる。イシは「まるごと(whole)」の文化の人だった。クローバーにはそれを受け入れる準備があった。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:19:42
    「偶発性」10・「イシとクローバーとの出会いには、偶然の幸運がはたらいている。イシにはひとりになって生きてゆくために、新しい人たちと出会う個人的必要があった。クローバーの側には、文化人類学の知識のたくわえによって、先住アメリカ人の知恵についての敬意があり、イシと出会ったときに…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:22:47
    「偶発性」11・「…この個人の並はずれた人がらにおどろくだけの直感があった。両者の出会いには、神機とも言うべきものがはたらいていた。幸田露伴が母のない娘に性教育のいとぐちをあたえたときの『そったく』(卵の中のひなが内側からつつくのと親鳥が外側から卵をわるのとの時の一致)である…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:25:18
    「偶発性」12・「…それは、娘が近所の子とおなじく、道にゴム製品をひろって風船のようにふくらまして遊んでいるのを禁じて、よく見よ、と言って男女の気配を感じることへの道をひらく、幸田露伴から幸田文へのバトンの受けわたしである。大量生産の時代の教育の退廃を批判した…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:27:33
    「偶発性」13・「ポール・グッドマンの言葉におきかえると、偶発性教育の実現である。偶然性を見てとり、そのきっかけを生かすのは、親にとってむずかしく、教師にとってさらにむずかしい。ひとりひとりの生命のむかえるその大切なときを、五〇人を受けもつ教師がどうして見わけることができるか…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:28:25
    「偶発性」14・「…しかし、むずかしいであろうという自覚をもつことは、教師にもできるのではないか」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:30:38
    「偶発性」15・「教育」とは、その個人に一回しか起きない「偶然」に立ち向かう行いだ、と鶴見は考える。それだけが「教育」の名に値するのだ。だが、そんなことが可能なのか。可能だ。そのためには、マニュアルを捨てなければならない。耳をすまして、その相手のことばに聞き入らなければならない。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:34:02
    「偶発性」16・「全体(total)」を見るのではなく、「まるごと(whole)」に敏感でなければならない。そのためには、柔軟な感覚と発想をもたなければならない。ここで、ようやく、ぼくたちは、昨晩の「おとうさん、自殺をしてもいいのか?」という子どもへの問いに戻ることができる。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:36:13
    「偶発性」17・子どものその問いは、教師用のマニュアルには載っていない。いや、そのような「問い」がありうることは載っているかもしれないが、それがいつどのような条件の下で発されるかは載っていない。そして、もっとも深刻な「問い」は、突然、回答の準備のない時にやって来るのである。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:41:17
    「偶発性」18・鶴見は、そのような「問い」、なんの準備もない時にやって来る「問い」に答えることの中に、「教育」の本質を見いだしたのだ。「教育の偶発性」とは、一度しかないチャンスに反射的に答える身体を持つことの必要性をぼくたちに訴えているのである。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:44:27
    「偶発性」19・「おとうさん、自殺をしてもいいか?」と訊ねられた時、鶴見は「してもいい。二つのときにだ。戦争にひきだされて敵を殺せと命令された場合、敵を殺したくなかったら、自殺したらいい。君は男だから、女を強姦したくなったら、その前に首をくくって死んだらいい」と答えた。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:46:39
    「偶発性」20・鶴見という親鳥は、卵の中からかえろうとする息子の、卵の中からのつつきを察知し、瞬時に、外からつつくことができた。それは、ただ一度のチャンスだったかもしれない。それを察知することができるほどに、鶴見の中には「まるごと(whole)」の感覚が充溢していたのである。
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:50:48
    「偶発性」21・「教育は連続する過程であり、相互にのりいれをする作業である。教える-教えられる、そだつ-そだてられるは、同時におこり、そして一回でおわるのではなく、その相互作用はつづいていく…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:52:36
    「偶発性」22・「小学校一年生の最初の一時間におこったことを、ある人が晩年まで考えつづけた。算術の時間にはじまりに先生が黒板に白墨でまるを書いた。紙がくばられて、みんながおなじものを書くように言われた。『できた人』ときくと四〇人のほとんどが手をあげたがひとり手をあげない子がいた」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:54:40
    「偶発性」23・「…先生はその子のそばに行ってだまって見ていて、感心していた。その子の仕事が終わるまで待って、『〇〇君はこういうまるを書きました』と言って彼の書いた紙をみんなに見せた。そこには黒のべたぬりの上に白いまるがぬいてあった。じっと感心していたとき、…」
  • 高橋源一郎 @takagengen 2011-01-16 12:56:12
    「偶発性」24・「…先生は何を考えていたのだすろうと、老人になった昔の一年生は考えた。抽象にはいろいろあるのだな、と数学的に考えていたのではないか。ただまるを写せといっても、いろいろな方法があるのだ。自分の中に、自分の出した問題がいくつもの問題にわかれてあらわれ、…」

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