『杖・悪性気・魔術』

虚構書籍
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松(#)本 @Elegy_of_Losers

魔術の近代化に伴って火力、質量、範囲の増大が有った事は周知の事実だが、その興りは『ゴーレム』からであった。 近代魔術の祖、『アダムス=L・スラスィル』が生まれる以前のゴーレムとは上級魔術師が魔術紋様を刻んで一週間も時間を掛けて魔力を注ぎ込んで作る物だった。

2015-04-09 02:35:52
松(#)本 @Elegy_of_Losers

そして作られたゴーレムは巨大で頑丈だが、それ以外に能を持たない単なる的……と言うのは近代魔術の視点であって、中世代の魔術に於いては破壊が難しく、その質量を壊すのにも苦労する『歩く城壁』と言う認識だったと言える。

2015-04-09 02:38:33
松(#)本 @Elegy_of_Losers

『歩く城壁』をそのまま『城壁』に使おうとした、と言うのがアダムスにゴーレム運用を考えさせる始まりとなったと最新の学説では考えられている。 ゴーレムは自立させる為に膨大な魔力を必要としている。だからこそ上級魔術師が何日も掛けて作る必要が有ったのだ。

2015-04-09 02:44:09
松(#)本 @Elegy_of_Losers

足を土台に、腰から上を城壁に。これによって余計な負荷の少なくなった下半身への魔力供給を少なく抑え、上半身の耐久力を伸ばす事に成功した。 しかもこの方式によって、『ディグケイブ』などの地下侵攻戦術などの対策がし易くなっている。 そして開発されてすぐに『トーチカ』へと発展した。

2015-04-09 02:53:34
松(#)本 @Elegy_of_Losers

魔術師が魔力供給によって修復するゴーレムに立て篭もり、防衛線を貼る。 地味ではあるが、非魔術師には殆ど打倒する方法が無かった。 但しトーチカは動かない。拠点防衛には役立つが、攻撃には向かないのである。 故に、次に考えられたのが『歩く爆弾』こと『ウォーキングボム』だ。

2015-04-09 02:58:58
松(#)本 @Elegy_of_Losers

この時期は『ドラゴンリキッド』が開発された時期でも有る。一定の衝撃によって魔力が励起して連鎖燃焼……つまり爆発を起こす魔導炸薬だが、高濃度魔力結晶溶液と言うのが本来の成り立ちと言うのは諸君らも知っての通り。

2015-04-09 03:06:47
松(#)本 @Elegy_of_Losers

このドラゴンリキッドをトーチカ内に保存しておく事で長期的な戦闘でも魔力切れを起こさないで済んでいたのだろう。 しかし上空からのトーチカへの魔術砲撃によって大量のドラゴンリキッドが魔力励起を起こしたらどうなるか、当然大爆発だ。 これがウォーキングボムの開発に繋がったのは間違い無い。

2015-04-09 03:09:53
松(#)本 @Elegy_of_Losers

さて肝心のウォーキングボムの戦果についてだが、実際の所これは余り芳しくない。 内部にドラゴンリキッドを溜め込んだ小型のゴーレムを敵陣に突っ込ませればその威力を存分に発揮出来たのだろうが、走破性能が低過ぎたので思うようにはいかなかった。

2015-04-09 03:14:04
松(#)本 @Elegy_of_Losers

が、「めげない、しょげない、諦めない」と言う言葉を残している通りアダムスは非っ常に諦めの悪い男だった。 ウォーキングボムの失敗に懲りず、新たなゴーレムを作る。『ローリングボム』だ。 大型のゴーレムを使用する事によって耐久性を確保、そして球状によってスピードも出る。

2015-04-09 03:21:59
松(#)本 @Elegy_of_Losers

が、これも失敗。巨大な岩の球が転がってくれば地響きで誰でも気付くし、一点集中で皹さえ入れれば勝手に爆発するのだから大して恐ろしくは無い。 だがこのローリングボム、実に馬鹿らしい事に「中に爆薬を仕込まない方が強かった」。

2015-04-09 03:27:15
松(#)本 @Elegy_of_Losers

爆発しないローリングボムは耐久性と速度と質量を併せ持つ完璧な自走兵器である。 出て来た直後には敵陣のど真ん中を突き破って阿鼻叫喚を生んだ事すら有る。 とは言え一度止めてしまえば固定はそこまで難しくも無いので、猛威を揮ったのは僅かな期間だった。

2015-04-09 03:33:03
松(#)本 @Elegy_of_Losers

失敗作、と言うかアダムス本人も考えていなかったので命名はされていない。 研究者の間ではもっぱら『不発弾』、『ダッドシェル』と呼ばれている。 兎も角としてダッドシェルの発想は良かった。その発展系として生まれたのが『ホイールシェル』だ。

2015-04-09 03:43:31
松(#)本 @Elegy_of_Losers

耐久性と質量を犠牲にして速度に特化させた車輪へと突撃させ、撹乱する。 ほぼ同時期に『カノンゴーレム』が出て来たのは偶然では無かろう。 ドラゴンリキッドによる魔術砲撃をゴーレムに行わせる技術はダッドシェルの耐久性から思い付いたに違いない。

2015-04-09 03:48:37
松(#)本 @Elegy_of_Losers

そしてホイールシェルとカノンゴーレムの技術が交わり、『カノンチャリオット』が生まれた。 ゴーレムと言う技術体系を無視すれば、この時点で自走砲が歴史に登場したのである。 開発された時点では耐久性に難が有ったが、これは細々とした技術発展によって解消されて行く事となる。

2015-04-09 03:52:21
松(#)本 @Elegy_of_Losers

さてこれから先は『バトルタンク』の範囲に入るが……今日は此処まで。 続きはまた今度だ。 ではさらば。お休め!

2015-04-09 03:54:47
松(#)本 @Elegy_of_Losers

(今回の内容は#虚構書籍 『杖・悪性気・魔術』の中身を書いてみました。正確には書籍を元とした講義の想像)

2015-04-09 03:58:38