「ニンジャズ・デン」#1・再放送Ver(実況なし)

ツイッター連載小説"ニンジャスレイヤー 第3部 「不滅のニンジャソウル/Ninjaslayer Never Dies」"より @njslyrによる再放送「ニンジャズ・デン」#1のまとめ(実況なし) 公式Twitterアカウント"NINJASLAYER/@njslyr" https://twitter.com/NJSLYR 公式Twitter再放送アカウント"NJSLYR SAYHOSO/@njslyr_r"(今後の使用はなさそう) 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「閉めろって!」「何?」「閉め!閉めー!」手振りを交えて、運転席の男は繰り返した。ブブンブーン……「聞こえねッゾコラー!」タンクトップ男は怒鳴り返した。運転席の男はドアの外を指さした。ここに至りドアが閉まらぬ原因が判明した。トレンチコートの男がスライドドアを押さえている! 10

2015-11-27 22:07:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あン?」タンクトップ男は恐ろしい顰め面を作り、ドアを閉めさせない外部者を睨みつけた。「テメ、何してンの?」「……」トレンチコート男はハンチング帽を目深に被り、その表情をうかがい知ることはできない。男は低いがよく通る声で呟いた。「タクシー。乗せてもらおう」 11

2015-11-27 22:10:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」道路側の窓ガラスが爆散し、タンクトップ男がスリングショットじみた勢いで車外へ排出された。アスファルトに頭から落ち、したたか全身を打って転がる彼を、走りこんできたタクシーが轢いた。「アバーッ!」インガオホー! 12

2015-11-27 22:13:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「……イヤーッ!」「アバーッ!」更に一人、アスファルト上へ、「威勢が良い」と書かれたTシャツの男がスリングショットじみた勢いで車外へ排出された。アスファルト上、タンクトップ男の隣に、したたか叩きつけられた。 13

2015-11-27 22:17:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

歌謡ボディミュージックが鳴り止んだ。その後、反対側のドアから、先ほどの女性が降り立った。無事である。この極限じみた体験に酔いも覚めたか、震えながら車内を振り返った。彼女はしかし、車内に向かってオジギをした。そして駆け去っていった。 14

2015-11-27 22:20:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

では、再びワゴンの車内に注意を戻そう。今やトレンチコートの男は後部座席に深々と掛け、顔面蒼白の運転者が震えるさまを腕組みして眺めている。「車を出せ」トレンチコートの男は命じた。「アイエエエエ……」SLAM!叩きつけるようにスライドドアを閉めた。「アイエエエ!」15

2015-11-27 22:23:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

白いワゴンは滑るように走り出した。「……」トレンチコートの男は無言である。運転者はそれこそ椅子にショック機構があるかのように、椅子ごと音を立てて震えている。「……」トレンチコートの男は無言である。運転者は既に失禁している。「どち……どちらへ行けば……いいですか、グスッ」 16

2015-11-27 22:26:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サーペントは同類の暗号を読む」トレンチコートの男は腕組みしたままコトワザを呟いた。「当然、貴様はこの地の『ブラッドバス・シアター』とやらの位置を知っておろう。このまま向かえ」「アイエエエエ!」運転者が再失禁した。「ブラッドバス!シアター!アイエエエエ!」 17

2015-11-27 22:28:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「場所を。知っているな」「だけど、だけど殺されッちまいます!あそこに行くなんてダメだよ……」運転者は泣き声を出した。「通、通行証なんて持ってねえ!俺、俺はギャングとかヤクザじゃねえんだよ!遊び半分なんだよ!」「遊び半分だと?」ぞっとするような声が発せられた。 18

2015-11-27 22:32:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「遊び半分でファック・アンド・サヨナラか。犠牲者もたまったものではないな」「アイエエエ!」「どのみち私に人倫を説く資格などない」トレンチコートの男……フジキド・ケンジ、またの名をニンジャスレイヤー……は、独りごちた。運転者は悲鳴を上げながら車の速度を上げる。19

2015-11-27 22:36:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「このまま向かえ」「助けてください」運転者は言った。「真人間になります」「……」ニンジャスレイヤーは無視した。ゴウ……ゴウ……広告ポールの傍を通過するたび、割れ窓の外で風が唸る。やがてワゴンは脇道へ曲がり、胡乱で小さい商業区画を抜けて、無個性でだだっ広い大通りに合流した。 20

2015-11-27 22:39:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

広さのある庭、同じ形をした一戸建ての建物とマンションとが交互に並び、数区画ごとにガソリンスタンド。電子喫茶。そのリフレイン。サキハシ知事の治世、急速に拡がっていった光景だ。ネコソギ・ファンド社によるコケシマート買収が、その流れに更に拍車をかけた。 21

2015-11-27 22:42:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コケシマート傘下のコケシモールは、周辺地域にひと通りの高品質で明快な、迷いのない、シンプルな充足をもたらす。泥縄の個人経営では到底提供できぬサービスを。人々はモールに勤め、モールで消費し、モールで恋愛し、ねぐらに帰ってゆく。モール一つ一つが、いわば、独立した経済単位だ。 22

2015-11-27 22:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

催眠的な景観リフレインの中を白いワゴンは進んでゆく。「もしかして、パスあるんですか?あんたヤクザ戦士なんですか?」運転者が恐る恐る質問した。「違う」ニンジャスレイヤーは否定した。そして訊き返した。「それほどまでに恐れるブラッドバス・シアターとは、実際どのようなものだ」 23

2015-11-27 22:48:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「知らないで行くのかよ……あそこによ……」「用があるから行くのだ」「アイエエエ……」運転者はいまだ震えている。恐れだ。ブラッドバス・シアターへの恐れは、突然現れ実力を行使したこの男をも上回るか。「あそこはヤバイんだよォ……法律は……法律はねえんだよ……」 24

2015-11-27 22:53:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン。斟酌の余地無き非道犯罪に手を染めるこのヨタモノの口から「法律」とは。何たるナンセンスか。それほどに異様な何かが、ブラッドバス・シアターにはあるというのか。通過する街路灯の明かりを受け、ニンジャスレイヤーはハンチングの下で無感情である。恐慌寸前の運転者とは対照的に。 25

2015-11-27 22:57:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、黒々とした山のシルエットが遠くに見えてくる。その麓付近、やや高台、曇り夜空にライトを投げかける巨大な建物らしきものを、ニンジャスレイヤーは確認した。ノイシュヴァンシュタイン城じみた、妙な建築物を。「あれです。行きたくないよ」運転者は泣いた。「行きたくない」 26

2015-11-27 23:01:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

白いワゴンはしめやかな走行を続ける。ニンジャスレイヤーは腕組みし、物思いに沈む。「ブラッドバス・シアター」……彼はこの物騒な名称を掲げる謎の無法地帯へ今から赴き、ヨナヨという名のオイランドロイドを救出せねばならない。 27

2015-11-27 23:05:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがて、ゆるゆるとワゴンは停止した。唐突に没個性な景観から抜け出し、バンブーの林を前にしていた。運転者ははばからず泣いている。「エッヒ、アグッ、もッ、も進めません」運転者は言った。「も、無理、です、え死にたくない無理……無理だよォ……」「……」フジキドの目が闇に光った。 28

2015-11-27 23:08:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スライドドアが開き、ニンジャスレイヤーがしめやかに車外へ降り立つ。運転者はハンドルを抱えて泣き続けている。「これいじょ、進、め、ないよォ……殺されるの、いやだよォ……」ニンジャスレイヤーが力任せにドアを閉じると、泣き声は中に閉ざされた。曲がり道は竹林に消えてゆく。29

2015-11-27 23:11:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは歩き出した。足の下でザクザクと落ち葉が音を立てる。前方、この竹林斜面を上がった先にある喧騒を、彼のニンジャ聴力は既に捉えている。ブラッドバス・シアターの住人が発する、宴じみたサウンドだ。 30

2015-11-27 23:15:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ヨナヨは特別なオイランドロイドだ)依頼者であるソゴ・セシモトは、ニンジャスレイヤーとの探偵契約の成立後も、厳しく懐疑的な態度は崩さなかった。前金は5%。残りが成功報酬である。(ヨナヨは絶対に表に出してはならなかった。絶対に。信じたくない事態だ)32

2015-11-27 23:21:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

実際、ソゴのセキュリティは厳重であった。箱入り娘ヨナヨ。知りたがりのハッカーの脳を無慈悲に焼く偏執的な電子攻性プログラムと24時間体制のアサルトライフル警備兵。電子・物理両面の保護下に置かれた彼女を拉致する事など、できはしない……盗人がニンジャでもなければ。 33

2015-11-27 23:25:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ヨナヨは特別だ。だからカネになる!技術革新……美的……夢を当てにした糞共のカネだ!役立たずのセキュリティも。この部屋も。エエ?貴様に出したそのオーガニック梅干しも!全部そのカネだ。あれがいなくなれば俺はおしまいなんだ。わかるか!)その時のソゴの目は、狂気の熾火めいていた。34

2015-11-27 23:29:17