いきものがたり『第5回』

水野さんのTwitter企画です。
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水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

2016年3月15日の、デビュー10周年にむけて。 連続ツイート企画 【いきものがたり】 不定期更新です。 (前回までのツイートは水野のアカウントの「いいね」からご覧頂けます。)

2015-11-23 10:32:22
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

『第5回』 今日の1枚。 サンダースネイク厚木、2003年6月のライブスケジュールが書かれたチラシ。初めてのライブを行う、いきものがかりの名前がある。 pic.twitter.com/HanvHjB4sB

2015-11-23 10:34:37
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水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(84) やっと活動を始めることを決心してくれた吉岡。物事の歯車は、それまでのことが嘘だったみたいに、くるくると動き出した。水野と山下は、浪人時代に学習室の休憩スペースで語り合っていた”計画”を、少しずつ実行に移していく。

2015-11-23 10:36:00
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(85) まず最初にしたのは高校時代のバンド仲間に声をかけること。「自分たちのバックバンドをしてくれないか」”サポートミュージシャン”という言葉をまだ知らなかった。まだライブハウスで一度もライブをしたことがないのに、いきなりバックバンド。そんな無茶なことを考えたのには理由がある。

2015-11-23 10:38:41
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(86) 水野と山下で決意していたことがあった。この道に挑むのなら「路上ライブのスタイルを、捨てよう」そう二人で決めていた。

2015-11-23 10:40:16
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(87) もうその頃には、ゆずのお二人は確固たる地位を築いていて、そのあとに出てきた路上出身グループも、実力のあるひとたちを残して淘汰されはじめていた。そもそも地力のない自分たちが、ゆずさんと同じようなスタイルで、世に出られる気がしなかった。

2015-11-23 10:42:46
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(88) 路上ライブのアコースティック編成を押し出すかたちでは自分たちは世に出られない。J-POPや歌謡曲が好きで、本来は様々なタイプの曲をつくりたいのに出自である路上スタイルに固執したら、それが十分にできない。当のゆずのお二人でさえ、多様なサウンドスタイルにもう踏み込んでいた。

2015-11-23 10:45:10
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(89) ゆずという大きな存在が登った山を、後から登ろうとしても勝てるわけがない。自分たちの山を、自分たちの手でみつけなければ…。演奏は素人同然、つまるところ男子二人がつくる曲と吉岡の歌しか武器はないのだから、それを最大限に生かせるスタイルをみつけなければ。そう思っていた。

2015-11-23 10:48:22
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(90) どんな曲でも可能になるバンドスタイルになれないか。でも自分たちが3人であることは崩したくない。どうしようとなって、そこで恥ずかしさを知らない奇想天外なアイディア「バックバンドをつけよう」という言葉が出てきた。素人考えの勢いで、ただ突き進んでいるだけだったと思う。

2015-11-23 10:50:36
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(91) 高校時代のバンド友達に声をかけると、快く引き受けてくれて、すぐにドラム、ベース、キーボードのメンバーが集まる。ついでに高校時代、エレキを多少は弾いたことがあるからという理由で、自分が”アコギ”から”エレキ”に転向することになった。もう、恥ずかしいくらい、ざっくりしてた。

2015-11-23 10:53:27
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(92) そのとき集まってくれた友人たちはそれから約1年、ほぼボランティアで活動を助けてくれた。練習スタジオの料金を割り勘で払ってくれたりまでした。3人きりだった僕らに、まず最初に手を差し伸べてくれたのは彼らだ。彼らがいなくては何も始まっていない。本当にすべてが、始まっていない。

2015-11-23 10:56:19
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(93) ちょうどその頃、地元に新しく出来たライブハウスがあった。駅前でチラシをもらったとかでその存在を知った吉岡が、事前に電話で問い合わせてみたら、対応がすごく丁寧でよかったと言う。では、そこを訪ねてみようとなって、山下とそのライブハウスを訪れた。

2015-11-23 10:57:33
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(94) サンダースネーク厚木。名前のいかめしさそのままに、そこはバリバリのハードロックスタイルのライブハウスだった。受付の壁一面に、無数のビジュアル系のバンドポスター。店員さんはみんな長髪。店内で初めて会話した店長だという男性は、金髪でシルバーアクセサリーをしていた。

2015-11-23 10:59:38
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(95) 「あのぉ〜すみません。ライブしたいんですけれどぉ〜」「おぉ、ライブ。いいねぇ。君たち、学生さん?お友達のバンドとかはいるかな?」「あぁ〜いません」「だと仲間のバンドをみつけるか、うちのブッキングの審査を…」「あぁ〜僕たちだけでライブしたいんです」「ん?え?」

2015-11-23 11:00:53
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(96) 一応、説明しよう。通常、インディーズのバンドというのは集客が少ないところから出発するのが当たり前で、自分たちの客だけではライブが成り立たない。だから仲間のバンドを呼んで自前でイベントを主催するか、ライブハウスのブッキングでチケットノルマを果たしつつイベントに出るか。

2015-11-23 11:02:50
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(97) ようは「対バン」と呼ばれるかたちで、ライブをこなしていくのが、最初のスタートラインなのだ。逆に、自分たちだけで成立させるライブのことを「ワンマンライブ」という。活動したてのバンドが、まずひとつの目標にするのが、この「ワンマンライブ」の実現だ。

2015-11-23 11:04:17
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(98) だから当然、ライブハウスの店長は、突然やってきたどうみても素人同然のあどけなさ残るこの学生たちが「自分たちだけでライブやりたいんです(=ワンマンライブやりたいんです)」と言い放ったことに、目がテンになってしまったのだ。

2015-11-23 11:07:55
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(99) ただ、店長は優しかった。ものを知らぬ学生なのだろうと、瞬時に察してくれたんだろう。「き、き、君たち、対バンってシステムは知ってるかな?」「知らないっす」嘘だと思うかもしれないが本当の話である。僕らは、大人の対応をしてくれた優しい店長にそう言った。だって知らなかったから。

2015-11-23 11:09:04
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(100) 「き、き、君たち、ライブハウスでライブしたこと、あるかな?」「いや、ないです。はじめてです」「そ、そ、そうだよね」「路上ライブならしたことあります」「路上?…あぁ、駅前とかでやるやつかな?」「そうです」「う、うん。路上とライブハウスは違うからなぁ…あはは…」

2015-11-23 11:10:45
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(101) 「あ…いや。もう一度聞くけど、えっと、君たちだけでライブをやるってこと??」「あ、はい」「そ、それは難しいんじゃないかなぁ、あはは。まずは対バンで他のバンドと…」「え、だって、ミスチルだって、ドリカムだって、ひとつのバンドでライブやってるじゃないですか?」

2015-11-23 11:12:31
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(102) 信じるか信じないかは、あなた次第…。ではない。本当に僕らはこのセリフを吐いたのである。知らないとは恐ろしい。知らないことの強さはすさまじい。若すぎて、バカすぎた。世の中のバンドマンの誰もが呆れかえるこんなセリフを吐いた幼き僕らに、キレなかった店長は優しすぎる。

2015-11-23 11:16:20
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

(103) バカだった。が、しかしバカなりの自信が、なぜか僕らにはあった。「う、うちのハコは、キャパ300人だよ…?300人もお客さん集められないでしょ?」「いや、大丈夫だと思います」その数ヶ月後、優しい金髪の店長は、この恐ろしく世間知らずの若者たちの、奇跡を見ることになる。

2015-11-23 11:18:36
水野良樹( いきものがかり / HIROBA )official @mizunoyoshiki

今日はここまで。乱文、お粗末様でした。次回は『第6回』。

2015-11-23 11:19:09