【夢を脱ぎすてて】 福間健二 #k2fact130

福間健二 @acasaazul

ぼくは歩く。ぼくは思う。息のリズムが乱れる。舗道の石のあいだに伸びる草たちの発信を受けそこなう。茶色、枯れてそうなるのではなく、武器の色に。だから、なにか書きたいんだけど、きょう、迷惑文学、うるさい音を出す羽根のホコリを払うのも一苦労だ。（夢を脱ぎすてて１）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

自分の色に苦しむよりも自分を見失った不快な音を出すほうがいいのか。雨、朝、言えなかった「いいえ」の、冷たい膜がおおう目と距離からの相互的受容。泥にまみれて鼻をすすった。ずるいぞ、風。この子がたどりついた涙と矛盾を読みとって雨と遊ぶなんて。（夢を脱ぎすてて２）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

半分の世界、半分の変更、半分の肯定の、さらに半分の何を説明するのか。こういうお母さん。そういうお父さん。黒い服の、効果。それがどうしたというのだ。呼び出され、横切り、ぼくは思う。消失点。晴れてもとくに欲しいものはないが、ぼくは消えないよ。（夢を脱ぎすてて３）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

きみは呼ばれていない。ぼくは選ばれていない。でも、恋はする。ごめんなさいとは言わない。薄着のままカードを持たされて待つ人たちの足もとで、入口と出口を記憶する板や缶が転がって音を立てるが、知るかよ。きょう死んだ惑星の耳はあしたも死んでいる。（夢を脱ぎすてて４）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

おなじ死、でも帰る方法がちがう。方法はちがうが、手段と目的に選択の余地はない。死と足跡が重なる愛、自分から動く。その死によって、その愛によって、あらゆるＮＯの思わせぶりな断線の向こう側に出ること。それをあきらめない。自分ではなくなっても。（夢を脱ぎすてて５）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

この傷。いつから？ 生まれる前から。閉ざされていた通路、突きあたる無感動、スプーンでかき混ぜられる液体の、要求する権利。鏡を見ない。だれにでもなれなれしくする。台所で泣く。豚肉と白菜を買ってくると言った。今夜は冷え込みそうだとも言った。（夢を脱ぎすてて６）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

受信装置、できるのは心の鍵を盗んで脱走すること。暗い室内の、シーツの皺の、血を吸った脱脂綿の、疲労する線をいくつも飲み込んだ砂漠を通って。やっちゃん、笑った。黄色い消失点の反対側。泥靴と引換券。何がもらえるか。行ってみなければわからない。（夢を脱ぎすてて７）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

すみません。やっちゃんはそう言った。すみませんよりもありがとうの方がいい。受け身の確率ではなく、敵意と引き換えた「愛する」だけが薄暮の青い遺書のなかに線をよみがえらせる地理をひらくのだ。欠落したフレーズ。思い出すな。だれにも思い出させるな。（夢を脱ぎすてて８）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

哀愁を硬いボールにして投げる。やわらかい「もう帰らない」のなかに。回答は、育てられなくても育つ新しい種族。ジャンルも身元確認もいらない。恋はする。さわる手にさわりかえす。威嚇された子犬みたいに冗談音楽で踊ればいいと思ったら大まちがいだぞ。（夢を脱ぎすてて９）#k2fact130

福間健二 @acasaazul

ぼくは歩く。息のリズム、乱れても、実験散歩。金井さんちの「詩が一番にあるのではない。生活があるのだ」というモーターを盗んで突きあたりを右に。急ぎ足になって隠しきれないから言うけど、起点を忘れたきみとの生活が続いている。かなり大変だけどね。（夢を脱ぎすてて10）#k2fact130