【道のはずれに】福間健二 #k2fact287

福間健二 @acasaazul

大谷翔平の特大ホームラン。それを上まわるような若い友人の快挙。夕食には祝蕾のサラダ。うれしいこと、こんなにあるのに、刺さる悲しみ。暮れてしまうと黙り込む景色が再認させるそれを抜きたくないぼくがいる。負ける。人は負ける。もうひとりの自分に負けるのだ。（道のはずれに１）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

ふた粒の地獄。顔を地面につけるまでしてひと粒を回避する作戦、やりぬいたと思うと、もうひと粒が入り込んでいる。こんなに、簡単にあいてしまう蓋。患部だろうが蕾部だろうが何をしてもいい曇りガラスごしの、どぎまぎ。折れた光線を生半可な説明がさらに折ったかな。（道のはずれに２）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

わかっていたはずだ。そうじゃなくても、この夕暮れの底に体をおいてみれば、わかるはずだ。闇、貧困、痛いところをとくに隠さない地域。自分の力で沈んでいる子どもたち。フィクションでも、いのちは大切に。ぼくは言う。肩甲骨をつばさに。速度、だれかと作るものだ。（道のはずれに３）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

放置された織物で遊ぶな。ポケットに隠れる反抗の切れっぱなし。夢を脱ぎすてたかれらとともに感じる。見えるものと見えないものを同時に。わかりたい。細胞、どうして県名が付いているのか。でも、好きな歌がやってくる。なにかの直前というわけじゃないだろうけど。（道のはずれに４）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

わざわざそれを言うんだね。いきなりだけど、ニーチェの言うことは、そう念を押したくなる。偉大な人は何を恐れないとか、平気でどうするとか。ぼくは恐れる。いろんなものが怖くなる影絵のなかをとぼとぼ歩く。でも、何が割れてさわぐのか。この割れてしまった世界で。（道のはずれに５）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

イエロー、レッド、ブルー。空気が明るく動いて、変化する色に染まる、これからおこることの一面。遮断機があがり、性別あるものは女性形が踊り、親切な女性運転手のバスが通る。死の直前にやっと大事なことがわかるという物語に抵抗して。あなたはたしか山田さんでは。（道のはずれに６）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

見知らぬ人に挨拶される。たいていの人はだれかに似ている。でも、不安な音楽が鳴る。まだ寒い季節に、あるいは惨事のあった土地で、行方不明のだれかに似ているときはとくに。猫や鳥の声もきこえないのに、だれの庭。凍った川のむこうの仕事から帰ってこない人々の庭だ。（道のはずれに７）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

あの楽しい夜に、どんな体制の夢とも関係ないドアを通りぬけて。入っていくなと言われるから。破れたストッキング。通じないフリーダイヤル。ざらざらした表面の下の事実を引き出して数えることのできるものは数える。問題は数じゃないとわかっているが、数えてしまう。（道のはずれに８）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

元気になるまで横になっていなさい。わかっているが、強風に吹きまくられた。苦痛の蛇をまたぐための記号が消えて、背後は崖だ。ここなのだろうか。月曜の朝から呼ばれていた死の国。これも消えたそうな寒い瞳に問いかける。答えてもらえないが、ぼくはまだ生きている。（道のはずれに９）#k2fact287

福間健二 @acasaazul

道のはずれに日が沈み、求めあう手、キス、胸のふるえなど、景色に点在する残像が、夢見る村を探しはじめる。自分の役割がわからなくなってもドアや窓はすすり泣いたりしない。だから、正直で思いやりのある人になりなさい。ぼくのなかで休む少年にそう言ってしまう。（道のはずれに10）#k2fact287