「指示待ち人間製造機」としての孔明
- ShinShinohara
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孔明なくしては三国志は語れず、孔明がいなければ蜀が三国の一角を占めることもなかったろう。しかし孔明だったから、蜀は天下をとれなかったのかもしれない。それは、孔明がどうやら「指示待ち人間製造機」だったからだ。
2015-12-03 22:00:21孔明の智謀はまさに感動ものである。赤壁の戦いでの読みの確かさ、打つ手の素晴らしさは神がかり的。しかし魏の司馬懿と最後の決戦に臨んだとき、完璧にも思える孔明に、致命的な欠陥があったことを示す描写がある。
2015-12-03 22:02:59司馬懿は孔明から寄越された使者にそれとなく孔明の仕事ぶりを訊ねた。すると「非常に細かい業務まで自分自身で指示を出している。そのために毎夜遅くまで執務している」と答えた。下の者に任せればよいことさえ丞相である孔明が指示していると聞いて、司馬懿はほくそ笑んだ、という描写である。
2015-12-03 22:05:39孔明はこの少し前、蜀に人材がいないと嘆いているシーンがある。劉備玄徳が生きていた頃には関羽、張飛といった豪傑たちがいたが、玄徳亡きあと、急速に人材が失われたと嘆いたのである。その理由に、魏は巨大な国だから人材が豊富だが、蜀は小さいから人材も少ないと言うのだ。
2015-12-03 22:08:51しかしその「言い訳」には矛盾を感じた。劉備と一緒に蜀を攻めたとき、意外に人材が豊富で容易に攻め落とせないことに驚いているシーンがある。人材が豊富だった蜀なのに、どうして劉備の死後、人材がいなくなってしまったのだろう?
2015-12-03 22:10:52これに対して魏の司馬懿は、三國志では孔明に負けっぱなしだったが、子どもは司馬懿に劣らず優れた人物に育ち、やがて魏を乗っ取り皇帝となるる。部下に人材も数多く、孔明と好対照なのだ。なぜ世界史上もっとも優れた軍師として描かれる孔明に人材がいなくなり、司馬懿には逆に人材が育ったのだろう?
2015-12-03 22:14:17その答えの描写が、司馬懿との最後の決戦にあるように感じられた。司馬懿は部下に仕事を任せた。孔明は部下を信じられず、すべて自分で事細かに指示を出さずにはいられなかった。孔明はあまりに優秀すぎて部下の欠点が見えすぎ、自分で指示を出した方がマシだと考える人物として描かれたのだ。
2015-12-03 22:16:50孔明のように、優秀すぎると人材が育たず、司馬懿のように部下に仕事を任せられる人物だと人材が育つ。これは「指示待ち人間」を考える上で、大きなヒントになった。
2015-12-03 22:18:33考えてみると、劉備玄徳が生きていた頃は人材が溢れていた。孔明ももちろんその一人だが、関羽、張飛、趙雲といった、一人でも驚くのに三人も豪傑がいた。しかも軍師は孔明だけでなく、「どちらか一人いれば天下がとれる」と言われた龐徳まで劉備の元に馳せ参じた。
2015-12-03 23:44:15劉備は人材を集めるばかりでなく、人材を育てる不思議な力があったのだろう。劉備は部下を信頼することが篤かった。部下は感激し、劉備のために必死になって働いた。劉備が生きている間は人材が豊富にあり、孔明もそのもとで思う存分腕を奮えた。
2015-12-03 23:46:25しかし劉備がいなくなって孔明は亡き劉備の悲願を達成しようと必死になりすぎたのだろう。司馬懿との最後の決戦の時にはもはや部下に細かい仕事も任せることができないほど完璧主義者になってしまった。孔明の指示は的確だった。だからこそ蜀は「指示待ち人間」だらけになり、人材がいなくなったのだ。
2015-12-03 23:50:01