- yorui_yozora
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【告知】本日より、 #ritspen にてリレー小説します。始まりは @itsukinyo からです。最後は25日の18時です。ラストは18時以降に私が書きます。連投は3回まで。部員でなくとも参加可能! 連投でなければ何回でもどうぞー。タグをつけることをお忘れなく!
2011-01-18 18:52:44外は雨だった。一昨日の夜から降り続く雨にため息が出る。あまりに降り続いていて外に出るのも億劫だ。流石にそろそろ食料がなくなりそうだし、読む時間がなく積みっぱなしだった本もつきそうだ。読んでいた本にしおりを挟んでから立ち上がり、窓から外を眺めた。 #ritspen
2011-01-18 20:52:01雲は厚く外は雨音しか聞こえてこない。こんな空の下外で出歩くのは余程の物好きしかいない。ふと時計を見るともうお昼だった。雨のせいで時間の感覚もわからなくなる。ふうとため息。#ritspen
2011-01-18 20:57:18お昼、何食べようか? そんなことを考えながら、冷蔵庫の中にチーズぐらいしか無いことを思い出す。外に買い出しに行こうにも雨が降っているし、もういったいどうしたものか。今日三度目のため息をつこうとしたところで、ふと窓の外に人影が見えた。#ritspen
2011-01-18 21:26:57最初は気のせいだと思った。なぜなら、傘も差さずにその人は雨の中に立っていたから。だが、そこにはやはり人がいる。小さな雨粒を受けてずぶ濡れになりながら何かを探しているようにも見えるし、誰かを待っているようにも思える。好奇心には勝てなかった。私は傘を握って外に出た。 #ritspen
2011-01-18 22:38:52細雨は靄をつくって視界を曖昧にする。彼は塀に寄りかかるように立っていた。しかし首を曲げ目線は右、道路の奥に差し向けられており、私が近付いてもこちらを向くことはなかった。どうしたものかと思っていると、彼は突然呟いた。「さあ来るぞ。」辺りは一瞬にして闇に包まれた。 #ritspen
2011-01-19 01:35:31いったい何が起こったかは分からないが一瞬にして闇につつまれた私の視界の中にも小さな光が見えた。なんなんだこれは? 混乱している頭で思考を必死に巡らせる。ライト? 猫の目? そんなことを考えていると私の体に鈍い衝撃が訪れた。 #ritspen
2011-01-19 16:21:23「……っ!」察知した空気の流れにより、防御体勢をとる。右肘と左膝で脇腹を守った。鈍い衝撃に体が持っていかれ――流れる体でなんとか上下、天地の判別を保ちつつ、左手、痺れて感覚の無い右手とは逆の手で地面をつかむ。片手バック転。 #ritspen
2011-01-19 18:40:14体勢を立て直し、姿勢を低くする。傘を手放してしまったせいでびちょ濡れだ。おまけに手のひらは泥まみれ。「へぇ、ずいぶんと器用な動き方をするんだね」彼は壁から背を離しこちらへと歩み寄ってくる。あまりに無防備な彼に向かって言葉が勝手に出る「ちょ、あぶな」「合格だ!」 #ritspen
2011-01-19 20:57:00「え?」私が口籠っていると彼は続けた。彼は、背は私より少し高いくらいで痩せ型だった。「さっきの衝撃に耐えられるとは予想以上だったな、そんな華奢な体なのに」雨はもう止みかけていて潮の匂いが鼻を掠める。えっ潮?辺りを見回すと住宅の隙間から海が見えた。…ここは何処? #ritspen
2011-01-19 23:46:30「君は選ばれたんだ」そんな声が聞こえた。けれどその言葉は私の耳を素通りする。雨音はもう聞こえない。代わりに聞こえるのは波の音。隙間から見えた海、それは一瞬で私の視界を飲み込んで。気づくと私は砂浜の上にいた。空は雨の降る気配なんて欠片もない青空で。私は彼と三角座り。#ritspen
2011-01-20 01:08:50潮が満ち始め、心が平静を取り戻した所で私はようやく口を開いた。「此処は何処で、君は誰で、さっきの暗闇は、合格とは、選ばれたとは一体何なんだ?」落ち着いたとは到底思えない質問の連続。彼は少し間を置いて言った。「まずは俺の話を聞け」 #ritspen
2011-01-20 03:33:54「そう、君は特務機関のエージェントに選ばれたんだ。俺は言うなればスカウトマンってとこだね。君はこの暗闇のどこかに潜む¨けだもの¨と戦ってもらう」突拍子もないことを言っているのに、彼の声は途方もなく淡々としていた。 #ritspen
2011-01-20 12:19:29「暗闇…? けだもの…? 一体なんだというんだ」私の頭は疑問に支配される。男は片手を上げ、落ち着けと仕草をする。この異常な状況を楽しんでいる。「ひとまず場所を変えよう。またけだものが来てはいけないから」男は歩き出したので、私も付いて歩く。腹の虫が鳴いた。 #ritspen
2011-01-20 23:32:17「そうそう、君のことはいろいろ調べさせてもらったよ。浅間・W・命(みこと)。英吉利人の父を持ち、生まれはウェールズ。7歳の時に日本に来てからこちらで生活している。母は格闘家の家系。4歳の時にチェンジリングに遭ったことがある……とね?」#ritspen
2011-01-21 00:43:10砂がさくさくと音をたてて鳴く。穏やかな海を横目に見ながら私は男の背中を追いかけ歩く。三十分ほどさくさく歩いたところで、私の腹が音をあげた。「大きな音をたてるな」「腹が鳴るのはしかたないだろう」「大きな音をたてるとな、けだものがくるんだ」「へー」「そらきた」「え?」 タイミング!
2011-01-21 00:44:26彼は初めの印象によらずよく喋った。私の出生はよく言い当てていたしチェンジリングなどと私でさえ知らないような奇怪なことも言っている。それが彼の虚偽なのか私が単に知らないだけなのかは全く分からなかったが空腹のためにもうどうでもよかった。ただ冷蔵庫のチーズを思い出した #ritspen
2011-01-21 01:09:22チーズが口の中で蕩ける。これは私の妄想だ。しかし、旨い。旨いのだ。それをリアルに私は感じていた。食べたい衝動。「おい」彼が私に呼びかけた。「どうした?」食欲が――。彼がおいしそうに見える。食べたい。かじりついてその肉を――けだものは私だ。けだものは私の中に――。#ritspen
2011-01-21 01:20:04食欲が亢進する中で、私は少年院の頃のことを思い出していた。当時は母親譲りの無鉄砲で周囲の人間を傷つけていた。湧き上がる感情を抑制出来ず、思いのままに行動していた。あの時の記憶が蘇る。なぜこんな状況で…。遠のく意識の中で心は闇に沈んでいった。 #ritspen
2011-01-21 05:33:00私が選ばれた?スカウト?彼は質問に答えたつもりだろうが私の中のわだかまりは食欲に誤魔化されただけで一向に解消されていない。私が考えていると彼は急に立ち止まった。「ここだ。」そこは何の変哲もない砂浜に見えたが薄くミステリーサークル、いや魔法陣の様な円が描いてあった #ritspen
2011-01-21 05:52:40「我々の戦う“けだもの”というのが一体なんなのか、それは現在においてもわかっていない。ただ奴らは不規則で表れ、人を喰う。いや、喰うと言っても物理的に捕食するわけではない。その人の記憶や思い出を喰う」日本では貘と呼ばれているね、と彼はつけ足した。 #ritspen
2011-01-22 10:46:10「でだ、まあ簡単に言ってしまえばこの魔法陣はその”けだもの”との接触を可能にする素敵な装置なわけだ。“けだもの”は人間とは別次元の存在だ。だから人間は触れることが出来ない。だからこれを使って触れるようになって戦うのだけど」いいよどみ、「もちろんデメリットもある」#ritspen
2011-01-22 11:01:32