【ミイラレ！第二十五話：蠅の王のこと】（原文のみ）

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そ、そうなんだ……？」トリルがなにに対して慌てているのか、四季にはよくわからない。ニコールが振り向いた。「まったくトリルは仕方がないな。彼を見たまえ。なにも動揺していない。やましいところでもあったかな？ん？」「うるせぇーっ！」トリルの拳は虚しく空を切った。50 #4215tk

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「いやまったく。騒がしくて申し訳ないね」「うわっ！？」四季は思わず仰け反る。すぐ目の前にニコールが現れたからだ。普通に立っていては目線が合わせられるはずもないので、どうやら宙に浮いているらしい。「トリルは見ての通りお子様だから……まあ大目に見てくれたまえ」51 #4215tk

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シューッ、と鋭い呼気。トリルだろうか。おかしそうに笑いながらもニコールは四季の目を覗き込んでいる。「しかしまあ、珍しい人間だな君は。とても興味深い。どうだろう、左腕の一本ばかり献上してみる気はないか？」「えっ……」「ニコォォォール！いい加減にしろこの害虫ッ！」52 #4215tk

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キュゴン！ニコールの後頭部一歩手前で小規模な爆発が起こる。が、虫の羽音のような響きがそれを掻き消した。「おいおいトリル。仮にもここはお前の住まいだろう？火遊びはよくないな」嗜めるように言うニコールの背から生えるのは二対の翅。上側の翅には髑髏の印が刻まれている。53 #4215tk

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「クソが！表に出ろ、焼き尽くしてやる！」「ははは、やなこった」朗らかに笑ったニコールの姿がまた消える。一瞬後、背後にしがみついてきた何かに四季は身を強張らせた。「ほら人間くん。ボーッとしてないで早くトリルを諌めてくれたまえ」耳元で悪戯っぽく囁く声。ニコールだ。54 #4215tk

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全身から異様な蒸気を放ち始めたトリルから距離をとりつつ、怜が目を見張る。「……ベルゼバブ。実際にこの目で見る日が来るなんて」「然り。君は幸運だぞお嬢さん。俺がこうして世界に立つときというのは、たいていその世界を滅ぼすときなのだからな。今回は、うむ、特例である」55 #4215tk

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四季の背にしがみついたまま蠅の王は言った。「特例ついでに何か美味いものが食いたいな。店に案内するなり作るなりしてくれたまえ。無論、文字どおりの君の献身も喜んで受け入れよう！」「それはちょっと」いよいよ危険な瘴気を放ち始めたトリルを身ぶりで宥め、四季は考える。56 #4215tk

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ひとまず、またヒルメたちのところに行って確認する必要があるだろう。今回は何しろ人の命がかかっている……早急になんとかしなければ。あととりあえず、この小さな悪魔を落ち着かせるために夕飯をどうにかしたほうがいいかもしれない。とにかく、薫は助けなければ。57 #4215tk

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【ミイラレ！第二十四話：合いの子のこと】終わり #4215tk