【ミイラレ!第二十六話:赤帽子の話】(実況付き)
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薫の見舞いに行った翌日。学校を終えた四季はその足でヒルメたちの神社へと向かった。「奴が蘇っただと?」最初は笑顔で出迎えてくれたヒルメの顔もすっかり険しくなっている。「馬鹿な、と言いたいところだけれど……被害者が出てしまっているのなら認めざるを得ないか」1 #4215tk
2015-12-14 20:06:03考え込み始めたヒルメに、四季はおずおずと尋ねる。「あの……その怪異ってどんな奴だったんですか?」「ん?ああ、怪異基準で見れば取るに足らない奴だよ。脅威の度合いで言えば」と、彼女は四季の隣に目を向けた。凄まじい勢いで煎餅を貪り食っている小さな悪魔に。2 #4215tk
2015-12-14 20:09:21「そっちの悪魔とはまるで比べものにならないくらい低い」『心外だな』食べるのを止めないまま悪魔……『蠅の王』ニコールが返事をする。いったいどうやっているのか。呆れた四季の目の前で、その背から生えた二対の翅がわずかに振動する。『この世界に俺を上回る怪異などいないよ』3 #4215tk
2015-12-14 20:12:13そんなランクの低い怪異がなぜ回復阻害などという極悪な能力を……? #思い出せる限り悪魔クラスでないと所持者いないぞ #4215tk
2015-12-14 20:14:38成る程、羽音で会話もできるらしい。器用だなあ、と四季は半ば感心してしまう。煎餅を食べ終え、緑茶を飲んでいるニコールの前にさらに煎餅が置かれた。イナメだ。「力を縛られてるこの状況でも、って意味よ、蠅の王様。それにしても本当よく食べるわね!」呆れたように言う。4 #4215tk
2015-12-14 20:15:19『なにを言う。俺がこうして大人しくしておるのも、この世界にまだ食ったことのない旨い物があるからなのだぞ?』「その旨い物の一つにうちの煎餅が数えられるわけね。ありがたい話だわ、まったく」再び煎餅に手をつけ始めたニコールを見て、イナメが溜息をついた。5 #4215tk
2015-12-14 20:18:18その様を胡乱な目で見ていたヒルメが、気を取り直したように四季へ視線を戻した。「……えーと、どこまで話したっけ?ああ、そこの悪魔と比べたらまるで相手にならない怪異だった、ってとこまでか。うん。本当つまらない怪異だったと思うよ」「つまらない?」四季は首を傾げる。6 #4215tk
2015-12-14 20:21:16「……というと人間には失礼か。とはいえ、私としてはそう言いたくもなる。あれにはまるで自我というものがない。出会った人間をただ機械的に殺すだけの存在だった」「映画の中の殺人鬼みたいな奴ですね!?」「殺人鬼。ああ、言い得て妙だな。あれはまさに人を殺す鬼だったよ」7 #4215tk
2015-12-14 20:24:33ヒルメが眉間にしわを寄せる。「元々はただの幽霊かなにかだったのかもしれないけど、それにしたってあそこまで歪むのは珍しい」「誰かの差し金だったのかもね。復活したところから見ても」ついには自らの手でニコールの口に煎餅を放り込み始めていたイナメが言葉を挟む。8 #4215tk
2015-12-14 20:27:16「なんにせよ早く対処しないと。また御狐衆に協力してもらわなきゃ」「それがいいだろうな。あれの相手を退魔師に任せるのは心苦しい」ヒルメは厳しい顔で頷く。そしてそのまま四季へ首を向けた。「君もだよ、四季くん。あまり遅くに出歩かないように。あれに狙われたら大変だ」9 #4215tk
2015-12-14 20:30:13四季は素直に首を縦に振った。そして腕時計で現時刻を確認する。そろそろ午後六時を回ろうとするところ。ヒルメも目敏くそれに気づいたらしい。「……しかし、うん!もう逢魔時だし、出歩かせるのも憚られるな!」「えっ」「今日は泊まっていくといい。是非そうしなさい」10 #4215tk
2015-12-14 20:33:21ヒルメは満面の笑みを浮かべている。イナメが溜息をついた。「ヒルメったら。ごめんね四季くん。こいつ言い出したら聞かないの。素直に泊まっていってもらえるかな?」「は、はあ」「あともう一つお願い」イナメは視線をずらす。「この悪魔に私の手を食べないよう言ってくれる?」11 #4215tk
2015-12-14 20:36:22……その後、四季がイナメの手に食らいついたニコールを諦めさせるまで一時間ほどかかったことを明記しておく。12 #4215tk
2015-12-14 20:39:22