TCGと悪堕ちの関係

「なぜTCGの作品では悪堕ちが多いのか?」というご質問を伺いました。鍵はTCGというビジネスモデルにあるのですが、まず悪堕ちと親和性が高い土壌が何かについて考察した上で、ビジネスモデルについて言及しました。
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悪堕研究機構 @utakuochi

「なぜTCGの作品では悪堕ちが多いのか?」というご質問を伺いました。深いところまで考察しようとすれば「企業戦略」というビジネスや広告モデルの話に言及しなければいけませんので、ここではあくまでジャンルの表層で考察していきましょう。

2015-12-23 23:01:18
悪堕研究機構 @utakuochi

まず、悪堕ちと相性がよい作品とは何かということを考えたときに「悪の概念がはっきりしている」ことと「悪へ向かって堕ちる変化を描写しやすい」ことは外せません。つまり、どちらが味方(正義)でどちらが敵(悪)かが読み手に取って明確で、かつ対立勢力間を移動できる世界観である必要があります。

2015-12-23 23:14:01
悪堕研究機構 @utakuochi

「正義と悪が明確で相互の移動が許容できる」世界観というと、それは即ち「勧善懲悪」という今では陳腐ではありますが、悪堕ちにおいては重要なテーマです。そして勧善懲悪の物語は主に子供向けの作品に取り入れやすいので、(表面上)子供向けの多くのTCG作品と悪堕ちは相性が良いわけです。

2015-12-23 23:24:48
悪堕研究機構 @utakuochi

悪堕ちは物語における成長イベントです。仲間が悪堕ちして敵になることは、仲間が抜けた穴を認識し、その仲間がどれだけかけがえのない存在だったかを再確認すると同時に、味方だったときに秘めていた感情を、敵になることで正面からぶつけ合い、お互いの理解を深める機会となります。

2015-12-24 01:18:08
悪堕研究機構 @utakuochi

また可逆前提の悪堕ちですが、悪堕ちした側は、悪に堕ちて立場・勢力が変わることで正義側にいたときに見えなかった新しい視点を得て成長しますし、大半の場合は悪堕ちして新しい能力を得ますから、その能力を持ち帰れない場合でも、様々な経験を積んで戻って来ます。悪堕ちは修行の一環といえます。

2015-12-24 01:28:00
悪堕研究機構 @utakuochi

TCGを含みバトル作品は常に戦うべき敵がいなければなりません。ですので、悪堕ちイベントを盛り込むことは、新しい敵を用意できますし、その敵はこれまでの敵と違いますから正攻法ではない戦いを編み出さねばなりませんし、なにより味方が成長できる機会になるというわけです。

2015-12-24 02:09:09
悪堕研究機構 @utakuochi

悪堕ちは、正義と悪、味方と敵の対立構造から派生して、バトル(ゲーム、競技含む)作品と相性が良くなります。しかし単純な力の強さが支配的なバトルではどうしても男性優位になってしまいますから、そうでない方向、頭脳や心が支配的なバトル作品の方が悪堕ちとしては広がりを持ちやすいです。

2015-12-25 01:40:58
悪堕研究機構 @utakuochi

TCGもその例外でなく、あまり腕力が関係な……あれ? pic.twitter.com/idZbHlq2Ht

2015-12-25 02:23:49
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悪堕研究機構 @utakuochi

肉弾戦に寄らず、頭脳戦に寄らず、あくまで「カードゲーム」という場(ルール)と、流れ(運)と、それを読む頭脳、これら、誰にでも平等に開かれた要素で戦うTCGは、無理なく様々なキャラクターを活躍させることができます。つまり、老若男女どの人にでも悪堕ちへの道が開かれているといえます。

2015-12-25 02:43:20
悪堕研究機構 @utakuochi

さて、「TCGと悪堕ちの関係」について、企業戦略の面で見ていきましょうか。

2015-12-26 02:04:53
悪堕研究機構 @utakuochi

実はホビーの中では、TCGはテレビゲームに次ぐ市場を持っており、そういう側面ではビジネス色が強い、企業の介入・恩恵を受けやすいジャンルです。その本質はTCGの名にあるように第一義は「トレーディングカード」であり、その延長上に「カードゲーム」が位置します。つまり付加価値ですね。

2015-12-26 02:11:30
悪堕研究機構 @utakuochi

TCGは「トレーディングカード」かつ「カードゲーム」ですから、この2つの側面、「トレーディングカードの価値(ブランド)」と「カードゲームのルール」は運営(企業)側がある程度コントロールできるものです。そして新弾追加など、うまく運用すれば長期に収益を上げることができます。

2015-12-26 02:22:18
悪堕研究機構 @utakuochi

さて、TCGというビジネスモデルが確立されている中、それぞれのTCGが生き残るために新しい付加価値を付けようとします。例えば、カード(デッキ)と使い手を組み合わせ、使い手を推して行けば、特定のカードのレアリティをコントロールすることができます。要するにTCG作品ですね。

2015-12-26 02:33:12
悪堕研究機構 @utakuochi

TCG作品において、カードと使い手は基本的に紐付きます。逆に言えば特定のキャラが使うカードはおいそれと交換することができず、新しいカードを追加したいとき、大半は新しいキャラを登場させて新カードを使わせます。

2015-12-26 02:47:25
悪堕研究機構 @utakuochi

“売りたい新カード”を増やすということは、等ランクの新キャラがどんどん増えていってキャラ間の“レアリティ”が崩壊することに繋がりやすい。かといってモブキャラに新カードを使わせても効果は薄いわけですから、ここで主人公クラスのキャラを悪堕ちさせるという手法が用いられます。

2015-12-26 02:52:11
悪堕研究機構 @utakuochi

TCGの悪堕ちキャラのデッキは主に3パターンあります。 1. デッキ自体は変わらない。使用者が悪堕ちしたので戦略が変わる。 2. 使用者に釣られてデッキも悪堕ちしたものになる。 3. 悪堕ちに伴ってデッキがまるごと入れ替わる。大抵は他者・他所から与えられるデッキ。

2015-12-26 02:58:22
悪堕研究機構 @utakuochi

売りたい新しいカードがあるならば、3の選択肢を選べばいいわけです。しかしながら弊研としては、連鎖堕ちの美味しさ、悪堕ちの形式美を推すものでありますので、やはり2の選択肢を取って欲しいと運営に懇願する立場でございます。

2015-12-26 03:03:29
悪堕研究機構 @utakuochi

前述の1から3はいずれも新キャラを増やすことなく、使用者(キャラ)のレアリティをコントロールしつつ、新カードを追加できるという利点があります。ちなみに悪堕ちではなく、配置転換や成長(といった時間経過)でも同キャラに違うカードを使わせることができます。組み合わせは無限大ですね。

2015-12-26 03:12:27
悪堕研究機構 @utakuochi

結論です。TCGに悪堕ちが多い理由、それは新カードを増やす点でTCGのビジネスモデルと相性がいいことを説明しました。またTCG作品を見たときに、正義と悪が明確な勧善懲悪をテーマとしやすい子供向けの土壌、味方が敵になるという成長イベントとして悪堕ちと相性が良いことを述べました。

2015-12-26 03:23:50