【新・日本推理小説体系・総解説】《第1期》上

松井さんの【新・日本推理小説体系・総解説】の《第1巻》から《第7巻》までをまとめました。
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松井和翠 @WasuiMatui2014

【新・日本推理小説大系・総解説】とは何か。それは「アンソロジーの究極である、夢の全集をつくろう!」という企画です。早い話が、日下三蔵氏の『日本SF全集・総解説』(amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9…)のパク…オマージュ企画です。

2015-12-28 22:14:42
松井和翠 @WasuiMatui2014

まず、今回この架空全集を企画するにあたって、次のようなコンセプトを設けました。 ①創元推理文庫『日本探偵小説全集』の後続企画として設定(=一部の例外を除いて、『日本探偵小説全集』に収録されている作家・作品は採らない)。 ②対象は戦後(1945年以降)デビューの作家。(続

2015-12-29 23:06:13
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) ③②から1990年代までにデビューした作家を対象とする(=2000年以降にデビューした作家の作品は採らない)。 ④ただし、1990年台にデビューした作家の2000年以降の作品は採録可。 ⑤巻立ては作家巻を50巻、年代別傑作選を5巻とし、全55巻で編集。(続

2015-12-29 23:10:15
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) ⑥1巻は文庫(42字×18行×1段)で1000頁を基準に作品選定。 ⑦作家巻50巻はデビュー時期によって《第1期》~《第4期》に分類した。 以上です。

2015-12-29 23:14:37
松井和翠 @WasuiMatui2014

では早速《第1期》からやっていきますね。

2015-12-29 23:16:36
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第1期》は1945年から1950年台のデビューした13人の作家が対象になります。このうち、第1巻の高木彬光は昨日発表済み(→twitter.com/WasuiMatui2014…)ですので、本日は第2巻から紹介していきます。

2015-12-29 23:19:05
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第1巻》 【高木彬光】 『刺青殺人事件』 『誘拐』 「白雪姫」 「影なき女」 「妖婦の宿」 「鼠の贄」 「原子病患者」 「わが一高時代の犯罪」 「ロンドン塔の判官」 「不義士志願」

2015-12-28 22:20:41
松井和翠 @WasuiMatui2014

《第1巻》 【高木彬光】 『刺青殺人事件』 『誘拐』 「白雪姫」 「影なき女」 「妖婦の宿」 「鼠の贄」 「原子病患者」 「わが一高時代の犯罪」 「ロンドン塔の判官」 「不義士志願」

2015-12-28 22:20:41
松井和翠 @WasuiMatui2014

第1巻には高木彬光の長編2作品と短編8作品を収めた。 高木彬光といえば「易者に「中里介山の骨相と似ている」と小説家になる事を薦められる」→「発表する当てもなく『刺青殺人事件』を書き上げる」→「それを江戸川乱歩に送る」→「乱歩激賞、翌年『刺青殺人事件』刊行」という(続

2015-12-28 22:22:11
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) 伝説的なデビューの仕方で有名だが、本巻でもその伝説的デビュー作『刺青殺人事件』(光文社文庫)を巻頭に置いた。

2015-12-28 22:23:01
松井和翠 @WasuiMatui2014

名人・彫安が自らの子の背に遺した大蛇丸・綱出姫・自雷也の“三すくみ”の刺青。これに端を発して巻き起こる連続殺人事件と“胴なし”密室殺人の謎に名探偵・神津恭介が挑む『刺青殺人事件』は、作者自身の彗星の如きデビューと相まって戦後本格推理小説の古典として地位を不動のものにしている。

2015-12-28 22:24:51
松井和翠 @WasuiMatui2014

近年では同じ神津ものの代表作『人形はなぜ殺される』にやや押され気味であり(事実2012年に行われた「新版東西ミステリーベスト100」では『刺青』が32位、『人形』が28位と1985年に行われた旧版から順位が逆転)、確かに大仰な文体や密室トリックの安易さなど現代的な視点で見ると(続

2015-12-28 22:26:37
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) 拙い部分もないわけではない。しかし、“〇密室”という発想やそれぞれのアイディアが緊密に絡み合っている点などは今見ても瞠目すべき点もあり、前述の歴史的な意義も含めて、敢えて本企画の巻頭に置いた次第である。

2015-12-28 22:27:55
松井和翠 @WasuiMatui2014

また『刺青殺人事件』は“初稿版”と“改稿版”の2つのバージョンが存在し、“初稿版”は《昭和ミステリ秘宝》の一巻として刊行された『初稿・刺青殺人事件』(扶桑社文庫)で、“改稿版”は『〈新装版〉刺青殺人事件』でそれぞれ読むことが出来る。

2015-12-28 22:28:45
松井和翠 @WasuiMatui2014

全体の完成度は情報・文体の加筆・訂正・整理が成された“改稿版”が上なのは当然だが、松下研三の一人称で読める“初稿版”も捨てがたい味がある(実際にこちらの方がよいという評者も存在する)。機会があれば読み比べていただきたい。

2015-12-28 22:30:00
松井和翠 @WasuiMatui2014

次に神津ものの短編として、その『初稿・刺青殺人事件』に同時収録された5編「妖婦の宿」「影なき女」「白雪姫」「原子病患者」「鼠の贄」を収録した。本来であれば「月世界の女」「出獄」「盲目の奇蹟」といったなかなか陽の当たらない佳作も採りたかったのだが、紙幅の都合上叶わなかった。残念。

2015-12-28 22:32:16
松井和翠 @WasuiMatui2014

ただし、収録した5編は掛け値なしの傑作ばかり。探偵作家クラブの例会で朗読された犯人当て「妖婦の宿」「影なき女」を皮切りに、『刺青』の変奏曲ともいえる「白雪姫」、不気味な余韻を残す結末が忘れ難い「原子病患者」、そして、怪奇小説風の出だしから見事な解決にいたる「鼠の贄」(続

2015-12-28 22:33:44
松井和翠 @WasuiMatui2014

いずれも短編代表作であり、特に「妖婦の宿」は密室ものの古典として名高い。扶桑社文庫版『初稿・刺青』ではこれらの短編群が『刺青』の前に収録されていたが、本全集では『刺青』の後に置いた方が適切と判断し、『刺青』→短編、という順に配置した。

2015-12-28 22:36:39
松井和翠 @WasuiMatui2014

続いて、前述の5編以外を収録できなかった代わり、というわけではないが、中編の代表作として「わが一高時代の犯罪」を収録した。一高在学時代の若かりし神津恭介が遭遇した時計台からの消失事件を扱った作品。郷愁と哀愁にあふれた佳品である。

2015-12-28 22:37:33
松井和翠 @WasuiMatui2014

次に神津シリーズ以外の代表作として『誘拐』(光文社文庫)を収めた。実在の幼児誘拐事件とその裁判“本山裁判”を下敷きにした本邦初の本格的な誘拐ミステリ巨編である。犯人(ただし“彼”と名前は伏せられている)の視点から描いた“半倒除”形式の第1部から、(続

2015-12-28 22:38:34
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) 探偵役百谷泉一郎弁護士(と妻・明子)と犯人・警察・被害者家族との駆け引きを描いた第2部・第3部にいたるサスペンスは比類ないものであり、犯人の真の狙いや盲点を突いた法律の落とし穴、そして悪魔的な犯人峻別方法などアイディアも満載。高木彬光の最高傑作といっても過言ではない。

2015-12-28 22:40:37
松井和翠 @WasuiMatui2014

また、短編では他に「不義士志願」と「ロンドン塔の判官」を収めた。前者は「~志願」で統一した歴史小説連作『ミイラ志願』(講談社大衆文学館)の一編。そのタイトルの通り“忠臣蔵”を材に取った作品である。(続

2015-12-28 22:42:09
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) “なぜ槍の名手・高田郡兵衛は討ち入りに参加しなかったのか?”という謎を中核に置いた本作の“忠臣蔵”解釈は多くの読者にとっては目から鱗であろう。後者は、中世イギリスの王族抗争を描いた歴史ミステリの逸品。(続

2015-12-28 22:43:06
松井和翠 @WasuiMatui2014

(承前) こちらはふしぎ文学館シリーズの『吸血の祭典』(出版芸術社)及び『〈新装版〉成吉思汗の秘密』(光文社文庫)で読むことが出来る。

2015-12-28 22:43:36
松井和翠 @WasuiMatui2014

無論、今回収録した作品は作者の業績の一部にすぎない。この他にも『黒白の囮』や『炎の女』といったサスペンスと本格推理が程よくマッチした秀作や『成吉思汗の秘密』『邪馬台国の秘密』といった歴史ミステリ、怪奇色濃厚な『大東京四谷怪談』、破天荒な構成が一読忘れ難い『帝国の死角』など(続

2015-12-28 22:48:35
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