三人称の夢であったが、明確な主人公はいない夢であった。 飼育員達が水槽の前に集まっている。舞台はどうやら水族館のようだった。 水槽の中には一匹のウーパールーパーがいた。そのウーパールーパーは恋をしていた。 恋の相手は水晶であった。 #夢の話
2015-12-05 23:16:50水槽の中に入れられた水晶に頬を寄せるウーパールーパー。そのうっとりした表情を飼育員達は遠巻きに見ながら、皆で頑張れとのエールを送る。 けど、俺たちもどうにかしないとなぁ…とその中の一人がぽつりと呟いた。その呟きに飼育員達は互いに視線を逸らし、どんよりとした雰囲気を出す。 #夢の話
2015-12-05 23:20:41実はここに集まっている飼育員達全員が未だに独り身であった そんなことはお構いなしにウーパールーパーは水晶に想いを寄せる。そして、それが起こったのはその恋が始まってからしばらく経ってからのことだった ある飼育員が水槽の中に見つけたものに眉をしかめ、首を傾げて、目を細めた。 #夢の話
2015-12-05 23:22:21それは真珠であった。正確には真珠に酷似したものであった。表面をエナメル光沢が覆っている乳白色の球体だ。 水槽の底にソレは一つではなく、複数あった。そして、その傍にはウーパールーパーが護るかのように寄り添っていた。 #夢の話
2015-12-05 23:23:30見つけた飼育員が慌てて他の飼育員を呼びにいく。 卵を産んだぞ、と。 どうやらそれはウーパールーパーと水晶の卵らしかった。どこからか飼育員達が駆けて集まり、水槽のまわりに張り付いた。ホントだ、ホントだ、と驚愕の声が次々と上がる。 #夢の話
2015-12-05 23:24:38何故か天気管を書類と一緒に持っていた飼育員が驚きのあまり落としそうになるが、慌てて持ち直す。 けど、と水槽をのぞいていた飼育員の一人が呟く。こいつら異種だから繁殖はできないんだよな、との言葉にまわりの飼育員は口を閉じて俯いた。(異種混合は繁殖ができない) #夢の話
2015-12-05 23:28:03さなぎの中身のようにどろどろして艶のある乳白色の液体は、少しずつウーパールーパーの形になっていった。形作られたウーパールーパーは卵よりも少し小さく、卵と本体の間には余裕があるようだった。 #夢の話
2015-12-05 23:30:23くるくると卵の中で回るウーパールーパー。その角とエラは赤く透明な鉱石状に変質していた まだ閉じられてはっきりと見ることはできないが、半透明の皮膚から透けて見える瞳も、緻密なカットが施されたかのように輝く、赤く透明な鉱石であった 元気に育つといいね。飼育員の一人が言った。 #夢の話
2015-12-05 23:31:56