「フラジャイル」の主人公、岸京一郎はどんな病理医なのか?
ところで新年のフジドラマ「フラジャイル」の番宣がぞくぞくとはじまることで、「あんな病理ねぇよ」「あんな病理医いねぇよ」「あんな検査技師いねぇよ」的な感想もちらほら見るようになったのですが、「この世界、ああいうのは十分に有り得るんだけど病理ってやっぱ知名度ないんだな」という感想です
2016-01-04 12:02:23次に「あんな検査技師いねぇよ」ですがまあこれはわからないでもないんですけど(特に勤務態勢が悪すぎるということ)、ドラマが成立するためのフィクションとしてなら許容範囲だと思っています それ言い出したらほとんどのフィクションが成立しないだろ 特に刑事物
2016-01-04 12:04:00あとは「火箱がMRとしてありえない」ですが、「MRとして逸脱した人間を描いているドラマ」なので「なにいってんだ」という感じがパねぇです
2016-01-04 12:04:50最後に「細木みたいな女医がいてたまるか」ですがぼくも同感で、ぼくは外科医におっぱいをおしつけられたことがないのであの描写だけはフィクションとしても許せません フラジャイルをゆるすな
2016-01-04 12:05:38フラジャイルを楽しむポイントの一つは「岸京一郎は病理医だが、臨床検査専門医としての適性・資格もおそらく持っている」ということにあります。臨床検査専門医の知名度は低いですが、感染症専門医と同じくらいの「ユーティリティプレイヤー」であり、科を横断してコンサルトを受ける面白い職務です
2016-01-04 12:07:28「白衣を着ずに」「市中病院で」「病理専門医として勤務し」「臨床検査科や臨床検査管理加算IVにも詳しく」「大学にもいたことがある」「30代後半の男性医師」というぼくからすると、フラジャイルは「女性のかわいさと森井のひさんさに目をつぶればかなりリアル」です。よろしくお願いします
2016-01-04 12:10:09おまけですけど岸京一郎の診断はかなり優秀です。たとえばぼくは骨髄生検ですと「骨髄異形成症候群MDSに矛盾しない」までは書きますが、フラジャイル作中にあるような「RAEB-1と診断する」まで踏み込むことはしません。これは、RAEB-1の診断が顕微鏡だけではほぼ不可能だからです(続く
2016-01-04 12:12:34(続き)骨髄生検でRAEB-1まで診断するということは、組織診断だけではなく末梢血の情報を加味した総合診断を行うということですから、「病理組織検査」の範疇を超えています。「病理が検査として用いられているならば、病理医はRAEB-1という診断は書けない」のです。(続く)
2016-01-04 12:13:38(続き)しかし一方で、たとえばぼくは小指の爪よりも小さな胃生検で病変の一部しか採取されていない胃病変に対し、「内視鏡を自分で見に行って、胃型腺腫の可能性について指摘する」ような診断を平気で書きます。これはぼくにとって「消化管が強い、消化管診断が専門である」から可能なことです(続く
2016-01-04 12:14:36(続き)実は病理「診断」というのは(診断という名前が付いている通り)本来は臨床情報なども加味して臨床医と同様に診断まで踏み込むことを許されている分野なのです。しかし、顕微鏡診断の専門性があまりに高いために「事実上は顕微鏡検査として機能していることが多い」。(続く)
2016-01-04 12:15:26(続き)多くの病院では病理医は「自分の専門分野以外では、病理検査までしかしていない。自分が専門にしている臓器については『診断』まで踏み込み、臨床情報まで読みに行く」ということをします。岸京一郎がすごいのは「全科に対して診断まで踏み込んでいる」ことですね。恐ろしく優秀です
2016-01-04 12:16:42病理医が実際にできることについては、多くの非医療者はもちろんですが「臨床医ですら知らない」ので、臨床のみなさんが「あんな病理医いねぇよw」という感想をもらすのはすごくよくわかりますが、病理の世界にいるぼくからすると「岸はすげぇなあ、けどありえるよなあ」なのです。現場からは以上です
2016-01-04 12:18:34