【艦これSS】#鎮守府プロダクション ep1:introduction

ツイ鎮、はじめました。 ご意見ご感想は #鎮プロ まで。
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Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「まあな。いつライブやっても来てくれる客(カモ)っつーのは貴重だからな。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:27:51
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

ステージの二人は気分も乗っているようで、のびのびと歌っている。まだまだ荒削りながら、しっかりと歌い込んでいるのか表現力はそれなりにあるようだ。間奏に差し掛かると、客席に向かって手を振ったりして愛嬌を振りまくのは、この世界では見慣れた光景である。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:32:12
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「っと、ありゃぁよくねえな。」提督がふと顔を顰めた。 「ん?どうかしたかい?」 「いやね、最近の若い子にありがちなんだが、自分の固定ファンを特別扱いしすぎなんだよ。目を合わせてウインクとかするのはちょっと頂けないね。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:34:25
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「ほうほう、その心はなんだい?」 「正直、はたから見てると寒いんだよなあれ。」 「そうか、別に固定の濃いファンはほっといても来るんだから、むしろ新規の客を増やさなきゃいけないってことか。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:37:19
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「そういうことだ。俺らの立場からすれば、ライブっつーのは固定客のためじゃなくて、新しい客のためっつー方が大きいんだ。……あとな、」提督が声を落とす。「あの手のドルヲタ(ブタ)どもは勘違いしやすいんだよ。」 「あー…そいつはたしかに厄介だな。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:39:06
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「だろ?」だからこそうちの裏稼業が必要になるんだがな、と危なく口を滑らせそうになり杯を傾ける。裏に何かを抱えているのはお互い様なのだろうが、不必要な情報は知らせるべきでもないし、聞くべきでもないのだ。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:40:19
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

そうこうしているうちに彼女達の出番も終わったらしい。 「さて、行っくよー!」自信に言い聞かせながら、愛機のCustom24を肩に提げる。夜闇でも弾けるように蓄光仕様を採用した特注品だ、とか熱く語っていたが、その拘りを理解してくれる人は多くなさそうだ。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:40:43
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

客席の方も、既にほぼ満員で相当の賑いを見せている。 幕が上がり、曲が始まる。 そして――ギターが、啼いた。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:42:17
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「本日もお世話になりました。お先に失礼します!」先ほどまでステージで歌っていた二人組の片方――「みう」と呼ばれていたようだ――はそう言って頭を下げると、シルバームーンを後にした。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:39:09
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

この業界、本番が終わった後にライブハウス内で打ち上げが行われることが多いが、年齢その他の事情で彼女のように本番即帰宅になるケースも少なくない。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:39:37
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

これまたありがちな話なのだが、ライブハウス―それも出演者の出入りする楽屋口となると、如何せんあまり風紀の良くない道に面していることが多い。このシルバームーンも例に漏れず、夜になると暗がりの多い不気味な路地に囲まれているのだった。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:41:24
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「暗いのやだなぁ…早く帰らなきゃ。……!!」彼女の行手、暗がりから一人の男が現れた。齢30前後、脂ぎった肌と清潔感の欠片もない縮れ髪が目に付く小太りの男である。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:43:08
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「み、みうちゃん…おつかれ…。今日もよかった、よ。」 「あ、今日も来てくださってましたね、ありがとうございます。」怪訝そうな顔をしながらも、礼を述べる。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:44:35
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「みうちゃんこの後時間あるかな?ご、ご飯でもどうかな…?」吃っているがこの男、どうやら女を誘っているつもりらしい。 「そういうの、困ります…。私、もう帰らなきゃいけないんで!」そう言って彼女は足早に立ち去ろうとする…が、男がその行く手を塞ぐ。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:46:06
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「恥ずかしがらなくても、いいじゃない。別に誰も、見てないんだから」  誰も見ていない…その事を改めて告げられた彼女の顔が強張る。 「何ならうみちゃんの家で食べるんでも、いいかな?僕、場所も知ってるし…」そう言いながら、男は彼女の手を取ろうとする― #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:47:42
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

――刹那、砲声が響く。 伸ばした右手の肘から先が消え、血が滝のように流れ出ているのを自ら認め、男の顔から血の気が引いた。 「おイタはダメだよー?家畜は家畜らしくしなきゃ。大事な商品に手を出しちゃメ、なんだからね!」 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:49:22
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

突如、ホラーからスプラッターへと目の前の恐怖が変質し、少女もまた声の一つも出せない。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:49:43
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「ったく、最前にいた危なそうな奴が一人消えてたから、もしやと思って来てみたらビンゴかよ。」先程までのスーツではなく三種軍衣を纏い軍帽を目深に被っているが、シルバームーンにいた提督のようである。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:52:18
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「ったく言わんこっちゃない。勘違いしたバカとは言え、カタギをバラすのは性に合わないんだがな…」 「な、なにを…」息も絶え絶えの男が恨みがましく言う。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:53:29
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「みうちゃんはきっと僕のことすk「はい、寝言はそのくらいにしようねー?」そう言いながら男の頭を踏みつけるこちらの少女、年格好は今ちょうどステージに立っている川内とあまり変わらないが、お団子ヘアにも相まって更にあどけない雰囲気を見せている。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:55:15
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「ったく。俺としちゃ、お前みたいなのはピーでももいどきゃそれでいい気もしたんだ。が、よく考えたらうちの娘達がこーいうことやってるなんて知られちゃ面倒なんだよな。」 「てーとく、やっちゃっていいよね?」 「おう、やっちまえ。」 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:56:41
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「はーい♪」軽々しく言いながら、左腕の砲で男の頭を吹き飛ばす。そこに一切の躊躇は感じられず、まさにゲーム感覚といった雰囲気だ。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:56:57
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「あとな、そこの娘さんや」おもむろに被害者の少女へと声をかける。 「今回で分かったと思うが、あーいう輩は勘違いしやすいんだ。あんまり特別扱いしてっと、また似たような目に合うぜ?」 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:58:34
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「そーそー、あたし達みたいに返り討ちにできるんならまだしも、だよ?」砲の後始末をしながら少女も言葉を続ける。「ふつーそう言うのって事務所の人達にきつく言われると思うんだけどなー。」 「ま、放任主義って看板で必要な教育さえしないところも増えてるらしいからな」 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 22:59:33
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「あの…ありがとうございました…」ようやく我に返ったのか、被害者の少女は間の抜けたタイミングで礼を述べる。 #鎮守府プロダクション

2016-08-15 23:00:46