亡霊の鎮守府 1:FIRST PRESENTATION -1

ぼくのかんこれせかいかん 詳細は前回の解説を見てね http://togetter.com/li/929736 ←前 次→まだ
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白閃 @WhiteGlintNo9

肩の緊張を解き、再び歩みだそうとし…そこで気付く。 ”航路”が無い。 辺りを見渡すが空中に浮かぶ青いラインは見当たらない。 まさか途中で道を間違えた…? そんなはずはない、と即座に首を振る。 ”航路”を見失うほど電は間抜けではない。どうやらナビゲートそのものが終了したようだ。

2015-12-30 15:42:19
白閃 @WhiteGlintNo9

「ここが執務室…な訳ないですよね」 周りは役目を終え風雨に晒され続けた廃墟だけだ。いくらなんでも瓦礫の中で仕事をする人間がいるわけでもない。 「なんでナビゲートが終わったのでしょう…?」 「案内する必要が無くなったからではないのかな?」 期待してなかった答えが背後から返って来た。

2015-12-30 15:54:42
白閃 @WhiteGlintNo9

「ッ!?」 背筋が凍る。全身から嫌な汗が吹き出す。電の脳内にアラートが鳴り響き心拍数が跳ね上がる。生存のための本能的な生理現象の数々が発動する。 先程まで誰もいなかったはず。…はずなのに、その女性の声は確かに空気を震わせて電の鼓膜を叩いている。

2015-12-30 18:45:07
白閃 @WhiteGlintNo9

突然吹いた生暖かい潮風に首を撫でられ肩が跳ねる。振り向いてはいけない。だが振り向かなければならない。相手を見極めなければならない。 意を決し一気に電は振り返る。勢いを付けすぎて思わず首に痛みが走った。 が、その痛みも次の瞬間にはどこかに行ってしまった。目に写った”ソレ”の為に

2016-01-03 13:44:58
白閃 @WhiteGlintNo9

電の目の前に立つ“ソレ”は白い服を着ていた。見上げるほどに背が高かった。死人の青白い肌をしていた。水気の無い長髪を靡かせていた。瞳を鮮血色に爛々と燃やしていた。そして“ソレ”は、口が裂けんばかりに笑っていた。 「!!??」 正にそれは、電が抱く「オバケ」のイメージそのものだった

2016-01-24 13:23:38
白閃 @WhiteGlintNo9

驚愕で凍る電。数瞬が何分にも何時間にも感じられる。だが電とて艦娘、初期過程を終えたばかりで実戦も経験してないが戦闘の為の兵器だ。先程までに考えていた逃げの選択肢は既に頭から消えていた。 「オバケ」が何かをしようと動いた瞬間、電の硬直は氷解、最大機関出力を一気に引き出す。

2016-01-24 14:01:25
白閃 @WhiteGlintNo9

少し腰を落とし、一瞬で間を詰める。予想外だったのか「オバケ」の顔は驚愕に歪んでいた。 そして電の掌底が風を切りながら「オバケ」の腹部にめり込んだ。 「なのですッッ!!」 「あっブッ…ッ!!!」 艤装による補正がないとはいえ、艦娘の渾身の一撃だ。

2016-01-24 14:09:18
白閃 @WhiteGlintNo9

怖い奴は消してしまえばいい。と言うよりこの女性の「オバケ」から何故か逃げきれる気がしなかったからこその防衛反応だったのだが、どうやら正解だったらしい。 「ぐぅ…」 確かな手応え。電より二回り以上も大きい彼女の両足が地面から離れ、緩やかな弧を描いて吹き飛んでゆく。

2016-01-24 20:18:27
白閃 @WhiteGlintNo9

「オバケ」は瓦礫の山の向こうに消え、廃墟の壁にぶつかったのか鈍い音が聞こえてくる。元々脆くなっていた壁だ。衝撃に耐えられなかった外壁が、長年かろうじて保っていた秩序を失いガラガラと崩れる。 駆逐艦程度でもこの程度の威力は出るのだ。電は自分の掌をマジマジと見つめる。

2016-01-24 20:28:26
白閃 @WhiteGlintNo9

「あれ?」 何かが引っかかる。電は首を傾げるが答えは出ない。改めてまだ痺れの残る掌を見つめ……”確かな手応え”? 「…あれ?」 「オバケ」って殴れるんだっけ? さっきの彼女の肌に負けず劣らず、血の気が引いていくのが自分でもわかった 「あわ…あわわッ!」

2016-01-24 20:55:50
白閃 @WhiteGlintNo9

慌てるも時すでに遅し。「オバケ」は既に瓦礫の下にいる。 た、助けなきゃ! 未だ土煙漂う瓦礫の山に慌てて駆け寄るが、予想より崩壊した外壁の量が多かった。 「あぅあ……」 うず高くそびえる外壁だったモノ。何処に彼女がいるのだろうか。僅かな望みをかけて生体センサーを起動する…が

2016-01-24 21:33:17
白閃 @WhiteGlintNo9

「…センサーが起動しない?」 さっと確認するが艦内に埋め込まれたシステムの故障ではない。これは…上位権限による機能制限によるものだ。 「な、なんで?」 その自問は理由を尋ねるものではなく、方法に対してだ。ずっと監視されていたのだろうか。でなければ素早い対応説明がつかない。

2016-01-24 21:44:03
白閃 @WhiteGlintNo9

そんな考えも直ぐに溶ける事となる 「もう起動する必要がないからな」 そんな”理由”を答えたのは背後から声をかけた女性だった。 「え…!?」 間違いない。そこにいるのは先程電が吹き飛ばした女性だ 「『え?』じゃないぞ全く。初対面の艦娘に殴られたのは初めてだ。」

2016-01-24 21:55:53
白閃 @WhiteGlintNo9

流石に気配消して驚かそうと思ったのは大人気なかったけど… と何やら「オバケ」はボソボソ呟いている。 対する電はパクパクと口を動かすことしかしてない。どうやら色々と処理が追いついていないようだ。 「あ…えと…その…ごめんなさいなのです!!」 電はなんとか謝罪の言葉を紡ぐ。

2016-01-24 22:06:27
白閃 @WhiteGlintNo9

「まぁ私が驚くようなことしたのも原因の一端ではあるんだ。気にするな」 なんとか呼吸を整えることができた。この様子だと大事になるのは避けられそうである。少し落ち着くと一つ疑問が出てきた。なぜナビゲートやセンサーが機能しなくなったということだ。

2016-01-24 22:15:51
白閃 @WhiteGlintNo9

小さな謎をふと思い出した時、ぞの女性は一つ咳払いをし答えを口にする 「【私の鎮守府】にようこそ、駆逐艦【電】。貴艦の着任を歓迎する。」 「え…」 つまり 私が吹き飛ばしたこの人が 司令官? 「ええええええええええ!?」 電の思考回路がパンクしたのは言うまでもない ー1 終

2016-01-24 22:27:09