稲川淳二のつぶやき怪談　2016年1月26日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“今年は降らないのかな”　と思っていたら、 久方振りに東京も大雪になって、 通勤通学の足が乱れるし、 確かに季節の減り張りはついたものの。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

皆さん、お変りありませんか？　稲川淳二です。 年の終りも初めも無い私は、 ただ時間に追われる毎日ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

昔はもっと時間があって、あれこれ色々出来たし、 １日の使い出があったのに、 まあ年をとると、時の経つのが早すぎて、 “夏のツアーに間に合うかなァ”とあせります。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ま、そんな訳で、 冬の夜、暖かくして怖ーい噺で楽しんで下さい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでは、今回の「つぶやき怪談」そろそろ始めましょうか。 節電のために、部屋の明かりを消して、 怖ーい噺で楽しんで下さい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川淳二の「つぶやき怪談」、怖・楽しい時間を、共有しましょう。 何が起こっても、責任はとれませんけど。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

あのおばちゃん、今頃どうしていますかねーー。 親戚のおばちゃんなんですが、今は連絡先がわからないんですよ。 なんだか情けない話なんですがね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼女、裕福な暮らしをしている人で、 おじさんのほうもいい人でしたよ。 うちの親父を慕っていました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで、このおばちゃんの話なんですが、 戦時中の話で、長野県に疎開してた時のことなんだそうです･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

おばちゃん、いつも下駄を履いて、着物を着て、 どこへでも気軽に出かけて行く人でした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

活発で、都会育ちですから、 家でじっとしていられない性質なんでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ある時、用事で出かけまして、帰る時です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

日がすっかり暮れて、田舎道を一人でスタスタと歩いていました。 月明かりって、結構見えるんですが、周りは誰もいない田舎道です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

暗闇といったって、今の暗闇とは違います。 半世紀も前の田舎の暗闇はすごい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そりゃ、半端じゃない暗さですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで、そんな暗がりを一人で歩いてたら、 一本の橋にさしかかった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

通りがかったついでに、ひょいと見てみると、 欄干に、下駄が二つ並べてあった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

女物の下駄なんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

おかしいですよね、普通ね･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

橋の所に下駄が置いてあるんです。 きちんと並べてあった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、一段下がった所に降りて、 おばちゃん、欄干から下をのぞいたらしいんです。 気になったんでしょう。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、おばちゃんがのぞいたすぐ下のほうで、 ジロッと、顔面血だらけの女が、こちらを同じようにして見ている。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

うわっ、と、おばちゃんびっくりした。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが女のほうが、 「助けて〜〜」というんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

早い話がね、この女性、自殺しようとしたんだ。