SS「晴れた空の星空は」

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

「あぁ、綺麗だ」 私は心の奥で、そっと呟く。 その言葉と情景を噛み締めながら、飲み込みながら、そして、仕舞い込んで。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

今日は良く晴れた寒空だった。 私の日課は天体観測。 指で作るカメラにそっと星空を収めるのが趣味だ。 うちの学校に天文部はあるけれどーー 個人的な事情で、今は行ってない。 というより、行けてない。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

夜になるのを待って、縁側から足を投げる。 空を見上げれば、綺麗な星が広がっている。 自然が生み出す美しさに、思わずとも心を打たれる。 そんな、そんな星空が好きだった。 だって私のお願いが叶うから。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

単純な事だった。 夏休みに、私達天文部は合宿(？)のようなものをする予定だった。 仲良しの、親友の、あの娘と一緒に。 大好きな、友達の、男の子と一緒に。 あの娘と私は、下の名前が同じだった。 何時の日にかには”双子姉妹”なんて呼ばれる位に仲が良かった。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

でも、仲がいいからなのかもしれない。 なんの運命なのかは知らない。 私達は好きな男の子も一緒だった。 天文部で、突然、隣で、「…君が好きなんだ！これは秘密だよ！？絶対内緒よ？」 なんて。 突然に、言わなければ。 私に言わなければ。 私はあの娘を親友のままにしていたのに。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

とある日、流星群が見られると知った私達天文部は、新鮮なネタを捉えたとも言わんばかりに集まる。 そして、屋上から眺めようよ！なんて、あの娘と男の子は話していた。 「ねえ！屋上に集合して、見てみない？」 「そうね、とてもいい機会だと思うわ！」 私も賛同した。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

何故なら ”あの流星群には願いが叶うから” 沢山の御呪いを調べた。沢山の方法を調べた。 そして、ただ”願った” あの娘の… ー夏休みのある日の夜、私達は天文部として屋上に上がる。 今日がその日。 あの娘の…

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

鈍い音が聞こえる。 サイレンと救命に必死な声。 落ちていく瞬間、見えたのは”あの娘”だった。 あの娘の顔をした、私がみえていた。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

親友の突然の死に、悲劇のヒロインを演じた。 男の子とは付き合えた。 何もかもが手に入ったのだ。 「ありがとう、流星群。そして、同じ事を願ったあの娘」 あの娘も同じ願いを持っていた。 私と成り代われば、男の子に近づける、と。 でも、一つだけ違ったのは

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

成り代わった相手を突き飛ばしたことだ。 あの娘の願いは叶った。 私の身体と交換に私を突き飛ばすこと。 私の願いは叶った。 あの娘の身体と交換に男の子と付き合えること。 事故を最後に、解散となった天文部には行けないけれど、 私にはあの娘の身体と彼がいる。

ゆうきｻｧﾝは嫁になった @yuki8271

ありがとう、流星群。 さよなら、ワタシ。