俺屍版真剣文字書き60分一本勝負まとめ

Akakobe_orereで書いたワンライをまとめました。
3
前へ 1 2 ・・ 6 次へ
古縞(こじま) @Akakobe_orere

快晴のなか、黙々と歩いて旅するのは楽しい。イツ花の宛のない旅のお供は、大きな大きなおむすびと、少しこだわって淹れた緑茶の竹筒、あとはひとつの宝物。旅立つ日、冷たくなった大事な人の手から抜き取った指輪は、迷うイツ花の路をいつだって照らしている。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-02 05:22:15
古縞(こじま) @Akakobe_orere

いざ桃幻郷を目指して桃色の湯に飛び込もうとした討伐隊は、その光景を目撃してしまった。湯から這い出してきたらしいどくろ大将が茹であがってのびている。なんて幸せそうな顔か。討伐隊は構えた武器を下ろしてそこらに落ちていた布をそっと体にかけてやった。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-03 05:21:41
古縞(こじま) @Akakobe_orere

盆を過ぎて夏が終わる頃、白骨城のすべての骨たちは慚愧の声をあげながら砕けてゆく。今年も誰にも念仏すらあげてもらえなかった怨みは、崩れる白骨城に木霊して酷く耳障りだ。白骨城の天辺で捨丸はすべての骨を嘲笑する。所詮、捨てられた骨どもだというのに。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-04 02:55:07
古縞(こじま) @Akakobe_orere

兎の習いなのだから齧るのは仕方ない。だというのに周りはひとの食事に兎や角と五月蝿いのだ。茶々丸まで困った顔をして、悪食ですね、なんて言う。なんでそんなこと言われるのかわかんない! 美々卯はひとりごちながら手の中のおいしそうな髑髏に齧りついた。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-04 03:46:06
古縞(こじま) @Akakobe_orere

交神を終えた当主は夜半に帰宅した。いつもは峻険な目付きをぼんやり緩ませて布団に倒れ込む。放たれた窓から明るい月の光が当主を照らしている。まるで大蛇の眼が此方を見ているようだ。体に鱗が這い回っているような気がして、当主はぶるりと体を震わせた。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-04 04:49:24
古縞(こじま) @Akakobe_orere

娘は鬼殺しの話になると途端に修羅の眼をして微笑んだ。その笑みがどうにも美しく、福郎太の胸は苦しくなる。小柄な体にそっと羽を巻きつけるとまた違う顔で娘は笑った。彼女の指が己の眦の細かな羽を撫でる感触を、福郎太はずっと忘れないでいようと思うのだ。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-05 03:15:29
古縞(こじま) @Akakobe_orere

美也が風をきってそこらを駆けると、頭の後ろできゃいきゃいと声がする。背中には赤い紐で括られた赤子が負ぶわれている。ぴょんと跳ねると赤子が嬉しそうに声をあげて、美也のひげも尻尾もぴんと立つ。はらはら見守る周りの視線も気にせず母子は楽しそうだった。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-05 04:03:33
古縞(こじま) @Akakobe_orere

本当に、久しぶりに此処へ来た。蝶子の目の前にはうず高く積まれた花の山があった。曼珠沙華に椿や朝顔、大きな向日葵、桜の枝、数えきれぬ桔梗と、梅の二枝、二輪の菊。花塚に白百合をありったけ手向けて、蝶子は逝ってしまった懐かしい人たちを想って泣いた。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-06 04:18:03
古縞(こじま) @Akakobe_orere

諸国漫遊で最初に学んだのは、徒歩で旅するには私の足は柔すぎるということだった。借りた屋根の下、力丸に謝り続ける夢を見た。肉刺の膿が出切った頃、ようやく人を頼ることの意味が解った気がした。漫遊のあと私が何者になれるのか、今からそれが楽しみなのだ。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-07 02:46:28
古縞(こじま) @Akakobe_orere

幽が臥せりがちになった月、俺は漢方屋と屋敷を三度ほど往き来して時間を無為にした。今は二人で布団に臥せり、ぽつりと話をするのがただ幸せだ。時折、幽は細くなった指に嵌まった指輪をくるくる回す。彼女がそれを俺に渡す日が来ないようにお天道様に願うのだ。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-07 03:31:00
古縞(こじま) @Akakobe_orere

天界の昼子御殿には続々と火神が集まっていた。一族の活躍で今回の火神会合はほぼ全柱揃うらしい。お夏が昼子に突っかかるのを予想して、皆厳しい顔だ。御殿の屋根で朱星ノ皇子は羽を伸ばして嘆息した。どうせ最後は呑んで脱いで、歌って踊るだけだってのにサ。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-07 04:13:13
古縞(こじま) @Akakobe_orere

真名姫ははたりと目を開けた。夢の岸辺から戻ってきたらしい。故郷の海を小さな人魚と泳ぐ夢だった。一生懸命ついてくるのがいじらしくて撫でてやった尾の感触まで覚えている。あの子と泳ぎたかったなあ。地上に下ろした娘を想って真名姫は深い溜め息をついた。 #俺屍版真剣文字書き60分一本勝負

2014-12-08 05:42:44
前へ 1 2 ・・ 6 次へ