中井久夫著『日本の医者』日本評論社 第2章 3

@niretatsu さんのつぶやき2011年1月25日分です。「日本の医者」に書かれていることが過去のことで現在はちがうのか、それとも現在にも強く影響しているのかはわかりません。次に患者になるとき、「日本の医者」を思いながら医療を受けたとしたら、感じ方は変わりそうです。
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楡林達夫 @niretatsu

ほんとうは「第五章 医師の組織論」として、白ページを五、六枚つけたいのだ。各自書き込めとね。本屋さえゆるせばの事だけど。」

2011-01-25 00:11:14
楡林達夫 @niretatsu

「でも、あなたはすくなくともあれをしている。あのことから得た教訓を一般化して何か生まれないの」 「いかにも、ぼくは医師としての働きのほかに、少なくとも二つのことをしつつある。ひとつは医学界をつめたく観察し、記録してきたことだ。

2011-01-25 00:41:38
楡林達夫 @niretatsu

手も足もでない時でもすくなくとも冷静に観察し、記録することはできるからね。ぼくの本はその一部にすぎない。友人に迷惑のかかりそうなところと、非医師のモニターによんでもらって、ほんとうと思えなさすぎて、本全体の信用までさがりそうなところは削ったのだ。

2011-01-25 01:11:23
楡林達夫 @niretatsu

それに、あのことが医学界全体の構造への批判を実践にうつしつつあるものだとは、まだ少数のほんとうの同志以外には知らせたくない。特殊な状況への特殊な批判だと、敵にも味方にも思ってもらわなくてはならない。

2011-01-25 01:41:11
楡林達夫 @niretatsu

でなければ、敵はかさにかかってくるだろうし、味方はおじけづくだろう。今や敵陣ふかく陣をしいているからね。それに、どうしてもぼくが誰だかわかってしまうだろう。

2011-01-25 02:11:25
楡林達夫 @niretatsu

楡林達夫が誰であるかは絶対に知られてはならない。大学がわかったら、ああ、あれは○○大学のことさ、で片づけられてしまうだろう。ぼくは母校だけの特殊事例は容赦なく削ったけれどね。楡林達夫はひょっとしたら俺のところの奴かも知れない、と全国のわるいボスたちに思ってもらわなくてはいけない。

2011-01-25 02:41:47
楡林達夫 @niretatsu

医学界はいつまでもぼくに素顔をみせてくれなくてはいけないが、そのためにも誰であるかが知れてはいけないのだ。ぼくが書く時間には限りがあるから、この、東京の電話帳にもないが、わりとシャレたペンネームを、入れかわり立ちかわり良心的医師が使ってくれたらもっと効果があるのだが。

2011-01-25 03:10:47
楡林達夫 @niretatsu

孫悟空が髪の毛を吹いて千匹の孫悟空をつくるようにね。ぼくもその髪の毛の一つさ。」

2011-01-25 03:40:41
楡林達夫 @niretatsu

実際、編集会議での非医師グループの医師への批判はきびしいものでした。 「お医者さんはお医者さんさ。そう労組員はかげで言っているよ。労医提携って云ってくれるのも、まあ有難くお受けしてはいるが、医局から呼びもどされたら一も二もなくさよならだ。開業医なら医師会への批判は一言もいわない

2011-01-25 04:10:46
楡林達夫 @niretatsu

民医連だって、――あの一部の労務管理のひどさを君は知っているかい。あそこの看護婦たちは革新陣営からも救けてもらえない可哀そうな労働者たちだぜ。まあ、みんな事情は知っているんだけれども、ね。

2011-01-25 04:40:53
楡林達夫 @niretatsu

要するに医者は医者なんで、家庭の事情なんだから、医師のことはぼくらはむろんどうしようもないし、ぼくらへの医師側の協力も実は大して期待もしていないんだ。本音だよ。先生々々って奉っているのも、半分は病気になった時を考えてさ。これは冗談だが。」

2011-01-25 05:10:57
楡林達夫 @niretatsu

こういう意見を代表として、医師の組織論はないという結論となりました。

2011-01-25 05:40:52
楡林達夫 @niretatsu

「楡さんがどうしても書けないというのも、楡さんの頭がわるいんでなくて、これは客観的状況の反映だよ。このままで出そうや。」というわけです。そうしてある男が述懐しました。

2011-01-25 08:41:21
楡林達夫 @niretatsu

「考えてみれば、医者もかあいそうなものだよな。看護婦たちはじめ、他の医療従事者との連帯もないし、現場から浮上って大学とのはかないつながりで生きているし。呼びもどしが二年こないと苛々したり、意気消沈したり。患者や公衆との連帯もないし。

2011-01-25 11:40:59
楡林達夫 @niretatsu

医局の「分割して支配せよ」の原則で僚友との連帯も入局後だんだんあやしくなってゆくわけだし。ひとりひとり孤立してバラバラで、――それでも医学そのものは一生の仕事に値するものとは思うけど、その仕事さえも貫ぬこうと思うと障害が多いんでしょう、いつか皆さんも云っていたように。」

2011-01-25 14:40:50
楡林達夫 @niretatsu

ここでぼくは思い当たりました。単数の組織論、ぼくやあなた自身を、まともな医師として組織してゆく組織論しか現実にはあり得ないのではないか。医局はかわらなくとも、心構えをもってはいってゆくと少しは違うものです。「日本の医者」も実はそのために書いたものです。

2011-01-25 17:40:58
楡林達夫 @niretatsu

人々が慎重に医局をえらぶように、そうして同時にどんな「よい」医局も医局としての刻印をのがれてはいないことを知ってもらうために。

2011-01-25 20:40:51
楡林達夫 @niretatsu

複数の組織論、われわれの組織論も、いつか条件の成熟とともに生まれてくるでしょう。私たちが自身を組織してゆくなかから、必ず時満ちて生まれてくる真の連帯のなかで。

2011-01-25 23:41:22
楡林達夫 @niretatsu

それなりにたのしかった医学生活は遠ざかりつつある。 「われは永遠に存在するであろう。/われを入るものは一切の希望をすてよ」(ダンテ「神曲・地獄篇」。第三歌)  こう書かれているという地獄の門の前に立っている気がするといっても大げさとは思えないでしょう。

2011-01-26 02:40:41
楡林達夫 @niretatsu

あなたは入局勧誘をもうぼつぼつうけている。その話をきくと、どこの医局もバラ色で、いつか聞いたと思う、そこの暗いうわさは、うそだったかという気がする。しかし、一人でもこう言ってくる先輩がいるでしょうか。

2011-01-26 05:40:50
楡林達夫 @niretatsu

「ぼくらの教室は、正しい医師をつくり、正しい医療を実践するという太い一線で貫かれている。それも、医師の独善でなく、医療の総合性、多元性を理解して、看護婦などとのつよい連帯の上に立ったものだ。この行き方でしか、正しい医師はつくれず、日本の医学をよくしてゆくことはできないのだ。」

2011-01-26 08:41:27
楡林達夫 @niretatsu

せめてこう言ってくる先輩は? 「ぼくたちの教室は不合理で一杯だ。しかし、ぼくたちはたたかっているのだ。ぼくたちの仲間に来ないか。ぼくはぼくのもっているよきもの一切を君に開放する。ぼくも君から学ぶ。医局をよくし、いつか医局の構造そのものを逆転させよう。」と

2011-01-26 11:41:09