#くじ創作

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リオン@小説書いてます @pc_rion

6 目を凝らすが、其の目に映るのはひたすらの竹林。 幾度と無く見たような光景である。 方位磁石は役に立たない。常に回転しており、最早自身の位置すら特定できぬ。 「これが伊賀……忍者の地か」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:01:49
リオン@小説書いてます @pc_rion

7 何度か見たことのあるような大石が視界に映る。 彼は足取りを緩め、その石の前へトボトボと歩き、溜息をついた。 「休憩にしよう」 そう言って、携行食であるニンジャ・握り飯、略してお握りを懐から取り出した。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:02:17
リオン@小説書いてます @pc_rion

8 「お母様……お父様……元気にしておられるでしょうか……」 竹林の間から覗く青空に、呟く。 そして、大石に腰掛けた時、ブーという、屁を模した、マヌケな音が竹林に鳴り響いた。 ブーブートラップだ。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:02:41
リオン@小説書いてます @pc_rion

9 「しまった!」 座った場所を確認すれば、そこにはピンクのブーブークッションがあった。 なんということだ。ここまで来て気づかれるとは! @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:02:56
リオン@小説書いてます @pc_rion

10 「フン、そもそも竹林に入ってきた時に気づいておるわ」 「貴方は!!」 何処からともなく、目の前から一人の老人が歩いてきた。 目を疑ったが、見たそのままの表現である。 目の前から何処からともなく、人が現れたのだ。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:03:32
リオン@小説書いてます @pc_rion

11 「して、ニンジャごときが何用だ」 彼は見た目は老人だ。だが、オーラが違う。 圧倒的に、彼がそうである、その人であると、ヘルガには解る。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:03:49
リオン@小説書いてます @pc_rion

12 「お初にお目にかかります、ハンゾー=サン。 私(わたくし)はヘルガ、ヘルガ・アルヒェと申します」 そう言って彼は宙に舞う。垂直に二メートル程飛んだかと思えば、 宙で三回転を加えた後、ドゲザでの着地。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:04:20
リオン@小説書いてます @pc_rion

13 「この度はハンゾー=サンにお願いしたい事がありまして、 勝手ながらこの地に降り立ちました」 「アルヒェ……確か一年前に没落したエルフ貴族の家名だったか。 その子息がいかような要件だ」 「ハンゾー=サン。貴方の弟子にしていただきたい」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:04:46
リオン@小説書いてます @pc_rion

14 ハンゾー=サンのまゆがピクリと動いた。 「血生臭いニンジャが忍術を学ぶというのか」 「どうか、この通り」 ハンゾー=サンは彼をじっと見る。 悪意は無い。他意も無い。ただ、純粋に彼はこの地へとやってきたのだろう。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:05:09
リオン@小説書いてます @pc_rion

15 そもそも、この竹林に来る事ができた時点で彼は十二分に優秀だ。 「だが断る」 「どうか……どうか!」 しばらくの沈黙が続いた。 カサッという足音がした。 「なれば、実力を示すが良い」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:05:30
リオン@小説書いてます @pc_rion

16 はっと、彼が顔を上げた時、既にその視界にハンゾー=サンはおらず、 代わりに手裏剣が目の前に迫っていた。 「うおっ!」 持ち前の身のこなしが手裏剣を躱す事に成功させる。 だが、それは序幕でしかない。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:05:49
リオン@小説書いてます @pc_rion

17 幾つかの多重に、幾重にも重なる金属音が長い耳に届く。 ニンジャの聴覚は人間を遥かに凌駕する。 更に、エルフの血を引く彼の聴覚であれば、 手裏剣を取り出す際に生じる僅かな音が聞こえるのだ。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:06:05
リオン@小説書いてます @pc_rion

18 「イヤーーー!!」 トロールの馬鹿力を使い、竹を引っこ抜く。 そして、自身を軸として独楽と成り、手裏剣を一切合切風圧で吹き飛ばした 更に、高飛びの要領で彼は宙に飛ぶ。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:06:34
リオン@小説書いてます @pc_rion

19 五十メートル程宙に飛んだところで、彼は背中から二メートルはあろう大弓を取り出した。 番え、目を凝らす。 「見えぬか……なれば!」 彼は上へと矢を放った。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:06:53
リオン@小説書いてます @pc_rion

20 「上に吐いた唾は顔にかかるぞ」 何処からかハンゾー=サンの声が響く。 「それはどうかな」 「何!」 彼はニヤリと笑った。絶対の自信を持っているかのような笑みだ。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:07:07
リオン@小説書いてます @pc_rion

21 その矢は彼の奥義、レインフォールアロー! ニンジャ量子力学に詳しい者であれば、そのジツの原理に直ぐお気づきになるだろう。 天から降り注ぐのは星の数程の矢の雨である。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:07:38
リオン@小説書いてます @pc_rion

22 彼は、矢が平行世界に生まれた他の場所へ落ちるという可能性の全てをこの次元に確定させたのだ。 それらは無数、無量大数といっても良い。 「上手な矢を数撃てば必殺!」 轟音が鳴り響いた。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:07:51
リオン@小説書いてます @pc_rion

23 あわや、ハンゾー=サンかと思われたが、彼は更に上をいっていた。 文字通り、一本の矢の上に彼は乗っている。 「矢を回避する方法は、矢の上に乗ることだ」 「成程!勉強になります!」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:08:08
リオン@小説書いてます @pc_rion

24 着地した彼はそう言って更に番える。 「ハァァァ!」 射出された矢は先程と同様の原理で幾重にも重なり、数十の束としてハンゾー=サンを襲う。 だが、彼は動かなかった。 当たる。いや、当たった。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:08:25
リオン@小説書いてます @pc_rion

25 誰もがそう思うだろうが、二人はその矢が外れる事を知っていた。 拡散していた矢はどれもがハンゾー=サンの脇を掠めるだけだった。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:08:38
リオン@小説書いてます @pc_rion

26 「……殺意が足りぬ。当てる気がそもそも無い」 「よくお分かりで」 「解るとも。小僧」 「……これでも二百と六十歳です」 「……お主、ワシより二百歳年上だな」 「し、しかし、先生の功績を鑑みれば、私なんて確かに小僧でした」 「……」「……」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:09:00
リオン@小説書いてます @pc_rion

27 「ゴホン。して、何故それほどの腕前を持ちながら、忍術を学ぶか」 「他人を、傷つけることが怖いのです」 「なん、じゃと」 「……できれば、戦いは避けたい。ですから、諜報を任務とできるよう忍術を学びたいのです」 「勿体無い。ワシはそう思うが」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:09:24
リオン@小説書いてます @pc_rion

28 「良いのです。どうか、お願いします」 「そもそもワシは弟子をとったことがないから実践形式でしか教えられんぞ」 「構いません。貴方の、その噂は耳にしておりましたから、だからお願いするのです。 存在感を無くす、その影が薄くなる忍術を」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:09:44
リオン@小説書いてます @pc_rion

29 「まあ、素質はあるのやもしれんな」 ハンゾー=サンは考える。 そもそも、ワシの事を知る事自体がまず難しい。 なれば、コヤツの後ろには何かある。 コヤツはきっと、踊らされているのだろう。 であれば。 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:10:16
リオン@小説書いてます @pc_rion

30 「良いだろう。我が元で研鑽を積むが良い」 「ありがとうございます!ありがとうございます!」 @sousakuTL #くじ創作

2016-02-13 22:10:30