- tasobussharima1
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徳エネルギー革命以降、科学界と宗教界は急速に接近した。 宗教の思想哲学が、無遠慮に科学の現場へと持ち込まれるようになった。数学者が宗教家になり、高僧が徳エネルギー研究者になる。そういったことも珍しくはなくなった。一部はカルト化し暴走することもあったが、流れは止まらなかった。
2016-02-21 21:04:04宗教に科学のメスが入ったのか、或いは科学が宗教に取り込まれたのか。それはもう誰にも分からなかった。だが、その流れに乗ったのは、密教も例外ではなかった。 密教とは、悟りの方法を伝えるための仏教である。チベット仏教とも近い。この国における密教の祖の一人は、空海という名の僧侶であった。
2016-02-21 21:08:03彼は、その著作の中で『即身成仏』を密教の教えの1つとして掲げている。即身成仏とは、ソクシンブツとは異なり、生きながらにして仏となることである。 故に、少なくともその末裔達にとって。肉体の死を伴う得度兵器、徳エネルギー兵器による成仏は、受け入れ難いものであったことは確かだった。
2016-02-21 21:12:08------------ 「後続はなし。単機行動の様子」 「『仏敵』の残骸はいかがいたす?」 「タグを設置して放置する。行動目的の解析が先だ」 「承った」 坊主頭の男は、携帯端末を叩く。戦闘目的の得度兵器の単独行動。普段とは違いすぎる行動パターンだ。何か目的があるに違いない。
2016-02-21 21:16:06むむ、彼らは空から落ちてくる仏舎利衛星の存在を把握してないのかな。しかし得度兵器が特殊なパターンで単独行動をするからには何かある、と #徳パンク
2016-02-21 21:19:00「経路予測。さっきの雪崩の発生地点と重なるな……」 「仲間の亡骸の回収であろうか」 「他には思い付かない。何かを探していたことは確かだ」 赤い雪原に散らばる戦闘型得度兵器、タイプ・タモンの残骸。仏法の守護者、四天王の一体を模した仏ならざる機械は、朽ちゆく屍を晒す。
2016-02-21 21:20:04「雪の下の捜索は、今は困難」 「今日のところは戻るぞ。足跡を消すのを忘れるな」 「心得た」 二人の坊主頭の男達は、踵を返す。だが、背の低い方の男はふと立ち止まり、残骸の方を見遣る。 「如何された」 「……あの機械にも、死はあるのだろうか」 「さて……」
2016-02-21 21:24:02得度兵器の目的を探りたかったらいきなり四馬の鞭で攻撃せずにしばらく泳がせた方が良かったのでは…… #徳パンク
2016-02-21 21:25:42答えのない疑問だ。 今またひとつ、仏を騙る存在(もの)を彼等は破壊した。さて、これは殺生なのだろうか。 機械は仏ではない。機械は命ではない。機械は徳を積むことはない。 だが、それでも答えは出ない。 「これもまた、無明ということか」 割り切ることのできない何かがある。
2016-02-21 21:28:02