本人訴訟関係セルフまとめ

自分用
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penben @penben2020

本人訴訟における訴訟指揮についていろいろ流れたようだけれども、これについてはいろいろ議論のあるところであり、意外とというか面白いところではある。

2016-02-21 23:30:27
penben @penben2020

たとえば、義務があるかどうかという観点はひとまずおいて、現実としてはどうかというと、たとえば加藤新太郎元判事は伊藤=加藤=山本「民事訴訟法の論争」(2007年、有斐閣)188頁で次のように述べている。(続)

2016-02-21 23:35:06
penben @penben2020

(続)(前掲書)「現実には、地裁レベルで本人が一人で訴訟を追行して、弁護士代理の相手方に対して勝つことはいくらでもあります。これは、徹底的に後見的に裁判所が面倒を見ているということにほかならないのです。これに対して、裁判官は相当のリソースを振り向けています。」(続)

2016-02-21 23:35:58
penben @penben2020

(続)このような加藤新太郎元判事のスタンスについては、たとえば山本(弘)教授が、山本編「民事訴訟の過去・現在・未来」(2005年、日本評論社)162頁で次のようにコメントされている。(続)

2016-02-21 23:38:39
penben @penben2020

(続)(前掲書)「…正しい者が必ず勝たなければいけない。正者必勝というのが日本の裁判官を支えているバトスである。われわれがよく知る加藤新太郎判事はまさにそのタイプの裁判官だと思いますが、そういうわけで積極的に釈明をしておられる。」(続)

2016-02-21 23:40:06
penben @penben2020

(続)「…しかも、そういう裁判官の行動は、必ずしも別に裁判官個人の倫理的なパトスだけに支えられているわけではなくて、最高裁の考え方がそうであるからということもあるようです。…最高裁の規範が現在の裁判官の釈明における積極的な介入姿勢を支えているのです。」(続)

2016-02-21 23:41:21
penben @penben2020

(続)釈明を「義務」と捉えることの意味やその範囲について議論があることは周知のことであるが、時期的に変遷があり、戦前の大審院は釈明義務を比較的広く認めたが、戦後、最高裁はこれを狭く解しほとんど認めないようになった。(続)

2016-02-21 23:45:32
penben @penben2020

(続)しかし昭和30年頃から再び釈明義務を認めその範囲を広げる傾向が現れ、それも、昭和40年頃までは不明瞭な申立てや主張等を問い質すべきというものだったのが、昭和40年台に入り、適当な申立てや主張等がない場合に裁判所が積極的に示唆・指摘すべきというのが現れたと(続)

2016-02-21 23:47:23
penben @penben2020

(続)いうのである。これがいわゆる積極的釈明義務の違反の問題とされるものである(以上、新堂・第5版495頁以下、高橋・上(第2版補訂版)444頁)。一つの(現時点における、いわゆる)伝統的なあり方なり訴訟観のあらわれということであろう。(続)

2016-02-21 23:49:49
penben @penben2020

(続)基本的には、釈明は「よいもの」であると理解されており、しかも裁判所の後見的機能ないし作用と強く結びついている。たとえば前述の大審院及び最高裁の判例を詳細に分析した当時の奈良論文(実務民訴講座1(昭和44年、日本評論社)203頁以下)は、(続)

2016-02-22 00:18:18
penben @penben2020

(続)(前掲書)釈明権行使に「しすぎてもしすぎることはないとさえいえる」(同226頁)との主張のもと、「本人訴訟と弁護士訴訟と比べると、本人訴訟は法律の知識・専門的技能が不十分であるから、事実審の釈明権の行使は強力にされることが必要であろう。」という(同225頁)。(続)

2016-02-22 00:20:09
penben @penben2020

(続)奈良判事は、おそらくもっとも先鋭な釈明権行使の「積極派」であると思われるが、たとえば、当時、中野貞一郎教授は、ジュリ500号(昭和47年)初出の「弁論主義の動向と釈明権」(「過失の推認」増補版215頁所収)において、次のように評価されている。(続)

2016-02-22 00:26:09
penben @penben2020

(続)前掲書221頁「…最近の判例が釈明の制度を事案の真相の解明、紛争の真の解決という最終目的と直結せしめていることには、深い共感を禁じえない。…釈明権による是正を…消極的釈明…だけに限る理由は全くないし、」(続)

2016-02-22 00:29:47
penben @penben2020

(続)「是正の必要がそれまでの訴訟経過のうえで明らかとなっているのに釈明権を行使しないことは許されぬと考えなければならない。その意味で、最高裁が積極的釈明権の不行使の違法を認める方向に進んだことの正当を疑う余地はな(い)。」(続)(※誤字訂正再投)

2016-02-22 00:31:35
penben @penben2020

(続)要するに従前実務学説の一つの主流は「当然勝たすべきものを勝たし負かすべきものを負かすべきだ」(村松・民事裁判の研究61頁)という発想に出ており、これは、山本(弘)教授の指摘(前掲書)によれば、(続)

2016-02-22 00:35:41
penben @penben2020

(続)(前掲書164頁)「戦後の良心的なインテリにとって、社会国家、福祉国家は正義だったのです。社会国家による後見的な介入、パターナリズムは良いものであるというのが、戦後の良心的インテリを支えていた理念だった」ということに起因するという。なるほどそのとおりであろう。(続)

2016-02-22 00:36:27
penben @penben2020

(続)これに対する一つの反論、いわば揺り戻しが出ている場面の一つが、近時の司法制度改革論における規制緩和主義の立場であるという。たとえば裁判官が本人訴訟に後見的であることは、裁判官が別の事件に振り向けられる時間と手間を余分に使う「過剰サービス」であり、(続)

2016-02-22 00:41:42
penben @penben2020

(続)「全体的に見ると社会的に公正とは言えないという議論」になるという(前掲「論争」188頁で加藤判事が紹介する福井秀夫教授の主張)。加藤判事はこれに対し、「そう言われても、本人訴訟は別なのではないかというのが、これまでの伝統的な考え方」であるとして、(続)

2016-02-22 00:44:08
penben @penben2020

(続)「弁護士を付けないことも自己責任であり、負けても仕方がないということにしていいのかどうか」に懐疑的である。山本和彦教授は、それは「隠れた法律扶助」である、正面から法律扶助を充実し司法過疎も解決して「付ける気になれば、本当に弁護士が付けられる体制」であれば(続)

2016-02-22 00:45:37
penben @penben2020

(続)弁護士をつけないことは自己責任とする考え方もあり得ると述べる。伊藤眞教授は、「それはニワトリと卵」の関係の話ではないかとしつつ、「実質的平等を図るために、必要な手助けをして、救うべきものを救う」という「一つの哲学」は、「日本人の国民性には合うのでしょうね。」という。(続)

2016-02-22 00:47:44
penben @penben2020

(続)山本和彦教授呼ぶところの「遠山の金さん的訴訟観」、つまり「裁判所へ持って行けば、すべて自動的に真実を明らかにしてくれて、勝てる者を勝たしてくれるという観念」(前掲書192頁)が、弁護士代理事案ですら(これまでは)強くあり、まして本人訴訟においてをやということであろう。(続)

2016-02-22 00:51:34
penben @penben2020

(続)こうした問題意識は、釈明義務の点にとどまらず(なお、釈明義務は弁論主義とは必ずしも直結せず、その範囲を超えたところに作用すると考えるのが近時の有力学説のようである。高橋・前掲448頁)、広く失権効の問題や時機に後れた攻撃防御方法の問題(立法論を含めた)につながる。(続)

2016-02-22 00:56:32
penben @penben2020

(続)さらにその上で、とりわけ本人訴訟との関係について少し検討してみたいと思う。というのは、本人訴訟にもいろいろな場合があり得るのである。たとえば、伊藤眞教授が前掲書で想定する本人訴訟の典型は、次の発言からうかがうことができよう。(続)

2016-02-22 01:00:55
penben @penben2020

(続)(前掲書189頁)「…中には弁護士に依頼する費用報酬を節約しようと言う動機の人もいないわけではない…」「…他方、弁護士過疎と呼ばれる地域であれば、いくら改善されつつあるとはいえ、難しい状況があるから、必ずしも一律にそうだとも言えないけれども…」というのである。(続)

2016-02-22 01:02:12
penben @penben2020

(続)座談会形式の書物であるから書きぶりの問題もあるけれども、たとえばこうした「本人」像が、本TL上の法クラ諸氏の実感に合うか、というとおそらく合わないであろう。当職の実感にも合わない。これはなぜか。(続)

2016-02-22 01:03:44